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スマートグリッドの実証実験、横浜市など4地域で開始へエネルギー技術 スマートグリッド

横浜市、愛知県豊田市、京都府の3自治体、北九州市の4地域で実証実験を進める。北九州市の実験「北九州スマートコミュニティ創造事業」では地域の電力需要に応じて電力料金を変化させるダイナミックプライシングを試験導入し、需要家の行動パターンを調査する。家電機器側の制御とも組み合わせる。

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 経済産業省は2010年8月11日、次世代電力網である「スマートグリッド」(図1)について調査する「次世代エネルギー・社会システム実証マスタープラン」を発表した。政府の「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」に基づいた実証実験である。

 同実証実験は、2010年度から2014年度末までの5カ年計画からなる。応募があった19地域から横浜市、愛知県豊田市、京都府の3自治体、北九州市の4地域を選定した。4地域での実証実験ではいずれも一般住宅やオフィスビルを対象として、太陽光発電や、二次電池、電気自動車と充電施設をシステムとして組み合わせた計画になっている。

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図1 経済産業省が定義したスマートグリッド 経済産業省はスマートグリッドを「最新のIT技術を活用して電力供給、需要に係る課題に対応する次世代電力系統」と定義している。出典:経済産業省

 電力の有効利用や電力を消費する機器のフィードバック制御を試みるために、4地域とも宅内エネルギー管理システム(HEMS:Home Energy Management System)やBEMS(Building and Energy Management System)を導入する。豊田市を除く3地域ではCEMS(Cluster Energy Management System)によってさらに大きな地区単位でも電力を制御する。

 横浜市と豊田市、北九州市は水素を利用するが、利用方法が異なる。横浜市は直接には水素利用をうたっていないものの、小規模な燃料電池の導入を計画する。豊田市は燃料電池車の導入と燃料電池車向けの水素ステーションの設置をうたう。北九州市は工場で発生する副生水素を固体高分子型燃料電池で利用する。

 北九州市は4地域の中で最もエネルギー源の幅が広い。太陽光発電と燃料電池以外に2種類のエネルギー源を用いる。風力発電を実証実験に組み込んだのは北九州市だけである。2011年度までに36kWを導入する。この他、工場の廃熱を利用した400kWのバイナリー発電機も設置する。

規模の横浜市、電気自動車の豊田市

 横浜市の実験「横浜スマートシティプロジェクト」では、みなとみらい21や港北ニュータウン、横浜グリーンバレーに位置する4000世帯を対象に、既設住宅と新築住宅を組み合わせてHEMSを導入する(図2)。対象世帯は公募する予定。BEMSはみなとみらい21内を中心に導入する。二次電池と組み合わせたBEMSを開発することが特長だ。

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図2 横浜スマートシティプロジェクトの将来像 事業用ビル、工場、集合住宅、戸建て住宅など都市を構成する要素が異なる3地区を含む。出典:横浜市

 2014年までに対象地域で導入する太陽光発電は住宅用が約4200戸、中大型の太陽光発電システムが約1万4400kWである。HEMSの対象となるのは約4000戸だ。家庭用二次電池を約500台、電力系統用二次電池を14台設置する。この他、電気自動車向け充電施設を約1000カ所設置する。なお、横浜市の実証実験は対象戸数などの規模、5年間の事業費総額(約740億円)とも4地域の中で最大である。

 愛知県豊田市の実験「『家庭・コミュニティ型』低炭素都市構築実証プロジェクト」では、一般住宅について実証実験を行う。消費エネルギーの6割以上を自給し、生活や移動に伴うCO2(二酸化炭素)の削減を試みる。太陽光発電と燃料電池で生成した電力を、住宅に設置した蓄電池や4000台の電気自動車に蓄えることで実現する。電気自動車の導入台数では横浜市の約2000台を大きく上回る。この他、EDMS(Energy Data Management System)を用いて一般住宅のエネルギー需要をとりまとめ、地域全体でのエネルギー利用最適化を進めるとした。

 2014年までに対象地域で導入する太陽光発電は住宅用が約300戸、中大型の太陽光発電システムは導入しない。HEMSの対象となるのは約300戸だ。家庭用二次電池を約300台導入するが、CEMSの実証実験を計画していないため、電力系統用二次電池は設置しない。この他、電気自動車向け充電施設を17カ所に設置する。

新システム開発をうたう京都府、ダイナミックプライシングを試みる北九州市

 京都府の実験「けいはんなエコシティ『次世代エネルギー・社会システム』実証プロジェクト」では、京都府、大阪府、奈良県の3府県にまたがる関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)のうち京都府に属する3自治体を中心に、地域全体のエネルギー利用効率の向上と再生可能エネルギーの最大化を実証する。実証実験では、一般住宅に適用する「オンデマンド型電力マネジメントシステム」や再生可能エネルギーを優先して使うための「電力カラーリング」技術を開発し、実証実験自体への適用をもくろむ。

 2014年までに対象地域で導入する太陽光発電は住宅用が900戸だ。中大型の太陽光発電システムは導入検討段階である。HEMSの対象となるのは400戸だ。家庭用二次電池を150台、電力系統用二次電池を3台設置する他、電気自動車向け充電施設を約160カ所設置する。

 北九州市の実験「北九州スマートコミュニティ創造事業」では工場群から隣接する住宅などへ廃熱や水素を供給し、建物間での電力の融通を進めることで地域エネルギーを有効利用することが特長だ(図3)。さらに地域の電力需要に応じて電力料金を変化させるダイナミックプライシングを試験導入し、需要家の行動パターンを調査する。家電機器側の制御とも組み合わせる。

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図3 北九州スマートコミュニティ創造事業の事業内容 CO2の50%削減をうたう。図は事業内容の一部であり、この他、直流住宅を含む「エコ長屋」やカーボンオフセット・エコポイントシステム、小型移動体等による近隣移動モビリティシステムなどを実証実験する。出典:北九州市

 2014年までに対象地域で導入する太陽光発電は住宅用が600kW、中大型の太陽光発電システムが約5MWである。HEMSの対象戸数は明示していない。家庭用二次電池を715kW設置する他、燃料電池を410kW新設する。電気自動車向け充電施設を50カ所に設置する。

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