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次世代の無線LANとなることを目指すWiGig、Wi-Fi Allianceに接近無線通信技術 ミリ波(1/3 ページ)

60GHz帯を使った無線ネットワークの規格を策定し、普及を目指す団体であるWirelessGigabit Alliance(WiGig)は、無線LAN技術のプログラム策定や普及を目指す団体であるWi-Fi Allianceと協定を結んだ。

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 60GHz帯を使った無線ネットワークの規格を策定し、普及を目指す団体であるWirelessGigabit Alliance(WiGig)は、無線LAN技術のプログラム策定や普及を目指す団体であるWi-Fi Allianceと協定を結んだ。次世代の無線LAN規格として60GHz帯を使ったものを策定するために協力するという協定だ。またWiGigは、競合する規格「WirelessHD」のチップを作っている米SiBEAM社を説得し、WiGigとWi-Fi Allianceが策定する無線LAN仕様に準拠するチップを作ることを合意させた。

 WiGigにとって、これら2つの動きは勝利と言っていいだろう。60GHz帯を使った無線通信技術の将来像を決めるための大きな力となるはずだ。ただし、この次世代無線LAN技術を支配しようとする戦いはまだ終わったわけではない。

 60GHz帯を使った無線LANの規格の策定を進めているIEEE 802.11adグループは、今もなお、新しい提案を受け入れている。また、WiGigと競合するWirelessHDコンソーシアムは10 〜28Gビット/秒の通信速度が期待できる次世代技術を発表した。これは、WiGigが策定した規格の理論上の最大データ転送速度である7Gビット/秒を超える。

 驚くべきことに、WirelessHDのパイオニアであり、WirelessHDに準拠したチップを設計販売している企業であるSiBEAM社は、2010年5月10日、WiGigとWirelessHDの両方の最新規格に準拠したチップを発表した。SiBEAM 社は、WiGigに参画してはいないが、その仕様を採用することを表明している。

 60GHz帯を使った無線通信の主用途である映像を無線で伝送する機器の市場は、2010年6月の時点ではまだ生まれたばかりだとアナリストたちは指摘している。映像を無線伝送する機器の市場を狙う企業はほかにも存在する。5GHz帯を利用する独自手法を持つ新興企業のイスラエルAmimon社や、既存の無線LANに新しい設計のアンテナを組み合わせる手法を採る米Ruckus Wireless社などだ。

 米国の市場調査会社であるIn-Stat社のシニアアナリストであるBrian O'Rourke氏は、「この市場はいろいろなことが起こっているところだ。落ち着くまでにはもうしばらく時間がかかるだろう」と語る。「無線で高品位映像を伝送する技術は、現在のところはニッチな技術だ。有線で映像を伝送する方法に何の問題もなく、費用もかからないからだ」とO'Rourke氏は続けた。そして、「今のところ、無線映像送信技術に対して消費者が大騒ぎすることはないが、長期的に見るとそうなる可能性はある」と付け加えた。

図
図1 SiBEAM社で最高経営責任者を務めるJohn LeMoncheck氏 当初はWirelessHD対応チップだけを作っていたが、WiGigグループの働きかけを受けて、WiGigにも対応した。

両陣営と協力するSiBEAM社

 SiBEAM社はWiGigグループとの合意を受けて、ミリ波ネットワークの最前線の会社に変貌した。これは、自動車の衝突回避レーダーで使う77GHz帯の可能性も探っているということを示唆している。短期的には、SiBEAM社は、WirelessHDを使った機器間を1対1で接続する方式だけでなく、WiGigを使って家庭内ネットワークを構築する方式も探っている。

 「WirelessHDは、映像のストリーミング伝送に理想的だと当社は考えている。WirelessHDは映像ストリーミング伝送のために作られたからだ。ただし当社は、WiGigの技術を使って家庭内ネットワークを作るということにもチャンスを見いだしている」とSiBEAM社の最高経営責任者であるJohn LeMoncheck氏(図1)は語っている。

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