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組み込み関連会議「ESC」開催、エネルギ・ハーベスティング技術の発展の鍵は何かエネルギー技術 エネルギーハーベスティング

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 運動エネルギや光エネルギ、熱エネルギといった環境エネルギを電力に変換する「エネルギ・ハーベスティング」、もしくは「エネルギ・スカベンジング」と呼ばれる技術は、過去20年間にわたって開発が進められてきた。この技術を用いた「永久に動作する装置」を使えば、ビルを監視したり、アクセスにしくい場所に設置した器具や機器のデータを収集したり、構造の状態や動きを検出したりすることが可能になる。

 こうした永久に動作する装置にとって最も重要な点は、いつまでも機能し続けることにある。従って、電池の交換を不要にしなければならない。ここ数年、エネルギ・ハーベスティング技術に対する関心は高まる一方だ。しかし、2009年3月31日〜4月2日に米国カリフォルニア州サンノゼで開催された組み込み機器関連の国際会議「Embedded Systems Conference 2009」(ESC 2009)において、TechOnline編集長のPatrick Mannion氏は、「過去20年間で、エネルギ・ハーベスティング技術に関して何が変わったのか」という質問を投げ掛けた。同氏はエネルギ・ハーベスティング技術に関するパネル・ディスカッションで司会を務めた。

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エネルギ・ハーベスティング技術に関するパネル・ディスカッションの様子(ESC 2009)

 この質問に対する答えを一言で言うならば、センサーとMEMS技術の進化に加えて、無線通信技術と低消費電力の電子回路が開発されたことである。こうした技術を組み合わせることで、エネルギ・ハーベスティング技術は変化を遂げてきた。

 米Texas Instruments(TI)社でエンジニアリング・マネジャーを務めるDave Freeman氏は、「低消費電力の電子回路と無線通信技術の開発によって、周囲の環境から回収したエネルギをさまざまな用途で利用することが可能になった」と述べた。

 さらに、米University of Illinoisで准教授を務めるPatrick Chapman氏も、「無線通信機器の消費電力が非常に少なくなったため、周囲の環境から回収したわずかな電力でも動作可能になった」とFreeman氏の意見に同意する。

 独EnOcean社でアプリケーション・エンジニアリング・マネジャーを務めるEugene You氏は、「無線通信機器の低価格化も忘れてはならない」と指摘する。「永久に動作する装置をさまざま場所に設置し、データを無線送信できるようになったのは、無線通信機器の価格が着実に低下しているからだ。われわれは、このことを忘れてしまっている」(同氏)。

 米Cymbet社のマーケティング部門でバイス・プレジデントを務めるSteve Grady氏は、「周囲の環境から回収したエネルギを有効に活用するには、蓄電装置が欠かせない。システムの中には、一時的に大量のエネルギを必要とするものもあるからだ。当社が開発している薄膜電池などの蓄電装置に電力を蓄えれば、システムが電力を必要としたときにすぐに供給できる。ただし、こうした蓄電装置は、電力を長時間蓄えておけなければならない」と述べた。

 新しい技術はどんなものであれ、コストを下げることで普及し、主流の技術となっていく。そのためには、活発で大きな市場が不可欠になる。それでは、エネルギ・ハーベスティング技術のキラー・アプリケーションは何なのだろうか。

 英Perpetuum社の事業開発部門でディレクタを務めるKeith Abate氏は、「無線通信がキラー・アプリケーションだ」と主張する。

 TI社のFreeman氏もAbate氏と同じ意見だ。Freeman氏は、「さまざまなアプリケーションで利用されている『ワイヤレス・センサー・ネットワーク』がエネルギ・ハーベスティング技術の普及の鍵を握っている」と語る。

 一方、Cymbet社のGrady氏は、スマート・ビルディングやインテリジェント・モニタリングをキラー・アプリケーションに挙げる。「こうした刺激的な用途によって、エネルギ・ハーベスティング技術の導入が促進されるはずだ」と主張する。

 さらに、University of IllinoisのChapman氏は、「MEMSセンサー自体がエネルギ・ハーベスティング・デバイスとして機能するようになれば、新たな変化が起こるだろう。例えば、将来的には、血液中を流れる医療用センサーがキラー・アプリケーションになる可能性もある」と述べた。

 エネルギ・ハーベスティング技術が最終的に目指すアプリケーションは、無線通信とセンサーを組み合わせた技術ということになる。

 現時点でも、エネルギ・ハーベスティング・デバイスを使えば、データの収集や処理、伝送、分析などを実現できる。しかし、現在求められているのは、こうしたデータの相互運用性の確保にある。

 Cymbet社のGrady氏は「この目標を達成するには、インターネット・プロトコル(IP)の採用が最適だ」と指摘する。「IPを使えば、さまざまなワイヤレス・センサー・ネットワークから集めたデータを1個所にまとめることができる。ただし、IPに対応した無線通信機器は消費電力が大きいという問題がある。さらに、IPを利用する場合は、何十億個ものセンサーに新しいアドレス空間を割り当てる必要がある」(同氏)。

 同氏によれば、さまざまなワイヤレス・センサー・ネットワークに対応した標準プロトコルの開発には「2〜3年はかかる」という。

 同氏は、「現在は無線LAN(WiFi)やBluetooth、Zigbeeなど、多種多様な無線通信技術が使える。しかし、相互運用性を確保しなければ、エネルギ・ハーベスティング技術のキラー・アプリケーションとなるワイヤレス・センサー・ネットワークは構築できない」と述べた。

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