市場調査会社である米iSuppli社は、最先端の300mmウエハーの出荷量が増大し、2010年は半導体製品向けSi(シリコン)の世界的な需要が飛躍的に回復するという予測を発表した。
同社は、2010年の半導体向けSiの全世界合計出荷面積が、82億インチ2に達すると予想している。2009年の出荷実績である70億インチ2と比べると17.4%増となる。2009年は、経済情勢が悪化したためにシリコンの需要が2008年比で11.1%も落ち込んだが、2010年は劇的な回復が期待できそうだ。
300mmウエハーに向けたSiの需要は、2009年の36億インチ2から2010年は45億インチ2に増大する見込みで、27.2%増という高い成長率を記録しそうだ。一方、2010年の150mmウエハー向けのSiの需要は、2009年比でわずか9.6%増となる見込みで、200mmウエハー向けのSiの需要も2009年比で7%程度の増加に終わりそうだという。
iSuppli社の半導体製造部門担当ディレクター兼チーフ・アナリストを務めるLen Jelinek氏は、「半導体業界が持続的に成長を続けるための鍵は、『技術革新(イノベーション)』の一語に尽きる。現在、半導体製造で技術革新を実現するために必要なのは、300mmウエハーを扱う半導体製造ラインを増やすことだ。300mmウエハーは、小型のウエハーよりも経済的に有利だ。生産効率が上がり、製造コストの削減も期待できる」と述べている。
2008年の300mmウエハーの合計出荷面積は、36億インチ2だったが、同社の予測によれば、2013年には61億インチ2にまで達する見込みだ。年間の平均成長率は12.4%にもなる。一方200mmウエハーの合計出荷面積を見ると、2008年は30億インチ2だったが、2013年は27億インチ2に減少する見込みだ。年間の平均成長率は2%のマイナスになるという。
半導体製造業界には、景気後退の後に発生する特定の傾向が幾つかある。不景気だった2009年が終わった今、半導体製造業界を見渡してみると、その傾向に変化がないということが分かる。
例えば、2001年の景気後退の後は、3つの大きな技術的進歩があった。リソグラフィ技術が0.13μmまで微細化し、新しい金属材料の導入が進み、300mmウエハーへの移行が始まった。その当時、半導体製造業者は150mmウエハーから、よりコスト効率が高い200mmウエハーや300mmウエハーを使った半導体製造へ移行していき、150mmウエハーの需要が明らかに減少していった。
2009年の景気低迷後の半導体業界では、ウエハーの製造量全体に占める300mmウエハーの割合が50%に達したことからも、大型ウエハーへの移行が顕著になっている。iSuppli社は、2001年の景気後退後に150mmウエハーの需要が減少したのと同様に、2009年の景気後退後は、200mmウエハーが流行遅れになっていくと確信している。300mmウエハーへの移行が急速に進んでいけば、200mmウエハー対応の半導体製造ラインへの投資を取り戻せていないメーカーは今後、プレッシャーを受け続けることになるだろう。
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