旭硝子がLight Peak対応の光ファイバーを開発、折り曲げても通信可能:高速シリアルインタフェース技術
伝送距離100mで10Gビット/秒を超える高速信号伝送が可能な他、長距離伝送に使う石英光ファイバーと比較して柔軟性が高いことが特長。曲げ半径5mmのとき、繰り返し曲げ回数は5万回以上だという。
旭硝子は2010年3月24日、光ファイバーケーブルの新製品「FONTEX」の量産出荷を2010年7月に開始すると発表した。FONTEXは曲げに強く、伝送距離100mで10Gビット/秒を超える高速信号伝送が可能だという。米Intel社が開発した10Gビット/秒の光学インタフェース「Light Peak」や次世代3Dテレビ受像機の他、データセンターの機器間光配線に役立つという(図1)。
FONTEXは透明度が高いことが特長である。アクリル樹脂などを用いて光ファイバーを製造すると、透明度が十分確保できない。これはアクリル樹脂が含むC(炭素)-H(水素)結合が、光通信で用いる波長650nmから1300nmの領域で伝送損失の原因となるためである。
FONTEXは、同社が開発したF(フッ素)系プラスチック「CYTOP(サイトップ)」を用いた。屈折率が高い光ファイバーの中心のコア部と屈折率が低い周辺部のクラッド部のいずれもCYTOPからなる。CYTOPはC(炭素)-H(水素)結合を持たないため、波長650nmから1300nmの領域では透明になり、伝送損失が無視できるという。
長距離伝送に使う石英光ファイバーと比較して柔軟性が高いことも特長だ。曲げ半径5mmのとき、繰り返し曲げ回数は5万回以上だという。「光ファイバーを束ねることはもちろん、固結びにすることもできる」(同社)。光ファイバーは曲げ半径が小さくなると、コア部とクラッド部の屈折率の差を大きくしないと光が反射せず漏れてしまう。FONTEXでは、クラッドの内側にもう1層クラッドを形成するダブルクラッド方式を採った。これにより、曲げ半径5mmのときの損失を0.5dB以下に抑えたという(図2)。
図2 クラッド構造の工夫 従来のクラッド構造(左)では曲げ半径を小さくできず、曲げによる応力の負荷にも耐えられない。FONTEXが採用したダブルクラッド構造では、屈折率を段階的に変化させているため、曲げ半径を小さくできる。出典:旭硝子
直径や長さがそれぞれ異なるさまざまな仕様の品種を用意した。同社によるとコア部が直径120μm、クラッド部と被覆を含めて直径500μmの品種が主力だという。重量は従来の光ケーブルのおよそ1/3。例えば直径3mmの品種では8g/mになる。
内閣府の最先端研究開発支援プログラムの助成を受けた「世界最速プラスチック光ファイバー」研究(慶応義塾大学教授の小池康博氏)に、旭硝子は2010年4月から参画する。4年後の研究期間満了時までに同社は伝送距離100mで40Gビット/秒の光ファイバーの量産技術を確立するとした。現在は、同条件化での通信実験に成功している。
小池氏の試算によると、波長0.8μmの場合、従来の石英マルチモード光ファイバーの伝送速度が13Gビット/秒、波長1.3μmの場合なら、4Gビット/秒だという。FONTEXを用いるといずれも40Gビット/秒に達するとした。
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