オーストリアTechnical University of Grazの研究者らは、2次電池のパワー密度が従来の2倍以上になるというゲル材料を開発したことを発表した。自動車向けの2次電池に向く。
現在のリチウムイオン2次電池は通常、負極材料としてグラファイトを用いる。負極の表面をSi(シリコン)で被覆するとLi+(リチウムイオン)のエネルギ密度が10倍になる。ただし、蒸着法によって電極をSi被覆すると温度の上昇に伴いSiの体積がグラファイトと比べて膨張するという性質がある。そのため、継続的に十分な成果が得られていない。
オーストリアの研究チームは、ドイツの電池メーカーVarta Microbatteries社と合同で、この欠点を克服するシリコン含有のゲル材料を開発した。研究チームのプロジェクト・マネジャーを務めるStefan Koller氏によると、同ゲル材料を採用することで、シリコンの体積膨張が原因で起きる機械的応力の負荷を減少できるという。
ただし、このゲル材料を採用しても、Li+のエネルギ密度は必ずしも10倍にはならない。同氏によると「すべての材料を試したわけではなく、もう1つの電極の方も課題として残っている」と語る。それでも、今回開発した製造プロセスを採用することで、エネルギ密度が現在の2倍のリチウムイオン2次電池を開発できる。
Koller氏は、今回の技術を用いた2次電池の量産開始時期については明言しなかった。同氏は「研究チームは『先行モデル』を作ったのであり、商用化のためには量産規模の製造ラインが必要だ。」と指摘した。
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