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「低電力/大規模で携帯機器狙う」、新興FPGAベンダーが詳細を公表プログラマブルロジック FPGA

新興FPGAベンダーのSiliconBlue Technologies社が、市場戦略や製品の詳細、出荷時期などを発表した。同社は2008年3月にすでに、最初の製品となる低消費電力FPGA「iCE65」の概要を発表していた。今回は、市場戦略や製品の詳細、出荷時期などを明らかにした。

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 新興のFPGAベンダーである米SiliconBlue Technologies(シリコンブルー・テクノロジーズ)社が、市場戦略や製品の詳細、出荷時期などを発表した。同社は2008年3月にすでに、最初の製品となる低消費電力FPGA「iCE65」の概要を発表していた。今回は、市場戦略や製品の詳細、出荷時期などを明らかにした。

 同社のFPGAは、65nm世代の微細CMOS技術で製造することと、コンフィギュレーション・データ格納用の不揮発性メモリーを集積していることを特徴とする。ハイエンド携帯電話機をはじめとした民生用携帯機器市場に焦点を絞り、低い消費電力と高い集積規模の両立を強みとして訴求する考えだ。「既存ベンダーの低消費電力PLD(FPGAやCPLD)では対応できなかった、新たな用途を開拓する」(同社の創設者でCEO(最高経営責任者)を務めるKapil Shankar氏)狙いだ。すでに一部品種のサンプル出荷を始めているという。製造は台湾TSMC社が担当する。

ブリッジからオフロードまで対応

図1
米SiliconBlue Technologies社の創設者でCEOを務めるKapil Shankar氏。米Xilinx社で低価格FPGA「Spartan」を立ち上げた経験の持ち主だ。

 iCE65では、ユーザー論理の実装に向けた論理セルの集積規模が1972個、3520個、7680個、1万6896個と異なる4品種を用意する。消費電力は、論理セル数が3520個の品種において、32MHz動作時に9mW、32kHz動作時に25μWと小さい。待機時の消費電力も15μWに抑えた。価格については、論理セルが3520個の品種の大量購入時の単価を2米ドルに設定する。「5米ドル当たりの論理セル数は8000個に達する。据え置き型機器に向けた低価格/高集積FPGA並みだ」(同氏)と主張する。

図2
民生機器向けFPGAを、用途(携帯/据え置き機器向け)と不揮発性の有無(1チップ/2チップ)で比較した。それぞれの円の大きさは、5米ドル当たりの集積規模を示している。

 既存ベンダーが供給する低消費電力PLDは、ユーザー論理の集積規模が比較的小さかった。従って主な用途は、マイコンの汎用入出力ポートを拡張したり、周辺チップごとに異なる論理レベルを変換したり、プロトコルが異なるインターフェースを変換したりといった、ブリッジ機能の実装にとどまっていた。

 これに対しSiliconBlue社のFPGAは集積規模が比較的大きいため、こうした用途に加えて、ディスプレイやタッチ・スクリーン、キー・パッドなどの制御機能の実装や、マイコンのソフトウエア処理負荷を軽減(オフロード)する用途に使えるという。例えば、「これまでマイコン上でソフトウエア処理していたMP3データのデコード処理を担う、ハードウエア・コプロセッサとして機能させるといった使い方が可能だ」(同氏)。

微細化と不揮発性を両立

 プログラム領域の基本素子にSRAM素子を使うFPGAである。論理セルを構成するルックアップ・テーブル(LUT)は、4入力1出力型の一般的な構造を採る。

 技術的な特徴は、前述の通り、65nm世代の微細CMOS技術で製造したことと、不揮発性メモリーを集積したことである。「この結果、携帯機器が求めるコストと消費電力、実装面積の要件に応えるFPGAを実現できた」(同氏)という。

