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いつでもどこでも監視/制御が可能に、低電力Wi-Fiチップで見えた次世代家電の姿(後編)無線通信技術 Wi-Fi

GainSpan社では、無線LAN機能を機器に組み込むときの2つの課題の解決を図った。すなわち、前述のように無線LANチップの消費電力を大幅に削減した。また、機器に容易に実装できるように、数多くの機能を実現するファームウエアを用意した。

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低消費電力の無線LANチップの利用シーンを紹介した「前編」

ZigBeeに匹敵するほど消費電力は低い

 GainSpan社では、無線LAN機能を機器に組み込むときの2つの課題の解決を図った。すなわち、前述のように無線LANチップの消費電力を大幅に削減した。また、機器に容易に実装できるように、数多くの機能を実現するファームウエアを用意した。

 まず消費電力について、動作モードによって消費電流が大きく異なる。例えば、待機時が5μA、ディープスリープ時が110μA、データ受信時が144mA、データ送信時が192mAである。「厳密に測定するとZigBeeの方が低いかもしれない。しかし、実用上はほぼ同じといえるレベルだ」(GainSpan社のWorldwide Sales担当のVice PresidentであるEric Taborek氏(図1))と説明した。

図1
図1 Eric Taborek氏 米GainSpan社のWorldwide Sales担当のVice Presidentを務めている。

 5つの異なる動作モードを用意しており、稼働状況に合わせて動作モードを素早く切り替えることで、消費電力を抑制している(図2)。利用状況に依存するものの、単3型電池を使ってセンサーを5年〜10年間稼働させることも可能だという。「待機モードからほかの動作モードに6msで切り替わる。これに対して、これまでの一般的な無線LANチップでは動作モードを切り替えるのに100msを越える時間が掛かっていた」(同氏)。

 同社の無線LANチップにはARM7コアのプロセッサが2つ載っている。1つはアプリケーションプロセッサ、もう1つはMAC層処理やベースバンド処理などを担当する無線LAN通信処理用プロセッサである。無線LAN通信処理用プロセッサやRFトランシーバ回路で構成した無線通信ブロックの動作モードを、細かくかつ素早く切り替えられるように、独自の回路構成を採用していると説明した。

図2
図2 GainSpan社の低消費電力の無線LANチップの動作モード 5つの異なる動作モードを用意しており、稼働状況に合わせて動作モードを素早く切り替える。動作モードごとに電力の消費状態が異なる。結果、平均の消費電力を大幅に削減できた。出典:米GainSpan社

数多くの機能を実現するファームウエアを用意

 次に、機器への実装を容易にする仕組みについては、TCP/IPスタックやネットワークスタックをはじめ、ネットワークサービスやセキュリティ確保といった、数多くの機能を実現するファームウエアを無線LANチップ上で処理するようにした(図3)。「ホスト側のプロセッサの処理内容にはほとんど変えなくてよい。既存の回路構成はそのままに、当社の無線LANチップを追加するだけで、機器に容易に無線機能を追加できる」(Eric Taborek氏)と強調した。ファームウエアはソースコードも公開する。評価ボードや開発環境も提供する。

図3
図3 既存の設計内容はそのままに、無線LAN機能を追加可能 左はこれまでの無線LANチップを使ったときの回路構成の例。ホスト側のプロセッサで、無線LAN機能に関連した処理をしている。これに対してGainSpan社では、無線LAN機能に関連した処理を無線LANチップが担当することを提案している。ホスト側プロセッサの処理内容はほとんど変える必要はないと説明した。出典:米GainSpan社

 同社が対象とする用途は幅広く、HANを構成する「スマート家電」のほか、メディカル・ヘルスケアや産業・プラント監視、物流監視、ビルオートメーションといった分野がある。

 これらの用途は、低消費電力の無線通信規格であるZigBeeが対象とする分野そのものである。低消費電力の無線LAN技術のZigBee規格に対する優位性について同氏は、「なぜ、ZigBeeを使う必要があるのだろうか。ZigBeeを使う理由を逆に質問したい」と述べた。すなわち、無線LANチップの消費電力がZigBeeに匹敵するほど下がるなら、ZigBee規格を採用するメリットは少ないという主張である。無線LANチップが使えば、インターネットへの接続が容易であることや、既存の無線LANのアクセスポイントが活用できるといった多くの利点があると強調した。

 ZigBee規格の上でIP通信を実現する「ZigBee版6LowPAN」の策定も進められている。これに対しては、「技術的な難易度が高いのではないか」(同氏)と実用化について疑問を呈した。

モジュールは2010年第3四半期に量産

 GainSpan社は、2008年に低消費の無線LANチップ「GS1010」の提供を始めた。その後、2010年には同社にとって第2世代となる無線LANチップ「GS1011」の量産を開始し、同年5月にはGS1011や周辺部品を実装した無線通信モジュールのサンプル出荷を始めた(図4)。

図4
図4 評価ボードの外観 同社にとって第2世代となる無線LANチップ「GS1011」の評価ボードや開発環境の提供を開始している。

 GS1011では、IEEE 802.11bを採用している。「通信範囲や消費電力、受信感度といった観点からみて、組み込み向けには最も適した方式だ」(Eric Taborek氏)。通信距離は室内で70m程度、屋外の見通しのよい環境で300m程度。通信速度は最大11Mビット/秒である。

 無線LANチップに組み込んだファームウエアも含めたモジュールの参考価格は、1万個購入時に15米ドル〜20米ドルである。「量産が始まれば、価格はさらに下がっていくだろう」(同氏)。アルプス電気も、GainSpan社の無線LANチップを採用した無線通信モジュールを製品化した(発表資料)。

 今後、製造技術を微細化した品種の開発を進める。GS1010は、0.18μmのCMOS技術で製造している。製造技術を微細化することで、さらに消費電力を抑制できるほか、チップ寸法や量産時の製造コストの削減が見込める。このほか、アプリケーションに特化したファームウェアの拡充を続ける。例えば、2011年第1四半期には、コンティニュアヘルスアライアンス(Continua Health Alliance)規格に対応したファームウエアを提供する予定である。

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