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第1部 動向、なぜキャパシタなのかエネルギー技術 大容量キャパシタ(1/4 ページ)

キャパシタは電池とは異なる原理で電気エネルギーを蓄積する。電池に比べて寿命が長く、使用環境の制限が少ない。大容量キャパシタの用途は今後3種類に分かれる。まず、瞬間的に大電力が必要な用途、次に、二次電池と大容量キャパシタを組み合わせてそれぞれの欠点を補い合う用途、最後に二次電池の代替だ。

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 キャパシタ*1)(コンデンサ)は電池とは異なる原理で電気エネルギーを蓄積する。容量が非常に小さいため、長い間、蓄電用途には用いられていなかった。状況が変わるきっかけを作ったのが、米General Electoric社のH.L.Becker氏とV.Ferry氏だ。2人が1957年に開発した電気2重層キャパシタは、80万μF(0.8F)もの静電容量を備えていた。

*1) コンデンサは、英語ではcapacitorと呼ばれる。一方、condenserは凝縮器の意味を持つ。日本国内では誘電体を電極に挟む従来のコンデンサは、そのままコンデンサと呼ばれているが、電気2重層を用いる特に大容量品についてはキャパシタ(electric double layer capasitor、EDLC)と呼ばれる傾向にある。本文では、大容量の品種はキャパシタと表記した。

 日本国内では、1978年にNECと当時の松下電器産業が電気2重層キャパシタを相次いで製品化した。当初は1F以下の品種が電卓や腕時計などで蓄電用途に用いられた。1990年代に入ると、各種家電に採用が広がり、100F以下の品種が登場した。その後、徐々に静電容量が高い品種が開発されていく。2000年代に入ると、携帯電話機やデジタルカメラの負荷変動を吸収する用途が広がるとともに、数百Fを超える品種も現れてきた。

 現在では、携帯型機器の負荷変動の吸収といった小容量用途から、大容量が求められる鉛蓄電池代替まで幅広い用途で利用されるようになった。

キャパシタが進む道

 大容量キャパシタの用途は3つに分かれる(図1

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図1 大容量キャパシタの可能性 大容量キャパシタの今後の用途は3種類に分かれる。パワー密度など本来の強みを生かした使い方(左端)や二次電池と組み合わせた使い方(中央)は狙いやすいが、高いエネルギー密度が必要な用途(右端)は実現が難しい。

 まずは現在の二次電池では実現できない蓄電用途だ。単位重量単位時間当たりに出力できる電力量(パワー密度)が二次電池は100W/kg程度と少ない。入力(充電)できるパワー密度も同様だ。瞬間的に大電力が必要な用途には、1000W/kgを超えるキャパシタが適する。充放電を頻繁に繰り返す用途にも向く。大容量キャパシタの内部抵抗が数mΩ程度と低いためだ。損失が少なく、発熱しにくい。安全性や温度特性の高さを要求される用途でも有利である。さらに、二次電池では蓄電が難しい低い電圧を印加しても蓄電できる。このようなキャパシタの強みを伸ばす方向で新しい用途を開拓できる。

 次の可能性は二次電池と大容量キャパシタを組み合わせる手法だ。エネルギー密度に優れる電池とパワー密度に優れる大容量キャパシタを組み合わせることで、それぞれの欠点を補うことができる。ハイブリッド自動車や電気自動車など車載用途はこの手法を採るだろう。

 3番目の可能性は、これまで二次電池が担ってきた用途に食い込み、代替することだ。電池が大容量キャパシタに比べて優れている点は、重量当たりのエネルギー量(重量エネルギー密度)が10倍程度高いことだ。キャパシタのエネルギー密度を今よりも10倍高めることは難しいというのが、ほとんどのキャパシタメーカーの主張である。ただし、第2部で紹介するように電池並みのエネルギー密度が実現できるという主張もある。

 電池は大容量キャパシタよりも出力電圧が高い。電気2重層キャパシタの定格電圧は1セル当たり2.5〜3V程度だが、リチウムイオン二次電池では例えば3.7V、鉛蓄電池では12Vもの電圧が得られる。これらの電池を代替するには同程度の電圧を出力する必要がある。

パワー密度が高い

 以下、大容量キャパシタの3つの用途について、それぞれ採用する利点を解説する。

 高いパワー密度が必要な用途ではエネルギー回生とエネルギーバックアップが主要な位置を占める。

 運動している装置を停止させる際には、一般に運動エネルギーを熱に変換している。ここに何らかのエネルギー回生装置を組み込めば、運動エネルギーを電気エネルギーに変えて蓄え、装置を再び動かし始める際に利用できる。鉄道など質量が大きな物体であればエネルギーを回収しやすいが、質量が小さい場合は回収可能なエネルギーが小さく、蓄電装置の内部抵抗を低くする必要がある。「エレベータの運動エネルギーを回収する用途には、二次電池は内部抵抗が高すぎて使えない。既存の電気2重層キャパシタでもまだ高いため、さらに内部抵抗の低い品種を開発した(図2)」(指月電機製作所)。内部抵抗が低いとエネルギー回収効率が高まる他、充放電を繰り返した場合でも熱が発生しにくいため、放熱用の器具が不要になるというメリットも生まれる。

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図2 指月電機が開発した低抵抗品 1F当たりの内部抵抗が0.5ΩFと低い「FML-XX」を開発した。図3 明電舎の瞬低補償装置「Meiposs-MCP」 出典:明電舎

 エネルギーバックアップ用途では、無停電電源装置が有望だ。無停電電源装置は一般に容量(バックアップ時間)が重視されるが、パワー密度が重要な場合もある。例えば、半導体製造工程や液晶パネル製造工程では、電源電圧が瞬間的に低下しただけでも仕掛品が損なわれてしまう。「当社の『Meiposs-MCP』(図3)では2ms以下で製造ライン全体の電源を大容量キャパシタ側に切り替えられる」(明電舎でコンポーネント事業部キャパシタ事業開発部部長を務める安藤保雄氏)。このような比較的大規模な製造ラインに向けた無停電電源装置を二次電池で作ると、とても大きくなってしまい現実的ではない。

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