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【ISSCC 2010】5年前の技術予測は当たったのかビジネスニュース 業界動向

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 2005年に開催された半導体関連の国際学会「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)」を振り返ってみよう。当時、ある委員会では、いまだ見えぬ未来を思い描き、2010年に半導体業界がどのようなものになっているかを想像していた。未来を正しく把握できた技術者はいたのだろうか。各パネリストの発言を引用し、それを基に考察してみよう。以下では、委員会での発言の順序を無視している。

 Werner Weber氏(ドイツInfineon社)「2010年にはメモリーに関する新しいコンセプトが生まれて成熟していると思われる」。

 残念ながら、この予測は外れた。メモリー業界はいまだに新しい領域に飛び込めていない。現状は崖っぷちに立たされたままであると考えられる。不揮発メモリーに関する今年(2010年)のISSCCのセッションを見ると、米Unity社のCMOx技術のような新規な技術と成熟した技術の両方が紹介されている。成熟した技術の一例はPRAMに関するスイスNumonyx社の2つの論文だ。どれほど成熟しているかは、Numonyx社が予測通りに2010年の第1四半期中に1Gビットのサンプル品を出荷できるかどうかによって決まるだろう。

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 Dennis Monticelli氏(米National Semiconductor社)「2010年時点で最も興味深い進展は、ミックスド・シグナル回路向けに特別に最適化したCMOS/BiCMOSプロセスによってもたらされるであろう」。

 ISSCC 2010のアナログ技術セッションでは、100%の回路がCMOSプラットホーム上に構築できた技術成果を誇っている。

 Bill Redman White氏「接続性(コネクティビティ)については、依然としてホットな話題を提供する要素として脚光を浴び続けるだろう。無線、有線ともにだ。同時に生物/医学分野が成長するであろう」。

 この判断は賢明であった。というのは、伝送路が扱える量よりも多くのデータが常に存在していると思われるからである。当時のいくつかの委員会での議論を追えばWhite氏のと同じ予測が立てられたかもしれない(少なくとも私が5年前に関連する委員会を巡っていればこのように予測したであろう)。予測にたがわず、2010年2月8日の夜に開催予定のある委員会では、エネルギ効率に優れた高速インターフェースを取り上げており、また将来のバイオニクスに関する2010年2月9日の委員会では、着実に成長する同分野での技術的な可能性を示唆している。

 2005年のパネリストたちは、予測に対して合格点をもらうに値するだろう。歴史的背景を考慮した上で、彼らの予測とほかの専門家が5年前に立てた予測とを比較してみよう。「CMOSを超える世界(Life Beyond CMOS)は存在するか」とは、米IBM社のS.M.Solomon氏が自らのプレゼンテーションで答えようと試みた質問である。当時は、プレーナCMOS技術のスケーリングに関する課題は解決できないものと思われていた。今、あらためて思い返せば、歪みSi(シリコン)チャネルによって、寸法スケーリングでは実現できなかった駆動電流の増加が可能になった。

 CMOSを超える

 この後、金属ゲート/高誘電体(high-k)を導入することで、電界による反射現象を避け、FETチャネルの制御が可能になった。マルチゲートFET(MuGFET)と垂直チャネルは、研究室レベルの技術だが、研究開発には依然として注目が集まっている。III-V族系のチャネル材料が先に実用化されることがあれば、立体構造トランジスタであるFinFETや類似の素子はおそらくもう10年先の技術になるであろう。

 これはまさに、昨年、米Intel社のフェローであるMike Mayberry氏から聞いた話そのままである。彼のブログには、Siを代替しようとする研究開発が進むときに乗り越えた主要なマイルストーンを追跡して記録している。マイクロエレクトロニクス技術の将来に少しでも興味があるのなら、彼のブログは一読に値する。

 2月7日に米カリフォルニア州サンフランシスコで始まった「ISSCC 2010」では、「CMOSを超える(Beyond CMOS)」と題したセッションが開催初日に開かれた。これは参加するに値する。思い起こすと興味深いが、2005年のSolomon氏の論文は「CMOSの代替は必要なのか」という問いかけで締めくくられている。

 新しく生まれた技術が根を下ろすとすれば、何らかの新しい設計インフラが必要になる。半導体素子の国際学会IEDMなどで発表された素子や技術を駆使して実際に動く回路を設計する手法を研究した発表もISSCCにはある。このため、新しい技術設計に関するセッションがISSCCにも設けられることになる。超先端電子技術開発機構(ASET)は、論文を同セッションで発表する予定だ(講演番号7.6)。この論文は、先端技術を使用したウエハーを製造するために必要なテスト用治具をいかに改良するかということを論じたものだ。TSV(Through Silicon Via)技術に関するベルギーIMECと米Qualcomm社による論文は、同技術がすでに確立していると信じている技術者にとっては不思議な内容だ(講演番号7.8)。実際にはTSV技術を適用した量産インフラはまだ整備されていない。

 CMOS代替技術の議論には常に注目している。おかげで、ユーザー・カスタマイズ可能なロジック(UCLP:User Customizable Logic Paper)に関する論文に気付いた。この論文では、有機物からなる大量のトランスミッション・ゲート構造「SOTG」(sea-of-transmission gates)をインクジェット印刷によるインターコネクトで接続する手法について論じている。同論文は、東京大学と三菱製紙、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州シュトゥットガルトにあるMax Planck Institute for Solid-State Researchによる共同論文である(講演番号7.3)。

 論文の著者はどうやら、一般的なパソコン・セットを購入すると付いてくるようなインクジェット・プリンタを用いて、カスタムICを製造する手法を開発したようだ。もしそうであれば、第2次電子工作ブームが到来するのも間近だろう。米Apple社を創設したSteve Wozniak氏とApple社の元CEOであるSteve Jobs氏の連携が気になるところだ。

 ISSCCの事務局は、おそらく、過去を振り返って重要なヒントを得たと思われる。「ISSCC 2010」というフレーズを開催前にGoogleで検索してみたところ、2005年時点のパネリストたちの予測が最初のページに表示されていた。

 今回、より長期的な視点に立って議題を定めた委員会がある。「2025年の半導体業界」では、5年前にISSCC事務局が将来を予測しようと構想したときよりもより高い創造性が必要になるだろう。

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