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微細周期構造を加熱処理で形成、LED照明や太陽電池に役立つLED/発光デバイス

王子製紙は、50nm〜10μmの周期構造を持った大面積フィルムを安価に製造する手法を新たに開発した。狙い通りに光源の光を拡散させたり、逆に反射を防ぐことができる。

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 平面型照明やディスプレイ装置のように光を放出する機器では、いかに狙い通りに光源の光を拡散させるかが重要である。太陽電池のように光を吸収する機器では、光をなるべく反射させないことが必要だ。

 これらの機器では光源や太陽電池そのものの改良に加えて、機器表面にさまざまな工夫が凝らされている。例えば、従来から各種の光拡散フィルムが製品化されており、ディスプレイ装置などに利用されてきた。

 このような光学フィルム材に必要な特性は複数ある。例えば可視光の波長(400nm〜800nm)相当の周期的な構造を持つことである。用途によっては可視光の波長よりも長い周期、あるいは短い周期が必要になる。

 従来、このような周期構造はスパッタリング法で形成されていた。このため、大画面テレビや薄膜太陽電池モジュールに採用できるほどの大面積化が難しく、コスト高につながっていた。

 王子製紙は、50nm〜10μmの周期構造を持った大面積フィルムを安価に製造する手法を新たに開発した。50cm角のフィルムで周期構造を正確に作り込むことができ、50cm×1m角のフィルムも今後製造可能だとした。

熱収縮率の違いを利用

 開発したフィルムの厚みは100μm程度であり、2層構造を採る。下層に当たるPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムと上層の樹脂フィルムから成る。PETフィルムを構成する分子の向きを製造時にそろえておくことで、加熱時に特定の方向にのみ収縮させる。次に、PETフィルムの上にPETとは異なる熱収縮率を示す材料をコーティングする。その上で加熱処理を施すと、2層の熱収縮率の違いによって、下層のPETフィルムは平坦なままだが、コーティングされた上層が波打った凹凸状に変形する。フィルム全面にわたって等しい間隔を保った平行線状の凹凸構造(ナノバックリング)が無数に形成されるという。

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図1 ナノバックリング技術を適用した光拡散板 すりガラスのように無秩序に光を拡散させるのではなく、特定の方向にのみ拡散(異方性拡散)できる。LEDの光を縦方向に拡散させた場合(a)と光拡散板を90度回転させた場合(b)。(b)では点光源である6つのLEDから放出された光を直線状に見せている。

 「ナノバックリングの周期は、上層の厚さや樹脂材料の種類、熱処理時の温度*1)を変化させることで制御でき、50nm〜10μmという範囲で自由に変えられる」(王子製紙新事業・新製品開発センター企画開発室でマネージャーを務める川島義晴氏)。

 ただし、この2層構造のフィルムは熱によって変形しやすいため、使用時に高温下にさらすとフィルムのナノバックリング構造が変化してしまう。例えば、LED照明に使う場合、光源とフィルムの距離が近いと高温下にさらされる可能性がある。

 そこでナノバックリング構造を、より耐熱性の高い樹脂上に形成する手法を用いた。金属イオンを溶かした溶液中で、フィルムを陰極に接続し、電圧を印加することで、フィルムの微細な凹凸上に金属が折出する電鋳技術を利用した*2)。次に、折出した金属の薄板を金型として耐熱性樹脂を成形加工する。こうすることで、例えばメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂にナノバックリングを転写できるという。

*1)PETの融点は約260℃であるため、これよりも低温で加熱処理を施す。

*2)電鋳法を用いると50nmの構造を金属薄板に形成できる。

 点光源であるLEDを用いて例えば蛍光灯型の照明器具を作ろうとすると、何らかの手法を用いて光を拡散させ、管面が均一に光っているようにすることが望ましい。それには例えば異方性拡散を示す透明な材料が必要だ。

 「今回開発したナノバックリング構造を備えた光拡散板とLEDを組み合わせると、蛍光灯の長軸方向に強く光を拡散できる(図1)。LEDのまぶしさが目立たない自然な照明器具の実現に役立つ」(川島氏)。この場合、ナノバックリングの周期は1μ〜数十μmが適するとした。

 一方、周期を可視光の波長よりも小さくすることで、可視光の反射率を0.5%以下に抑え、例えば太陽電池に入射する太陽光を増やす効果を実現できるという。

 この他上層フィルムの凸部にのみ金属薄膜を形成することで、ワイヤーグリッド偏光板として利用でき、液晶パネルの輝度を高められるとした。

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