ロームは、スイッチング周波数を20MHzまで高めて所要インダクタンスを低く抑えることで、部品としてのコイルを使わずにDC-DCコンバータ回路を構成し、エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2010」(2010年10月5日〜9日に幕張メッセで開催)に参考出品した(図1)。
プリント基板上に部品として実装されているのは、DC-DCコントローラとスイッチング素子(パワーMOSFET)を1チップに集積したDC-DCコンバータICのほか、入力と出力のコンデンサだけである。コイルについては、チップ型のインダクタなどを使う代わりに、プリント基板の裏面にCu(銅)配線でスパイラル状のコイルパターンを形成した。「チップインダクタを利用する場合に比べて、比較的小さなインダクタンス値しか得られないが、スイッチング周波数が20MHzと高いため、DC-DCコンバータとして機能する」(同社の説明員)という。
今回のコイルパターンの基板専有面積は、「10mm角以下だ。ただし今回は試作であり、コイルパターンの形状にはまだ工夫の余地がある」(同説明員)。チップインダクタが不要になるため、DC-DCコンバータ回路のコストを低減できるほか、プリント基板の面積の利用効率を高められ、基板を小さくできる可能性もある。
図1 スイッチング周波数を高めて部品としてのコイルを不要に
プリント基板上に部品として実装されているのは、20MHzスイッチングのDC-DCコンバータICのほか、入力と出力のコンデンサだけである。コイルについては、基板の裏面に配線パターンで形成した。
このほかロームは、3.2mm×2.5mm×1.6mmと小さいDC-DCコンバータモジュールも出品した。DC-DCコンバータICを多層基板の内部に埋め込み、その基板の表面に入出力コンデンサとチップインダクタを実装することで小型化した。DC-DCコンバータICのスイッチング周波数は6MHz。チップインダクタは2012サイズである。出力電圧は1.82Vで、出力電流は600mA。現在は開発の段階にあり、2011年の第2四半期に量産を始める予定だという。さらに、「同一サイズで出力電流を1Aまで高めた品種も開発中」(同説明員)である。
なお、このモジュールに使ったDC-DCコンバータICは単体でも販売する。2011年2月にまず6MHスイッチング品を投入し、3MHz品と10MHz品も順次発売する予定だという。「10MHz品を使えば、6MHz品で600mA出力時に2012サイズだったチップインダクタを1608まで小さくできる。6MHz品に比べて、インダクタの実装面積と厚みをともに低減することが可能だ」(同説明員)。
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