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カネスタ社、民生機器のジェスチャ操作に向けた3Dセンサーを開発セインシング技術

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 スマート3Dセンサー・チップを手掛ける米Canesta(カネスタ)社は、民生機器市場の拡大を受けて、民生機器に向けた3次元画像処理チップを開発した。独自の3D CMOS画像技術を採用しており、自動車に向けた品種についてはすでに供給を始めていた。

 今回同社が開発した新しい3Dセンサー・チップは、民生機器に新たな機能を盛り込むために設計されたものだ。このチップを使えば、テレビをジェスチャで操作したり、背景に緑色のスクリーンを使わなくてもクロマキー合成したりできるようになる。

 Canesta社でプレジデント兼CEO(最高経営責任者)を務めるJames Spare氏は、「米Apple社の『iPhone』は静電容量結合方式(キャパシティブ)のタッチ・スクリーンで話題を呼び、任天堂の『Wii』はリモコンに加速度センサーを搭載したことが大ヒットの要因になった。当社は、2009年1月8〜11日に米ラスベガスで開催された家電ショー『2009 International CES(Consumer Electronics Show)』の来場者の反応を見て、スマート3Dセンサーによるジェスチャ操作も(iPhoneやWiiと)同様に注目を集めるはずだと確信した」と語る。

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2009年1月にラスベガスで開催された家電ショー「2009 International CES」で日立製作所が披露したジェスチャ操作テレビのデモである。このテレビには、Canesta社の従来型の3Dセンサーが使われているという。Canesta社が今回開発した3Dセンサー・チップは、この従来型に比べて高精細かつ低価格な上、機能も高まったとする。

 2009 International CESでは、日立製作所の家電研究所が、Canesta社の従来型3Dセンサーを利用したジェスチャ操作テレビを披露した。Canesta社によれば、現在、民生機器メーカー各社がCanesta社の従来型の参照設計キットを使って、日立製作所と同様にジェスチャ操作が可能なテレビやDVDプレーヤ、デジタル・ビデオ・レコーダ、セットトップ・ボックスなどの開発に取り組んでいるという。

 Spare氏は、同社の新しい3Dセンサーは「従来品より高精細かつ低価格で、当社の従来型3Dセンサーを使ってジェスチャ操作が可能な機器を開発中の家電メーカー各社にとって、重要な機能をほかにも搭載している」と説明している。

 同社は、ジェスチャ操作の標準化の波に乗り、現在はリモコンで操作している機器全般をジェスチャで操作できるようにしたいと考えている。それには、ソフトウエア・ベンダーと協力して、家電機器メーカーがそのまま組み込むことでジェスチャ操作機能を実現できるような(ターンキーの)ソリューションを提供する必要がある。同社はこれまでに、米GestureTek社やベルギーSoftkinetic社、米Edge 3 Technologies社と提携している。同3社は独自のジェスチャ・アルゴリズムのライブラリを提供しており、機器メーカーはこれらいずれかの企業からライセンス供与を受けて新しいアプリケーションを構築することができる。

 奥行き情報も検出できる

 このほか、Canesta社の新しいチップには対象物の奥行き情報を検出する機能もあり、これをジェスチャ操作とは別の用途に適用することも可能だという。例えば、同社の3Dセンサーを搭載すれば、ビデオ・カメラで自動的にクロマキー合成を行うことができる。テレビの天気予報では現在、ソフトウエアで認識しやすい緑色のスクリーンの前に気象予報士が立って、背景に天気図をはめ込むという手法を用いている。Canesta社のチップを使えば、この緑色のスクリーンを使わずにクロマキー合成ができるようになるという。

 同社の3Dセンサーは標準的なCMOS技術で製造しており、対象物からの赤外光パルスの反射をイメージ・センサー・アレイの各画素で捉えることによって、対象物との距離を算出する。超音波(ウルトラソニック)などを利用するほかの方式では、測距対象がセンサーに最も近接した物体に限定されてしまう。これに対しCanesta社の3Dセンサーは、対象物に反射した赤外光がイメージ・センサーに届くまでの時間を画素ごとに測定して対象物までの距離を算出し、奥行き情報を深度図として描き出すことができる。機器メーカーは、この奥行き情報を利用して独自の認識アルゴリズムでクロマキー合成を行えるという仕組みだ。

 Canesta社のチップは、標準的な0.18μmのCMOSプロセスで製造している。車載向けアプリケーションで最初の採用事例は、同社に出資する本田技研工業の自動車になりそうだ。しかし、ジェスチャ操作のアプリケーションは現在、法令による規制への準拠が求められていないため、Canesta社のチップを採用した製品は自動車よりも先に民生機器が市場に投入されることになる可能性もある。

 Canesta社のほかにも、3Dの奥行き認識チップを手掛ける企業はある。例えば、イスラエル3DV Systems社は、自動奥行き認識に向けた2チップ構成のソリューションで、CMOSイメージ・センサーの上面にGaAs(ガリウムひ素)のシャッターを取り付けた。イスラエルのテルアビブを拠点とするPrimeSense社は、光パターンと標準的なイメージ・センサー・チップの間の視差を利用して、3Dの奥行きを認識する方式を採る。

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