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60GHz帯で高速化狙うBluetooth、UWB技術の未来は閉ざされたか無線通信技術 Bluetooth(1/2 ページ)

Bluetooth規格の標準化団体である「Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)」は、WiMedia Allianceから取得したUWB(Ultra Wide Band)の技術仕様を利用する計画を見送った。

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 Bluetooth規格の標準化団体である「Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)」は、WiMedia Allianceから取得したUWB(Ultra Wide Band)の技術仕様を利用する計画を見送った。

 WiMedia Allianceは、UWB技術の仕様策定や次世代規格の標準化作業を進めてきた業界団体である。2009年3月に、Bluetooth SIGとWireless USB Promoter Group、USB Implementers Forum(USB-IF)の3団体に活動内容を委譲すると発表していた。Wireless USB Promoter GroupはUWB技術を利用してUSBインターフェースの無線化を図る業界団体、USB-IFはUSB規格の標準化団体である。今回のBluetooth SIGの決定は、かつて高速無線通信技術の最有力候補と見られていたUWB技術の未来がまたも途絶えたことを意味する。

 Bluetooth SIGでは、Bluetoothを高速化する技術の候補として、UWB技術の替わりに60GHz帯を使った無線通信技術に注目している。60GHz帯を使った無線通信技術については、すでに複数の業界団体が存在し、それぞれ独自仕様の策定を進めている。今回、Bluetooth SIGが60GHz帯に関心を向けたことで、60GHz帯への注目度はさらに高まった。

知的財産の議論がまとまらず

 Bluetooth SIGはこれまで、WiMedia Allianceに対して、各メンバーの知的財産を基本的に無料で使えるようにすることを要請していた。目的は、Bluetoothと同じような知的財産のライセンス形態を実現することである。

 Foley氏は、2009年10月第4週の定期ニュースレターで、Bluetooth SIGのメンバーに、「WiMedia Allianceと知的財産の利用に関する合意には至らなかった。Bluetooth SIGはこれ以上、UWB技術採用に向けた作業を進めないという結論を下した」と正式に発表した。

 UWB技術に取り組む新興企業であるAlereon社の広報担当者は、「WiMedia Allianceはピーク時におよそ350ものメンバーを抱えていた。Foley氏が示唆するよりも、状況はずっと複雑だった」と語る。

 Alereon社の広報担当者は、「これまで仕様策定に貢献してきたWiMedia Allianceのメンバー全員の署名なしに、知的財産に関する方針を変えることは難しい。想像できるように、米Intel社や米Texas Instruments社、オランダRoyal Philips Electronics社、米Eastman Kodak社、フィンランドNokia社、米Microsoft社をはじめとするメンバーに、方針を変えることを認める法的書類に署名させるのは、ほぼ不可能だ」と述べた。

 「Bluetooth SIGには、ヨーロッパ電子計算機工業会(ECMA:European Computer Manufacturer Association)から標準仕様を入手して、それを利用するという選択肢もあった。しかし、繰り返しになるが、Bluetooth SIGはそうしないことを決めた」(Alereon社の広報担当者)。なお、Alereon社は、WiMedia Allianceの知的財産をBluetooth SIGの管理下に置くか否かを決める投票を棄権した。

60GHz帯はUWB技術の二の舞となるか

 無線通信業界のほかの多くの団体と同様に、Bluetooth SIGは、将来Bluetoothで利用する高速無線通信技術の候補として、60GHz帯に関心を寄せている。しかし、60GHz帯には、すでに2つの業界団体が注目しており、それぞれ独自に仕様策定を進めている。60GHz帯も、かつて複数の業界団体が対立して混乱に陥ったUWB技術と同じ末路をたどる可能性がある。

 60GHz帯に注目する業界団体の1つである「WirelessHD Consortium」は、セットトップ・ボックスからデジタル・テレビに、非圧縮の高品位(HD)映像を送信する技術仕様「WirelessHD」の第1版を策定済みである。新興企業である米SiBEAM社が技術仕様に準拠した無線チップを提供しており、すでにパナソニックなどが採用した。

 加えて2009年初めには、「Wireless Gigabit(WiGig) Alliance」という業界団体が新たに発足した。無線LANチップや無線LANシステムの大手ベンダーが支援している。WirelessHD規格が対象とする用途を含めた、さらに広範な利用シーンを狙って技術仕様の策定を進めている。

 振り返れば、UWB技術を巡って、IEEEの内外で多くの企業が対立していた。このことが、UWB技術の導入が遅れた要因のひとつだった。Bluetooth SIGのFoley氏は、「競合する2つの陣営を作って失敗してしまったUWB技術から、少しでも何か教訓を得てほしいと思う。2つの陣営を作ってしまったことが、UWB技術が成功を収めていない理由のひとつだからだ」と述べている。かつて、UWB技術の規格策定に関しては、WiMedia Allianceと「Multiband OFDM Alliance(MBOA)」という2つの業界団体が争いを繰り広げていた。

 「2つの陣営の論争がどれだけの時間やエネルギ、資産を無駄にしたかを思い出してほしい」(同氏)

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