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電気自動車のECU開発に適した試験システム、日本NIなどが販売を開始組み込み技術 モデルベース開発

日本ナショナルインスツルメンツとネオリウム・テクノロジー、マックシステムズの3社は、ハイブリッド自動車や電気自動車のシステム設計に使う「フルビークルモデルHILS」を開発した。

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 日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)とネオリウム・テクノロジー、マックシステムズの3社は、ハイブリッド自動車や電気自動車のシステム設計に使う「フルビークルモデルHILS*1)」を開発し(図1)、2010年8月に日本市場での本格的な販売を開始した。実際の車両の動作を模擬するフルビークルモデルHILSを使うことで、実車両が無い段階からモーターやインバータ、車載ECU(Electronic Control Unit)といった自動車を構成する各要素の開発を進められる。

 「ハイブリッド自動車や電気自動車に対応したフルビークルモデルの製品化は、業界初。モーターも含め、高い精度の各種モデルを用意したのは我々だけ」(日本NI)。

図1
図1 ハイブリッド自動車や電気自動車のシステム設計に使う「フルビークルモデルHILS」 図は、ハイブリッド自動車走行のシミュレーションを実施している様子。下部のメータは、走行速度やエンジンの回転速度、モーターの回転速度を表示している。HILS環境対応フルビークルモデルの試験システムは、日本ナショナルインスツルメンツなど3社が開発した。販売価格は1800万円から。
*1) HILS(Hardware in the Loop Simulation)とは、実際のエンジンやモーターを使わずに、車載ECUなどを開発するモデルベース開発の手法。車載ECUの制御対象をソフトウエアモデル化し、シミュレーションすることで、制御対象であるハードウエアの完成を待たずに、ECUの開発を進められる。

実車両が無くとも開発を進められる

 フルビークルモデルとは、自動車の車両モデルや電装系モデルをはじめ、路面や運転(ドライバ)、電池、モーターといった各種モデルを統合したもの。車両の走行シミュレーションに必要なモデルが全て用意されているため、実際の車両がなくとも前述の通り、車両の走行状況を模擬した試験を実施できる。また、実際の車両では試験することが難しいような極端な状態を想定した試験も可能だ。

 電気自動車やハイブリッド自動車の開発には、通常のエンジン駆動の自動車の開発とは異なる状況を考慮する必要がある。例えば、電気自動車の開発には、回生ブレーキや電池の稼働状況の管理が重要だ。このような管理は、走行距離を伸ばすことにつながる。またハイブリッド自動車では、走行状況に応じてモーターとエンジンの動作を切り替える最適なスイッチング制御が燃費向上の鍵となる(図2)。このため、エンジンやモーター、インバータをはじめ、これらを制御する各種ECUの設計・開発段階でのフルビークルモデルの活用がますます重要になるというのが、日本NIなど3社の考えである。

図2
図2 ハイブリッド自動車のブロック図  エンジンやモーター、電池、車両といった各要素の動作状況を確認できる。図左のブロックはエンジンの稼働状況、中央はモーターと電池の稼働状況である。走行速度やエンジンのトルク、燃費、電池の出力電圧や電流といった数値が表示されている。

 販売対象企業は、自動車向けの1次階層の部品メーカー(ティア1)や2次階層の部品メーカー(ティア2)、電機メーカーなど。「顧客の要望に応えた製品である。車両モデルをはじめ、自動車の開発に必要なノウハウが盛り込まれており、開発用車両や車両のテストコースが無くとも設計や動作試験を進められる」(日本NI)。

モーターモデルの応答時間は5μs以下

 3社の担当の内訳は、日本NIが制御用ハードウエアを提供し、ネオリウムテクノロジーが路面モデルや車両モデル、ドライバモデル、電装系モデル、電池モデルの開発を担当した。ネオリウムテクノロジーの各種モデルそのものは、「veDYNA Hybrid Toolbox」として2010年1月に提供を開始している。マックシステムズが、モーターモデルを用意するとともに、全体を統合する作業を担当した。

図3
図3 フルビークルモデルで車両走行をシミュレーションした様子  NI社のモジュール式工業用パソコン「PXI」を使った(写真左奥)。「LabVIEW」や「LabVIEW Real-Timeモジュール」といったソフトウエアが実装してある。ネオリウムテクノロジーのモデル群「veDYNA Hybrid Toolbox」は、モジュール式工業用パソコンのリアルタイムOS上で動作させている。

 制御用ハードウエアには、モジュール式工業用パソコン「PXI」を使う(図3)。モーターモデルのシミュレーションにFPGAを使うことで、インターフェイス処理も含め、5μs以下の応答時間を実現した。

 価格は、「EUCインターフェイスのカスタマイズ状況によって変わるものの、目安は1800万円から」(日本NI)。フルビークルモデルとPXI、各種ソフトウエア、日本国内での技術サポートを含めた価格である。競合他社のエンジンシミュレータが2000万円であることを考慮すると、非常に安価だと説明した。

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