篠田プラズマが3m×2mの装置を公開、145インチ型ディスプレイを実現:ディスプレイ技術
巨大なディスプレイを実現するには、単位ディスプレイをうまく組み合わせる手法が適している。篠田プラズマは1m各のモジュールを6枚組み合わせた145インチ型ディスプレイを開発した。
篠田プラズマは2009年5月、軽量で大画面化に向くプラズマ・チューブ・アレイ(PTA:Plasma Tube Array)を用いた145インチ型ディスプレイ「SHIPLA」を公開した(図1、図2)。
1m角のモジュールを横に3枚、縦に2枚接続した構成を採る。人の身長よりも高く、視野を覆うほど幅が広いディスプレイを実現することで、没入感を生み、新しいディスプレイの用途が開けるとする。まずは、デジタル・サイネージ(電子看板)、大画面コミュニケーション、テレビ会議、防災システムなどの表示装置を狙うとした。
図1 篠田プラズマの145インチ型ディスプレイ 横方向に曲率半径3mの曲面状に配置して没入感を高めた。960×720画素のプログレッシブ表示が可能。RGB各色8ビット表示で、輝度は 300〜400cd/m2。一部PDP特有の疑似輪郭が見えていたが、「セット・メーカー側の画像処理で対応する」(同社)。モジュール間のつなぎ目は 0.7mmあり、黒く見えるため、これを0.2mmに改善する予定である。
図2 SHIPLAを構成するPTA 1m角のPTAは長さ1m(写真の上下方向)、直径1mmのガラス・チューブを平行に並べた構造を採る。それぞれのチューブには、RGB各色に相当する 蛍光体が封入されている。両面の電極間の放電により発光する。1m角のPTAは320ドット×360ラインの表示装置として機能する。ガラス・チューブ同 士はそれらを挟む透明フィルムによって支持されているため、ディスプレイ全体をわずかに曲げることができる。
このようなディスプレイを他社の技術で製造した場合、重量と消費電力が課題になるという。103インチ型のPDPは重量が350kgに達する。一方、SHIPLAであれば、表示部を構成するPTAは1m角当たりの重量が1.2kgであるため、制御部などの重量を加えたとしても、145インチ型で60kgにとどまるとした。「当社のディスプレイは表示部自体がモジュール構成を採るため、運搬、設置、移動についても他社製ディスプレイに比べて容易である」(同社)。
展示品の定格消費電力は1.2kW。デモ表示時の消費電力は1kW以下であり、家庭用コンセントに接続して使えるとした。PDPを用いて145インチ型を実現すると、消費電力は3kWを超えるという。
当初は業務用ディスプレイを狙う。2009年1月に3m×1m構成のSHIPLAを国内セット・メーカーにサンプル出荷した後、今回の3m×2m構成のSHIPLAを同年3月にサンプル出荷したという。「2009年下期にはセット・メーカーが出荷を開始する予定である」(篠田プラズマの代表取締役社長を務める篠田傳氏)。
目標とする価格は「3m×2m構成の場合で数百万円。例えばLED素子を並べて3m×2mのディスプレイを構成すると価格は7000万〜8000万円になるだろう。消費電力も6kWに達する。大画面ディスプレイについてSHIPLAの価格と消費電力の低さに競合できる技術はないと考える」(同氏)。
同社はPTAモジュールの製造について、2008年1月にアルバック、藤森工業、大電と提携契約を結んでいる。同年5月にはヒビノと業務提携を結び、ヒビノの映像信号制御装置とSHIPLAを組み合わせて高画質化を図るとしていた。今回、さらに伊藤忠商事、ワイエイシイとも事業提携を結んだ。ワイエイシイとは製造ラインの自動化に関して、伊藤忠商事とは販売面で提携するという。2009年度の売上目標は約4億円であるとした。
【EE Times Japan 2009年6月号「Building Blocks」、p.18掲載記事】
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