薄型化したテレビのオーディオ品質をいかに高めるか……。スピーカそのものを改善したり、デジタル処理で音響効果を付与したりするなど、機器メーカー各社は工夫を凝らしている。薄いスピーカを何の工夫も無いままそのまま使うと、低音の再生が難しくなったり、再生する音声の明瞭(めいりょう)感を損ねたりするからだ。
ラトビアに本社を置くReal Sound Lab社の日本法人であるリアルサウンドラボ・ジャパンが提供している、音響パワーイコライザ技術「CONEQ(CONvolution EQualizer)」も、オーディオの音質向上に向けた補正技術である。スピーカの周波数特性の片寄りを減らす(周波数特性を平らにする)ためのフィルタを実現する。スピーカから離れた複数の地点で測定したオーディオ信号を使って機器に組み込むFIR(Finite Impulse Response)フィルタの特性を決めることが特徴だ(図1)。
図1 スピーカの周波数特性を補正するための開発ツール「CONEQ Workshop」
FIR(Finite Impulse Response)フィルタのバンド数や補正する周波数特性を変えられる。スピーカが出力したオーディオ信号を複数の地点で実測することで、補正前の周波数特性を求める。開発ツールでは、これを平らにするためのFIRフィルタの係数を独自のアルゴリズムで算出する。機器設計者が所望の周波数特性に補正することも可能である。
同社は2008年ころから国内の機器メーカーに音響パワー・イコライザ技術の売り込みを進めており、最近になって複数の機器メーカーに採用されたと発表した。日立コンシューマエレクトロニクスがデジタルテレビ「Wooo XP05シリーズ」など2シリーズに採用したほか、パナソニックの欧米市場向け3D対応デジタル・テレビ「VIERA Vシリーズ/Gシリーズ」と、東芝のデジタルテレビ「Z1シリーズ」にも採用された。このほか、ケンウッドが発売したミニコンポ「K-521」にも使われている。
リアルサウンドラボ・ジャパンの取締役兼ライセンス部門ディレクターである佐藤哲朗氏は、「2006年〜2007年はテレビの薄型化が強く進められてきた。その後、コストをかけるのは難しいけれど、音作りに力を入れたいという流れに変わってきているようだ」と現在の状況を説明した。
現在のところ、主にデジタルテレビのハイエンド機種への採用にとどまっているものの、今後はミドルレンジからローエンドの機種への売り込みを進める。また、携帯型オーディオプレーヤに向けたドッキングステーションへの採用も期待しているとする。ドッキングステーションの市場は、オーディオ機器の中で最も伸びている分野だと説明した。
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