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Wi-Fi、WiMAX、LTEどれでも使える、コグニティブ無線に実用化の兆し無線通信技術 コグニティブ無線(1/2 ページ)

利用する周波数や帯域(チャネル)幅、通信方式などを、その時々の利用状況に合わせて動的に変える「コグニティブ無線」。電波資源のひっ迫という、今後避けられない課題を解決する切り札とされている無線技術である。

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 利用する周波数や帯域(チャネル)幅、通信方式などを、その時々の利用状況に合わせて動的に変える「コグニティブ無線」。電波資源のひっ迫という、今後避けられない課題を解決する切り札とされている無線技術である。技術的な難易度が高く、導入はまだ先とされてきたが、最近になって実用化の兆しが少しずつ見えてきた。

 コグニティブ無線を実現する際の土台となる国際標準規格「IEEE 1900.4」が2009年2月に策定された。また、同年5月に開催された無線技術関連の展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2009」では、KDDIと情報通信研究機構(NICT)がそれぞれコグニティブ無線のデモを見せ、技術開発が着実に進展していることを訴求していた。

 研究機関や通信事業者だけではなく、半導体ベンダーもコグニティブ無線への対応を進めている。WiMAX向けパワー・アンプなどの設計・開発を手掛けるディー・クルー・テクノロジーズは、同年3月に発表した開発ロードマップにコグニティブ無線に向けたパワー・アンプを盛り込んだ。

 コグニティブ無線には、いくつかのタイプがある。そのうち既存の無線通信方式を活用する方法については、2015年ころには導入が始まる見通しだ。「いわゆる第3.9世代の携帯電話通信方式であるLTEが普及した2〜3年後に活用され始めるのではないか」(ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009の KDDIブースの担当者)という指摘もある。

 コグニティブ無線を実用化する兆しが表れてきたのには、「携帯電話機といった携帯型無線端末に適する400M〜6GHzの周波数領域で、空いている周波数帯域が足りなくなりつつある」(NICTの新世代ワイヤレス研究センターユビキタスモバイルグループの専攻研究員である石津健太郎氏)という背景がある。使える周波数帯域が足りなければ、新たなサービスや通信方式を導入するのが難しくなる。さらに、技術的には高い伝送速度が見込めるのに、周波数帯域が足りないために十分な実効伝送速度を確保できないといった悪影響を及ぼす。

図1
図1 異なる無線通信システムを選んで使うその時々の状況に応じて利用する無線通信方式を変えることで、無線資源の有効活用が図れる。ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009でKDDIが展示した内容を基に本誌が作成

 仮に、ある用途に割り当てられた帯域でもその瞬間に利用されていない、または混雑していない周波数があれば、それをほかの用途に活用することで、利用可能な周波数の枯渇という課題の解決が図れる。これがコグニティブ無線の基本的なアイデアである(図1)。

 具体的には2つのタイプがあり、それぞれ特性が異なる。1つは、例えば無線LANやWiMAX、WCDMA、PHSといった既存の無線通信方式が利用する通信周波数の混雑度などを無線端末が認識して、利用する方式を動的に変える「ヘテロジニアス型」。もう1つは、「周波数共用型」と呼ぶものである。特定のサービスに割り当てられた周波数であっても、地域や時間帯によって使われていない周波数がある。この空いた周波数を無線端末が探し出して必要な通信帯域を確保する方法だ。通信プロトコルは、周波数が変わっても変化しない。

まずはヘテロジニアス型

 2009年2月に規格化されたIEEE 1900.4の内容は、基本的にはヘテロジニアス型に向けたもので、コグニティブ無線の基本的なアーキテクチャ(枠組み)を規定した。具体的には、コグニティブ無線ネットワークの構成要素や、それぞれの構成要素が担当する機能(役割)、構成要素間の通信手順(プロトコル)、通信するデータの内容などである。

 構成要素は7つある。7つのうち2つは、無線アクセス・ネットワーク(RAN)を取りまとめるコア・ネットワーク側の役割を規定するもので、「OSM:Operator Spectrum Manager」と「NRM:Network Reconfiguration Manager」。もう2つはRAN側の役割を規定する「RRC:RAN Reconfiguration Controller」と「RMC:RAN Measurement Collector」。残る3つは無線端末側の役割を規定する「TRM:Terminal Reconfiguration Manager」と「TRC:Terminal Reconfiguration Collector」、「TMC:Terminal Measurement Collector」である。

 このうちで中心的な役割を担うのは、NRMとTRMである。そのほかの構成要素は、無線通信システムごとの違いを吸収する役割を持つ。NRMやTRMを開発した後に、あまり変更を加えずに済むようにするためである。

 具体的にはTRCやTMC、RRC、RMCは、NRMまたはTRMに、端末側または基地局側の各種情報を提供したり、NRMまたはTRMから制御情報を受け取ったりする。例えば、TMCはRSSI(受信電界強度)や通信パケット量、スループット、パケット損失など、現在の通信状況を収集して、TRMに提供する。

 TRMでは、「ユーザー・プリファレンス」と呼ぶ利用者側の設定情報や、NRMなどから得た各種情報を基に、どの通信方式、周波数、チャネルが現在適しているかを判断する。

 IEEE 1900.4規格が策定された意義について石津氏は、「コグニティブ無線のアイデアそのものは10年前からあった。ただ、具体的なアーキテクチャが規定されたのは今回が初。実用化に向けた大きな進歩だ」と説明した。ただし、この規格の内容だけでは、実際の無線端末や無線基地局を構築できない。現在、 IEEE 1900.4規格に基づいた詳細なプロトコルを規定する「P1900.4.1」と、周波数共用型コグニティブ無線への拡張について検討する「P1900.4a」の策定が進められている。これが策定されれば、国際標準規格に準拠した無線端末および無線通信システムが構築可能な段階に入る。

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