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ルネサスがマイコンの統合で一歩前進、SoCやパワー半導体の成長戦略も明らかにビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)

マイコンの製造コストを抑え、統合のメリットを出すための方策を明らかにした。旧2社の微細化世代ごとの製造プロセス技術を一本化するほか、マイコンの周辺回路を共通化し、ソフトウェア開発環境を統合する。

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統合をうまく生かせるSoC

 同社のSoC事業は、通信インフラや産業インフラ、マルチメディアインフラに向けたSoC第一事業本部と、モバイル機器や車載情報システム、ホームマルチメディア分野に特化したSoC第二事業本部に分かれている。2010年度のSoC事業全体の売上高は3500億円を予定しており、2つの事業部の売上高はほぼ等しい。ただし、2012年度に向けた戦略はそれぞれ異なる。

 SoC第一事業本部は2012年度に売上高2000億円を狙う。そのために、2010年度で売上高の61%を占める5つの成長分野を2012年には76%まで高める。5つの分野とはネットワークメモリとストレージ向けSoC、スマートグリッドを含む産業向けSoC、ゲーム専用機向けSoC、カメラエンジンである。

 「SoC第一事業本部が旧NECエレクトロニクスと旧ルネサス テクノロジから受け継いだ製品群はほとんど重複がなかった」(同社 執行役員兼SoC第一事業本部長を務める山田和美氏)。このため、統合に時間をかけず、成長分野をすぐに強化できるとした。例えばスイッチやルータなどに向けたネットワークメモリ分野では、旧NECエレクトロニクスからLLDRAM(Low Latency DRAM)を受け継ぎ、旧ルネサス テクノロジからはTCAM(Ternary Content Addressable Memory)を取り込む。QDR SRAM(Quad Data Rate SRAM)は旧2社がそれぞれ取り組んできたが、やはり競合しないという。このため、製品ラインの統合による効果がすぐに現れ、2010年度におけるネットワークメモリの世界シェア40%を2012年度には60%まで高められると説明した。

 ストレージ向けSoCでは、USBのホストコントローラーに向けたSoCで攻める。2010年度の世界シェア15%を2012年度に30%まで高めるとした。統合後に開始したPC用SSDに向けたSoCもシェア拡大に役立つとした。

 産業向けSoCでは、FA(Factory Automation)用にリアルタイム性を高めたイーサネットの物理層用SoCを強化する。同製品の世界シェアを2010年度の25%から、2012年度には30%まで高める。例えば2010年11月に、データ処理遅延時間を減らし、通信ケーブルの診断機能を備えたSoCのサンプル出荷を開始する。

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図4 スマートグリッドはPLCで攻める PLCを用いたスマートメーターの伸びが著しい(図左)ため、2012年度まではPLCを利用したSoCの製品化に集中する。

 スマートグリッド市場の伸びにも追従する(図4)。宅内の消費電力などの情報を系統側に送るスマートメーターに同社のSoCを売り込む。「中国と欧州では無線ではなく、電力線通信(PLC:Power Line Communication)を使ったスマートメーターが先行すると考えている」(山田氏)。PLCを使用したスマートメーターを製品化する際の問題点は、国や地域ごとにPLC自体の通信方式が異なることである。ルネサス エレクトロニクスは、DSPをSoCに組み込むことで、各種の通信方式に対応する。

ブランドを統合し、SoCの構造を共通化

 同社のSoC第二事業本部が担うモバイル機器やホームマルチメディアに向けたSoCでは、拡大が望める4つの製品分野があるとした。携帯電話機用SoCや携帯電話機用ハイパワーアンプ、車載情報システム向けSoC、デジタルテレビ用セットトップボックス向けSoCである。2010年度では携帯電話機用の2つの製品分野で全体の売上高の50%を占め、残る2分野がそれぞれ25%であると説明した。

 4つの製品分野に属する旧2社の製品を統合するために、携帯機器向けの「R-Mobile」、車載情報システム向けの「R-Car」、ホームマルチメディア向けの「R-Home」の3ブランドを立ち上げ、さらに3ブランドのSoCの構造を共通化した。

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図5 SoCの構造を共通化 「新統合SoCプラットフォーム」を使用することで、オープンOSを使いながら、映像処理や信号処理を高速化できる。

 共通化した構造をルネサス エレクトロニクスは「新統合SoCプラットフォーム」と呼ぶ(図5)。システム・アプリケーション部とリアルタイム処理部を分離し、共通のバスで接続した形態を採る。システム・アプリケーション部にはARMコアを内蔵する。AndroidやLinuxなどのオープンOSの他、Windows系OSなどを利用しやすくするためだ。

 同社が競合他社に対して競争力を持たせるのが映像処理や信号処理を実行するリアルタイム処理部である。集積するマイコンコアや周辺回路ごとに、処理性能の高さや消費電力の低さを訴求する。

 同社の幅広いソフトウェアIP群も生かせると説明した。「各種マイコンコアや周辺回路ごとにIPの互換性を保つことは難しい。処理性能を高めるためにはハードウェアを直接操作する必要があるからだ。そこで、顧客向けに抽象化ソフトウェアを提供するなどソフトウェアを共通化できる仕組みを作っていく」(同社 SoC第二事業本部 事業本部長の茶木英明氏)。

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図6 ワイヤレスモデムを内蔵したSoCの開発計画 2012年までにLTEとHSPA+、GSMに対応した品種や、HSPA+とGSMだけに対応した品種を製品化する。

 R-Mobileは、旧NECエレクトロニクスの「EMMA-Mobile」と旧ルネサス テクノロジの「SH Mobile」を統合したブランドである。汎用品の「R-Mobile A」とモデムやカメラISPを内蔵した「R-Mobile U」からなる。

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図7 車載情報機器向けは3種類の製品群に分ける マイコンコアの性能や再生できる動画の品質などが異なる。

 R-Mobile Aは携帯電話機よりも、携帯型音楽プレーヤーや簡易型ナビゲーション機器(PND:Portable Navigation Deivce)に向けた製品である。R-Mobile Uは、ノキアから買収したワイヤレスモデム事業を生かした携帯電話機専用の製品である(図6)。

 R-Carも旧2社の製品の後継ブランドであり、カーナビに用いる。機能の種類に応じて3種類の製品群を展開する(図7)。R-Homeは旧NECエレクトロニクスのEMMAをほぼ引き継いだ形である。セットトップボックス向けとデジタルテレビ向けの2製品群に分けた。

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