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3つの伝送媒体に対応する宅内有線ネット規格「G.hn」、ITUが物理層規格を承認有線通信技術

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 ITU-T(国際電気通信連合標準化部門)は2008年12月12日、宅内有線ネットワーク規格でこれまで保留状態となっていた「G.hn」について、主要部分となる「G.9960」を発表した。この規格は、伝送媒体として同軸線と電話線、電力線のいずれにも対応し、50M〜700Mビット/秒以上の伝送速度を実現する統合型の宅内ネットワーク用チップの実現を狙ったものである。

 ITU-T G.9960規格では、こうしたチップの開発を始めるために必要な、物理層の仕様について定義する。物理層に接続するMAC(Media Access Controller)層については、早ければ2009年9月に規格が策定される予定である。MAC層は、ファームウエアとして実装される可能性がある。

 すべてが順調にいけば、米Atheros Communications社やイスラエルCopperGate Communications社、独Infineon Technologies社、米Intel社、米Intellon社、パナソニック(旧松下電器産業)、米Texas Instruments社などのさまざまな企業が、この規格に対応したチップを2010年半ばまでに出荷できるとみられる。幅広いベンダーによって2008年5月に設立された業界団体「HomeGridフォーラム」が、G.hn規格の標準化を支援している。

 有線の宅内ネットワーク市場はこれまで、伝送媒体が異なる複数の規格によって細分化されていた。このため、システム・メーカーやサービス・プロバイダの中には、1つの技術だけに的を絞ることに消極的な企業が多かった。しかし今回の新しい規格によって、こうした状況は解消されるだろうとアナリストたちは分析している。

 宅内ネットワークでは従来、有線に関する規格が存在しなかったことから、無線LANが主流だった。しかし通信事業者はこれまでも、無線LANについて、家庭内に映像を配信する技術としては力不足だと指摘していた。

 宅内ネットワーク用半導体チップを米AT&T社などに向けて供給するCopperGate Communications社で北米市場担当のバイス・プレジデントを務めるMichael Weissman氏は、「今回初めて、3種類の伝送媒体すべてを対象とした国際的な規格が導入されることになり、通信業界は変換点に立つことになった。今回、物理層に関する規格が定まったことで、次は新規格の実装を競うことになる」とコメントしている。

 G.hn規格は、物理層のデータ伝送速度について、最大1Gビット/秒と規定する。伝送媒体に同軸線を利用した場合は、最大800Mビット/秒のスループットが得られる見込みだという。

 ただし、雑音が比較的大きい電話線通信や電力線通信の場合に、G.hn規格がどの程度の伝送速度まで対応可能かはまだ明らかになっていない。Weissman氏は、「電力線通信の場合は、少なくとも現在の約2倍となる100Mビット/秒のスループットが得られ、物理層では最大400Mビット/秒程度を実現できる可能性がある」と述べている。さらに同氏は、「こうした予測を実証するにはチップへの実装が必要だが、100Mビット/秒を実現できれば、それは大成功だと言えるだろう」と付け加えた。

 同氏によると、チップ・ベンダーやIPコア・ベンダーなど10社弱が2010年半ばまでに、G.hn規格に基づいた半導体チップやIPコアを投入するとみられる。これらの企業は、製品の差別化を狙って、既存の電力線通信規格や同軸線通信規格に対する後方互換性を確保する可能性があるという。

 業界のアナリストの多くは、ITU-Tの今回の発表を前向きに評価している。

 米In-Stat社でプリンシパル・アナリストを務めるJoyce Putscher氏は、ITU-Tの報道発表資料の中で、「サービス事業者は、ビデオ・コンテンツの有線配信に向けて、複数の伝送媒体に対応する包含的な国際標準規格を求めていた。G.hn規格はこの要求に応えるものであり、サービス事業者から半導体ベンダー、機器ベンダーまで、業界の幅広い支持を集めて、標準化のプロセスを速いペースで進めており、間違いなく2010年までには対応機器の第1号が市場に投入されるはずである」と述べている。

 米ABI Research社のリサーチ・ディレクタであるMichael Wolf氏は、「2010年までには、キャリア事業者向け装置にG.hn規格の採用が始まるとみている。2013年には、セットトップ・ボックスや住宅向けゲートウエイ、CPE(宅内装置)などに組み込まれた形で、G.hn規格準拠のノードが4200万個程度、出荷されると予測する」という。

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