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シリコン・ラボラトリーズがD級アンプIC市場に参入、AM/FMラジオ機器などに狙い絞るオーディオ処理技術 D級アンプIC

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図1
図1 シリコン・ラボラトリーズのD級アンプIC「Si270x」
プリント基板の左上にあるICである。イコライザやコンプレッサ、サラウンドといったオーディオ処理のためのDSPも搭載した。パッケージは24端子のQFN。1万個購入時の参考単価は、1.17米ドルからである。評価ボードも用意した。型番は「Si270x-A-EVB」で、価格は325米ドルである。
図2
図2 シリコン・ラボラトリーズのRick Beale氏
同社のBroadcast Product部門のAudio Processing Amplifier担当Directorである。

 シリコン・ラボラトリーズは、D級アンプIC市場に参入し、出力電力5W(3Ω負荷時)でステレオ対応の製品ファミリ「Si270x」を発売した(図1)。

 最大の特徴は、D級アンプICの放射電磁雑音(EMI)を抑える豊富な機能を搭載したこだ。スペクトラム拡散機能やノッチフィルタに加え、雑音による音質劣化を防ぐフィードバック回路を搭載している。

 これらの機能それぞれは一般的なものだが、組み合わせて搭載したD級アンプICは業界初だという。スペクトラム拡散については独自技術を採用しており、既存技術に比べてEMIをより強力に抑制できると説明した。「ホワイトノイズのレベルにまで雑音を低減可能だ」(同社のBroadcast Product部門のAudio Processing Amplifier担当DirectorであるRick Beale氏、図2)。

 狙う市場は、スマートフォンや携帯型音楽プレーヤと組み合わせて使うドッキングステーション型スピーカや、AM/FMラジオである(図3)。これらの機器のミドルレンジからローエンドのいわゆるボリュームゾーンの機種が主な対象だ。

 これらの市場のハイエンド機種では、オーディオ処理用DSPとD級アンプICを組み合わせて使っている。ところが、ボリュームゾーンの機種では、AB級アンプICが依然として使われているという。その理由について同社は、D級アンプICにはEMIの問題があるからだと説明した(図4)。D級アンプICは、AB級アンプICに比べて、変換効率が高く、消費電力が小さいという特徴がある。ただ、スイッチング動作を伴った増幅方式に起因した雑音が発生してしまう。この雑音が、外部に放射され、ほかの回路に悪影響を与えてしまう。

 もちろん、EMI抑制用フィルタを加えたり、シールドを付けたりすることで、EMIの悪影響を抑えられる。しかし、部品コストが増えてしまう。EMIレベルの小さいSi270xを使えば、コスト削減の要求が厳しいボリュームゾーンの機種にも、D級アンプICが受け入れられるというのが同社の主張である。

図3
図3 AB級アンプICを使っている機器に売り込む
狙う市場は、スマートフォンや携帯型音楽プレーヤと組み合わせて使うドッキングステーションや、AM/FMラジオなどだ。

 競合は多いが、優位に立てる

 シリコン・ラボラトリーズは、3年ほど前からD級アンプICの開発に着手した。「当社のAM/FMラジオ・チューナーICを採用した顧客から、『D級アンプICが使いたい。しかし、コストやEMIの観点で、AB級アンプを採用している』という声が寄せられた」(同氏)ことが開発を始めたきっかけである。

 D級アンプICの競合は多く、数多くの半導体ベンダーが継続的に新製品を投入している。しかし、ドッキングステーションやAM/FMラジオのボリュームゾーンの機種に狙いを絞れば、競合他社に比べて優位に立てるというのが同社の考えのようだ。

 同社がそのように考える理由は、2つある。1つは、前述の通り、ドッキングステーションやAM/FMラジオのボリュームゾーンの機種にD級アンプICを採用するにはEMIの問題があるが、「この問題を解決する製品はまだ市場に出てきていない」(同氏)こと。もう1つは、既存製品との相乗効果が見込めることである。同社は、AM/FMラジオのチューナーICの市場において、高いシェアを有している。このチューナーICと新製品のD級アンプICを組み合わせて使うことを提案する。

 今後、出力電力が10Wや20Wの品種も製品化する予定である。これらの品種では、デジタルテレビなども対象にする。

図4
図4 放射電磁雑音(EMI)の問題の解決を狙う
EMIを抑制するための機能をいくつか搭載した。D級アンプICがほかの回路に悪影響を及ぼさないことに加えて、このIC自体が、周囲にある無線回路や電源回路から影響を受けにくいことも訴求した。

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