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第5回 トランジスタには接続方法が3つAnalog ABC(アナログ技術基礎講座)(3/3 ページ)

アナログ回路を設計する上で、トランジスタの基本的な動作や特性、接続方法を理解するのは大切なことです。本連載でも、トランジスタを活用したさまざまな回路を紹介する予定です。まずはその前準備として、トランジスタの動作や接続方法について大まかに説明します。

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3つの機能

 図1からも分かるように、トランジスタには3つの端子があります。従って、どの端子を接地するかによって、3つの接続方法に分かれます(図4)。「エミッタ接地回路」、「コレクタ接地回路」、「ベース接地回路」の3つです。詳しい動作原理は次回以降に説明することにして、今回は機能の概要を紹介します。

 まず、最も頻繁に使われるのは、エミッタ端子を接地するエミッタ接地回路です(図4(a))。増幅回路として使われており、ベース端子に入力された微小信号を増幅してコレクタ端子から取り出せます。

図4
図4 トランジスタの3つの接続方法 トランジスタには3つの端子があるため、3つの接続方法があります。

 エミッタ接地回路の次によく使われるのが、コレクタ接地回路です(図4(b))。別名「エミッタ・フォロワ」とも呼ばれます。ベース端子に入力した電圧がそのまま、エミッタ端子に出てくる回路です。入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが小さいという特徴があります。例えば、出力インピーダンスが10kΩのセンサーに、入力インピーダンスが1kΩの回路を接続すると、センサーから取り出せる信号の振幅は1/10になってしまいます。このときに、センサーと後段回路の間にエミッタ・フォロワを挿入すれば、損失を最小限に抑えることができます。

図5
図5 接続方法の工夫で回路を高速動作 エミッタ接地回路に、ベース接地回路を組み合わせると、回路を高速動作させることができます。

 最後のベース接地回路は、あまりなじみの無い回路かもしれません。エミッタ端子に入力した電流と同じだけ、コレクタ端子から電流を出力する回路です。コレクタ接地回路(エミッタ・フォロワ)に似ています。コレクタ接地回路が電圧に対するバッファとして動作するのに対して、ベース接地回路は電流に対するバッファになります。例えば、エミッタ接地の増幅回路にベース接地回路を追加すると、高速動作させることができます(図5)。

表1
表1 トランジスタの3つの接続方法と、それぞれの機能 トランジスタは接続方法ごとに、機能や入力インピーダンス、出力インピーダンスが異なります。表中で、Reはエミッタ抵抗、Rcは負荷抵抗です。また、gm=Ie/Vtです。ここで、Ieはエミッタ端子に流れる電流(エミッタ電流)、Vt=kT/Qです。kはボルツマン定数で、Tは温度[K]、Qは電気素量(素電荷)です。図4において、R1とR2は無視できるほど大きいと仮定しています。

 それぞれの回路の機能と利得と入力インピーダンス、出力インピーダンスの計算式を表1にまとめました。次回は、エミッタ接地回路の動作原理や定数の決め方、周辺回路をどのように設計していくかを紹介します。

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Profile

美齊津摂夫(みさいず せつお)

1986年に大手の通信系ハードウエア開発会社に入社し、光通信向けモジュールの開発に携わる。2004年に、ディー・クルー・テクノロジーズに入社。現在は、同社の常務取締役CTO(最高技術責任者)兼プラットフォーム開発統括部長を務めている。「大学では電気工学科に所属していたのですが、学生のときにはアナログ回路の勉強を避けていました。ですから、トランジスタや電界効果トランジスタ(FET)を使ったアナログ回路の世界には、社会人になってから出会ったといっていいと思います。なぜかアナログ回路の魅力に取りつかれ、23年目になりました」(同氏)。


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