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WirelessHDの普及を目指す米SiBEAM社、携帯型機器への搭載も狙う無線通信技術 ミリ波(1/2 ページ)

「WirelessHD」規格に準拠する無線通信チップセットを販売する米SiBEAM社が、規格普及のために活発に動いている。

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 「WirelessHD」規格に準拠する無線通信チップセットを販売する米SiBEAM社が、規格普及のために活発に動いている。WirelessHDとは60GHz帯を利用する無線通信方式の一種だ。主用途はハイビジョン(HD)映像の非圧縮伝送である。セットトップ・ボックスやBlu-ray Discプレーヤから、テレビ受像機に無線で映像信号を送信できる。

 同社は2009年10月に、WirelessHD準拠無線チップの第2世代品のサンプル出荷を始めた(図1)。さらに、2010年1月には第3世代品の概要を明らかにした。第3世代品では、高性能を追求した品種に加えて、携帯型電子機器に向けて消費電力を数100mWまで低減した品種を新たに用意する。2011年中にサンプル出荷を開始し、2012年には量産を開始する計画だ。

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図1 テレビと複数のAV機器を無線接続 第2世代品を使ったデモの様子。1台のテレビに対して、6つのAV機器を無線接続したときの制御画面。テレビのリモコンで使用するAV機器を選択し、選択したAV機器を制御できる。出典:サイビームジャパン

 さらに、同社のチップセットが備える機能のうち、データ送信側機器に実装するベースバンド処理を、IP(Intellectual Property)として2010年後半にも提供を開始する。半導体ベンダーや機器メーカーが自社製のASIC(Application Specific Integrated Circuit)にこのIPを組み込むことで、WirelessHD準拠の無線通信機能を備えた機器を低コストに製品化できる。

もはや60GHz帯は特別ではない

 WirelessHD規格が2008年1月に登場した当初、宅内で使う民生機器で60GHz帯という極めて高い周波数帯域を使用するのは難しいという指摘が数多くあった。例えば、無線LANに使う周波数帯域は2.4GHz帯または5GHz帯である。一般に、周波数帯域が高くなればなるほど、無線チップの設計や製造が難しくなる。当初からSiBEAM社は、量産時の製造コストを抑えるために、Si(シリコン)材料のCMOSプロセスを使うことを明言していた。高周波特性が優れる化合物半導体を使わずに、60GHz帯で安定して動作する無線チップを製品化するのは難しいと見る関係者は多かったのである。

 しかし、規格策定以降の動きを振り返ると、製品化まで順調に進んだと言えるだろう。2009年4月にパナソニックが、業界で初めて60GHz帯の無線通信に対応するデジタル・テレビを発売した。2009年後半には、ソニーや韓国LG Electronics社が続いた。宅内で60GHz帯を活用することが十分に可能であるという事実は、業界の共通認識となりつつある。

 もはや、60GHz帯を使った無線通信技術は特別なものではなくなった。60GHz帯は、現在、さまざまなメーカーから注目を集めている。例えば、2009年5月には、米Intel社や米Dell社などが60GHz帯を使う無線通信規格の推進を目指す業界団体「Wireless Gigabit(WiGig)Alliance」を設立している。同団体では同じ60GHz帯でも、WirelessHDとは異なる通信方式を策定した。

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