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全てを包むLED照明、照明の未来は「紫」活用で開くLED/発光デバイス LED照明(3/8 ページ)

照明は、「白色LED」が主流になる。「省エネ」の社会要求を背に、これまでの白熱電球や蛍光灯から白色LEDへと今まさに照明は変曲点を迎えようとしている。

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1円/lmに近づく

 もう一方の課題である価格に関して、LED照明器具の初期導入コストは、今後順調に低下する見込みである。2009年時点で比較すると確かに、蛍光灯や白熱電球よりも初期導入コストは高い。例えば東芝ライテックの製品資料によれば、100W型の照明器具を36台使う会議室を想定した場合、白熱電球を使った場合が27万円であるのに対して白色LED照明を使った場合は約5倍の137万円、40W型の照明器具を12台使うエレベータ・ホールを想定した場合は、白熱電球が約12万円であるのに対して白色LED照明では約1.8倍の21万円である。

 しかし、LEDの変換効率が向上すれば、目標となる明るさを実現するために必要なLEDの個数が減るため部品コストが下がる。この結果、照明器具の価格も低減する。早ければ2010〜2011年には1lm当たりの価格が蛍光灯に追い付く。市場調査会社である矢野経済研究所の資料によれば、電球型蛍光灯の1lm当たりの価格は1〜2円、40W型白熱電球では0.2〜0.3円である。

 ジャパンソウル半導体の代表取締役を務める村上大典氏は、「現在、照明に使える1W出力クラスの白色LEDでは、1lm当たりの価格が2円を切る品種がある。蛍光灯にだいぶ近付いており、既存光源に匹敵する価格まで低くなるのも時間の問題」と指摘する。矢野経済研究所では、「1lm当たりの価格が1円を切るのは2010〜2012年になるとみられる。10年後の(2019年には)0.2円台になる」と予測する。

 現在、白色LED照明を手掛ける各社は、初期導入コストが高くても、使用時の電力料金が安価であることや寿命が長いことを考慮に入れると、白熱電球や蛍光灯に比べて総コストが低く抑えられることをアピールしている。総コストが低いだけではなく、初期導入コストも下がれば白色LED照明の普及は加速するだろう。

 次世代照明に白色LEDが広く使われる理由は、既存の白熱電球や蛍光灯に比べて、上記に説明したような特徴があるだけではない。白熱電球の製造を中止するという世界的な流れも、白色LED照明の普及に拍車をかける。

 例えば、日本国内の照明メーカー各社は、宅内向け白熱電球の製造を2012年ころに中止する方針である。例えば、東芝ライテックは2010年をめどに製造を中止することを表明している。このほか、三菱電機オスラムやNECライティングも2012年までに製造を中止する予定である。パナソニック電工は、「近い将来、LED照明器具が主力製品になる」(同社)として、白熱電球の割合を低減していく考えだ。

白熱電球の製造中止が普及に拍車

 このような動きは日本国内だけではない。グローバルネットが2009年2月に開催したセミナー「世界の次世代照明、その技術と市場の現在と今後」で講演した、マルチタスク・カンパニーの服部寿氏の資料では、「アイルランドやオーストラリア、カナダ、米カリフォルニア州、欧州といった世界各地域で白熱電球を廃止する動きが広がっている」と説明している。白熱電球の製造が中止されたその先、長期的に見れば水銀を使う蛍光灯に関しても、製造が規制される可能性がある。「米国は2020年に蛍光灯を廃止する計画」(同資料)。

移り変わりは如実

 2009年3月に開催された照明関連の展示会「ライティング・フェア 2009」の展示内容は、このような既存の照明光源からLED照明への移り変わりを如実に示したものだった。同展示会のセミナー「LEDと有機ELが切り開く照明の未来」で講演したUCSBの中村氏は、照明光源の移り変わりについて、「2009年の今回は、LED照明の割合は過去最大だろう。ほとんどの光源が白色LEDで、非常に嬉しいことだ」と語った。「2年前の同じ展示会では、LED照明の展示は半分程度だった。ところが今回は全体の90%以上がLED照明で、予想以上の割合だ」(ジャパンソウル半導体の村上氏)。

 ひとくちに照明と言っても、一般住宅や店舗、大規模な商業施設、オフィス、ホテルなどと使われる場所はさまざまだ。照明の種類も主照明に使うダウンライト型や埋め込み型、補助照明に使うスポットライト型など複数ある。照明メーカーは、すべての照明をLEDに置き換える「まるごとLED」を訴求する(図3)。

図
図3 さまざまなタイプのLED照明器具の開発が進む 照明器具を手掛ける各社は、一般住宅や各種商業施設、ホテル、オフィスといったさまざまな場所に向けたLED照明器具を開発している。(a)はライティング・フェア 2009での東芝ライテックの展示。光源面積が広いベースライト型や、ダウンライト型、白熱電球を置き換え可能なタイプなどを一般住宅を模したブースで展示した。(b)はパナソニック電工の製品発表会の様子。2009年の春以降順次、合計340品種を製品化する。(c)は日立ライティングが同展示会で見せた展示。店舗の陳列棚に向けて、幅が狭くて厚みが薄いLED照明器具を開発した。光を拡散させる導光板を使って、色むらが無い照明を実現したという。(d)は和紙製造を手掛ける企業である太陽が同展示会で披露した、和紙と白色LED照明を組み合わせた器具。

 まずは、低消費電力や長寿命といったLED照明の効果が顕著な用途から広める。例えば、長時間点灯したまま使う常夜灯やエレベータ・ホール、エントランス、通路/廊下などの照明器具、取り替えが難しい場所で使う照明器具などである。その後、さまざまな場所の局所照明から主照明へと本格的に普及していく見込みだ。

 すでにLED照明は、さまざまな場所に続々と導入されている。例えば、東芝ライテックは大規模商業施設である「ラゾーナ川崎プラザ」に「一括納入として過去最大となる」(同社)約2300台ものダウンライト型LED照明器具を納入した。パナソニック電工は、「公共空間として過去最大となる」(同社)1550台のLED照明器具を、JR北海道の「新千歳空港駅」に納入した。ホテルや旅館、コンビニエンス・ストア、電車/新幹線、オフィス、工場などで、先駆的な取り組みとして採用が始まっている。

 既存の光源を置き換えながらLED照明の市場は今後、大きく拡大する。「2008年には402億円だった全世界の照明用白色LED市場は、2013年には約10倍の4130億円、2018年には約18倍の7080億円の規模に成長する」(矢野経済研究所)。照明器具の国内市場について見ると、白色LED照明の占める割合は、2020年には1兆2000億円になる照明器具市場のうち、約40%に相当する5000億円に達するという予測がある。

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