3年後のプロセッサをアームが公開、8コア品でサーバ用途も狙う:プロセッサ/マイコン
高性能な電話機に用いるプロセッサコアとして、現在はCoretex-A8が主に利用されている。今後は、Cortex-A9のデュアルコア版、続いてCortex-A9のクアッドコア版を内蔵した機種が登場し、2013年以降にデュアルコア版のCoretex-A15が普及する見込みだ。
ARMは2010年9月、同社の次世代汎用プロセッサコア「Cortex-A」シリーズの新版「Cortex-A15(開発コードEagle)」の狙いについて発表した。
同社は従来の「Cotex-A」シリーズを高性能な携帯電話機に内蔵するアプリケーションプロセッサ向けだと説明していた。Cortex-A15では、携帯電話機はもちろん、データセンターに設置するホームサーバにまで適用範囲を広げる。
高性能な電話機に用いるプロセッサコアは、今後3つの段階を踏むという。現在はCoretex-A8を用いた携帯電話機がほとんどである。まず2010年内にCortex-Aシリーズの最上位品であるCortex-A9のデュアルコア版を用いた携帯電話機が登場すると予測した。続いて2012年にはCortex-A9のクアッドコア版を内蔵した機種が登場し、2013年以降にデュアルコア版のCoretex-A15が普及すると説明した(図1)。
既にTexas InstrumentsやST-Ericsson、Samsung ElectronicsがCortex-A15のライセンスを受けている。
処理性能をCortex-A9の3倍に向上
Coretex-A15は最大2.5GHzで動作する。デコード可能な命令数は3個/サイクルであり、現行のCortex-A9の1.5倍である。命令発行数はCortex-A9の倍に当たる8個/サイクル。Coretex-A9同様、アウトオブオーダー実行(非順次処理)が可能である。パイプライン段数は非公開。
最大8コアまでのマルチコア構成が可能であることを確認しており、設計上のコア数の上限はないという(図2)。
オンチップバスには新たに開発したAMBA 4.0(Advanced Microcontroller Bus Architecture)を用いる。バス幅は128ビット。
以上のような改善によって、コア当たりの処理性能をCortex-A9の約3倍に高められ、デュアルコア品を用いれば、現在の携帯電話機向けプロセッサの5倍の性能を引き出せると説明した。
携帯電話機に用いるため、処理性能を高めつつ消費電力は抑えなければならない。そこで、プロセッサ全体を10μs未満でスタンバイし、必要に応じて復帰できるようにした他、パイプラインを短時間でシャットダウンする機能を取り込んだ。
アドレス空間を拡張し、サーバでの仮想化に対応
Cortex-A15にはサーバに求められる機能を新たに2つ取り入れた。まず複数のOSを同時に実行できる完全仮想化機能である(図3)。データセンターに用いる大規模なサーバや通信機器などに用いる。4コア品や8コア品を用いて、コアごとにOSを割り当てるといった使い方も想定する。携帯電話機でも仮想化機能が役立つと説明した。例えばエンドユーザーが勤務先で用いるOSを個人用と分けて情報の漏出を避けるといった使い方である。
もう1つの改良はアドレス空間の拡張である。Cortex-A9などでは物理アドレスを32ビットで管理しているため、アドレス空間は最大4Gバイトである。大規模なデータベースなどでは4Gバイトを超えるアドレス空間が必要になることがある。そこで、今回物理アドレスを40ビット、アドレス空間を最大1Tバイトに拡張した。
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