 すなわち、微細なCMOS技術の採用によって、チップ面積当たりの集積規模を大きくして論理セル当たりのコストを最小化するとともに、消費電力を抑えた。消費電力については、動作時の消費電力のみならず、リーク電流の低減に向けて最適化した製造プロセスを採用することで、「最大動作周波数は90nm世代並みと比較的低くなってしまう」(同氏)ものの、待機時の消費電力も低く抑えられたという。不揮発性メモリーの集積でコンフィギュレーション用メモリーの外付けを不要にしたため、ユーザーはプリント基板に搭載する部品のコストと専有面積を低減できる。実装面積が3mm×4mm〜12mm×12mmのBGAパッケージに封止した。

図3
携帯機器向けFPGAの消費電力を、さまざまな動作モードで比較した。

 既存ベンダーも低消費電力をうたう不揮発性PLDを供給しているが、「SRAMベースのFPGAにフラッシュ・メモリーを混載したり、基本素子にアンチヒューズ素子を使うことで不揮発性を実現しており、最先端のCMOS技術を適用できない。2〜3世代前の製造技術を採用せざるを得ず、65nm技術を使う今回のFPGAに比べて製造コストが4〜10倍も高くなる上に、集積規模が小さくなってしまう」(同氏)。さらに消費電力については、「チップ当たりの消費電力で比較すれば同等である。ただし、既存ベンダーのPLDは集積規模が小さいため、論理セル当たりで比べると消費電力はかなり大きい」(同氏)とした。

 SiliconBlue社がFPGAに集積した不揮発性メモリーは、組み込みメモリーIPベンダーである米Kilopass Technology社と共同で開発した。標準的なCMOS技術で製造できるという特徴がある。ただし、データを消去したり書き換えたりすることはできない。いわゆるOTP(One Time Programmable)メモリーである。

 そこでSiliconBlue社は、ユーザーがFPGAの開発段階で回路を変更する手段を用意した。すなわち、集積したOPTを使わずに、外付けのコンフィギュレーション・メモリーや、JTAGインターフェース経由でSRAM素子をプログラムできるようにした。開発が完了し、回路の変更が生じないことを確認できた段階で、OTPメモリーにコンフィギュレーション・データを書き込めばよい。

 FPGA開発ツールは同社の「iCEcube」が対応する。論理合成ツールと配置ツールについては、米Magma Design Automation社から供給を受けた。「すでに200件を超える設計データで評価しており、処理結果の品質は、既存FPGAベンダーが提供するツールをしのぐ」(同氏)という。価格は3000米ドル。ただし先着25社に対しては、399米ドルで提供するという。

図4
製品ロードマップである。2009年には、40nm技術で製造することで、集積規模をさらに大きくした品種も投入するという。

 なお、現在サンプル出荷している品種は、OTPメモリーを集積しておらず、外付けのコンフィギュレーション・メモリーを組み合わせる品種である。OTPメモリーを集積した品種については、2008年10月以降に、順次サンプル出荷を始める予定だ。

12年ぶりの新規参入

 SiliconBlue社は2006年8月に設立された新興企業である。同社によれば、FPGA市場に新興ベンダーが登場するのは12年ぶりだという。この背景を同社は、次のように分析する。「これまでFPGA市場は、通信機器やネットワーク機器に向けたハイエンド品が中心だった。ハイエンド品は、最大手ベンダーである米Altera社と米Xilinx社が圧倒的に強い。しかも開発には膨大なリソースが必要で、新規参入は極めて難しかった」(同氏)。

 これに対しSiliconBlue社は、これまでのハイエンド品の市場ではなく、携帯型機器市場に狙いを絞った。FPGAそのものに加えて、FPGA開発ツールの開発に要するリソースも大幅に軽減できる。「ハイエンドFPGAを供給するためには、論理合成や配置配線に対応した基本的な開発ツールのみならず、フロア・プランニング・ツールやDSP開発ツールなど、高度なツールを数多く用意しなければならず、新規参入の障壁は高い」(同氏)。

 このほか、SRAMベースのFPGAに関してXilinx社が保有していた基本特許(Freeman特許)が2006年に有効期限を迎えたことも、新規参入を後押ししたという。

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