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SiTimeが次世代MEMS振動子を開発、対応用途をさらに拡大へ電子部品 タイミングデバイス

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 米SiTime社は、MEMS(Micro Electromechanical Systems)発振器の設計と開発を手掛ける新興企業である。同社にとって第1世代品となるMEMS発振器「SiT8002」の量産出荷(正式リリース)を2007年8月に開始したのに続いて、第2世代となる低ジッター品「SiT8102」の量産を2008年5月に始めた。

 これらの発振器は、Si(シリコン)基板内部に共振子を作り込んだMEMS振動子と、これを駆動する回路やPLL回路を実装したCMOSチップの2チップを1つのパッケージに封止したものだ。現在、用途の拡大を狙って、新たな構造を採用したMEMS振動子を開発中であるという。同社のChief Technical Office(CTO)兼Executive Vice Presidentを務めるMarkus Lutz氏に、今後の開発動向を聞いた。(聞き手=前川慎光)

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SiTime社のCTO兼Executive Vice Presidentを務めるMarkus Lutz氏。

EE Times Japan(EETJ) 現在開発を進めているMEMS振動子の特徴は何か。

Lutz氏 2つの方向性を持って、MEMS振動子の開発を進めている。1つはハイ・パフォーマンス。MEMS発振器の位相雑音を低減させることを狙った振動子である。具体的には、振動子の共振周波数を現在の5MHzから40M〜50MHzに大幅に高めることに加えて、共振の強さQを向上させる。寸法や形状といった振動子の機械的な構造を抜本的に変えることになる。位相雑音を低減することで、例えばOFDM信号を扱うような、ワイヤレス・コミュニケーション分野を新たに狙える。

 もう1つは、共振周波数を1MHz以下と低く設定することで、消費電力の削減を図った振動子である。MEMS発振器全体の消費電流を1μA以下に抑えることを目指す。例えば、低価格で大量出荷が見込めるリアルタイム・クロック(RTC)市場を狙う。

 市場の例として挙げた、ワイヤレス・コミュニケーション分野やRTC市場では、水晶デバイスが広く採用されている。これらの市場に、特徴ある振動子を採用した品種を投入することで、水晶デバイスの置き換えを促したい。ただし、いずれの振動子も現在は研究・開発段階であり、これを採用した品種の市場投入時期は明らかにできない。

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振動子とこれを駆動する回路やPLL回路を1チップに集積したMEMS発振器の試作品である。2007年9月に公開した。

EETJ MEMS発振子とこれを駆動する回路やPLL回路を1チップに集積する「MEMS First Integration」と呼ぶ技術を採用した品種を、2009年に製品化すると発表していたが。

Lutz氏 MEMS発振子とそのほかのCMOS回路を1つのダイ(チップ)に集積する技術そのものは、すでに完成している。ただ、事業戦略上の理由から製品化の時期を遅らせる予定である。現在は、価格やこの品種で狙う市場について検討している。2008年から当面は、すでに現在市場に投入している「SiT8002」や「SiT8002UT」、「SiT8102」、「SiT9001」といった2チップ構成の品種を売り込んでいく。1チップ構成を採った品種は、これらの品種の置き換えを狙ったものではないことを強調したい。

EETJ 現在の出荷規模や売上高はどの程度か。

Lutz氏 新規株式公開(IPO)の準備を進めていることもあり、出荷規模や売上高は明らかにできない。現在の生産能力は、月産100万個で、月産500万個規模までは要望があれば高められる。

EETJ 2008年5月に東京都内で開催されたMEMS関連のセミナーでアピールしたことは何か。

Lutz氏 当社のMEMS発振器の信頼性(reliability)の高さである。機械的な耐性の高さを、シミュレーション結果に加えて、各種試験の結果を基に示した。

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