スイスu-blox社の日本法人であるユーブロックスジャパンは、位置情報の捕捉特性を高めたGPSチップ「u-blox 6」の日本市場に向けたサンプル出荷を2010年4月に開始した(図1)。RFレシーバとベースバンドプロセッサをワンチップに集積した「UBX-G6010」と、別個のチップとして用意した「UBX-G0010/UBX-G6000」がある。u-blox 6は、同社がこれまで提供してきた「u-blox 5」の後継品種で、受信感度を向上させつつ、消費電力を削減したことが特徴だ。
受信感度は、従来の−144dBmから−147dBmに高めた(コールド・スタート時)。感度を高めたことで、コールドスタート時の初期位置算出時間(TTFF:Time To First Fix)は28秒と、従来に比べて1秒短くなった。消費電力については、同社従来品に比べて1Hz間欠動作モード時に60%削減し、GPS信号捕捉時の消費電流は35%減った。1Hz間欠動作モードとは、1Hz刻みでチップを動作させるモードである。
「Capture & Process技術」に対応
位置情報の取得に関連した新たな仕組みを盛り込んだことも特徴である。
u-blox社は、デジタルカメラといった機器で収集・記録した生のGPSデータをそのままPCに移動させて、PCで位置座標を算出する「Capture & Process技術」を開発し、「YUMA」と呼ぶブランドで提供してきた。外出先で写真を撮り、帰宅後に写真データをPCに移動した後に、撮影場所の位置座標を写真データに付加するといった使い方を想定したもの。u-blox 6では、このCapture & Process技術に対応するために、ベースバンド処理回路を通さずに収集したGPSデータをバッファに格納する仕組みを用意した。
機器では位置座標を算出せず、GPSデータの収集と記録しかしない。このため、GPSデータを収得する機器の作業時間は短くなり、消費電力も減らせる。GPSデータの収集に要する時間は、わずか200msと短い。
さらに同社は、英Air Semiconducoter社から取得した低消費電力化技術をu-blox 6に実装するファームウエアを、2010年末から提供する。
Air Semiconducoter社は、位置精度を動的に調整するなどのGPS関連技術の開発を手掛けてきたベンチャー企業である。一般に、位置精度とGPSチップの消費電流の間にはトレード・オフの関係がある。位置精度を動的に調整することで、GPS衛星を捕捉(トラッキング)して信号を受信する際の平均消費電流を1mAに抑えられると説明していた。同社は、日本国内メーカーへの売り込みを2008年ころから続けていたものの、2010年1月には活動を停止していた。なお、u-blox社は、Air Semiconducoter社の15種の特許技術を取得したことを2010年2月に発表済みである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.