ソーラーフロンティアがIBMと新型太陽電池を開発へ、材料コストの低減を狙う:エネルギー技術 太陽電池
ソーラーフロンティアは「CIS(銅インジウムセレン)」薄膜太陽電池を量産している。CIS薄膜太陽電池はCu(銅)、In(インジウム)、Se、Ga(ガリウム)、S(イオウ)を含む。このうち、InとGaは希少金属に分類されており、将来太陽電池の生産規模が飛躍的に増大したときに、入手しにくくなる可能性がある。そこで、InやGaを含まず、代わりに安価なZnやSnを使うCZTS薄膜太陽電池の開発に着手した。
昭和シェル石油の100%子会社であるソーラーフロンティアは2010年10月19日、米IBMと新型の薄膜太陽電池セルを共同開発することで合意したと発表した。Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、S(硫黄)、Se(セレン)を使った「CZTS薄膜太陽電池」が開発対象である。
ソーラーフロンティアはCZTS薄膜太陽電池と組成が似た「CIS(銅インジウムセレン)」薄膜太陽電池をすでに量産している。CIS薄膜太陽電池はCu、In(インジウム)、Se、Ga(ガリウム)、Sを含む。このうち、InとGaは希少金属として分類されている。将来太陽電池の生産規模が飛躍的に増大したときに、入手しにくくなる可能性がある。そこで、InやGaを含まず、代わりに安価なZnやSnを使うCZTS薄膜太陽電池の開発に着手した。
図1 米IBMが試作したCZTS太陽電池セル セルの断面を示した。試作したセルの変換効率は9.6%である。常圧下で、微小な材料粒子を用いて液相成長させて製造した。材料コストを抑えることができ、製造に要する時間も短いという。今後は、印刷エレクトロニクスへの応用も検討しているという。出典:IBM
IBMはCZTS薄膜太陽電池セルの開発で先行しており、2010年2月にはCu2ZnSn(S,Se)4という組成の小面積セルで変換効率9.6%を達成したと発表している(図1)。一方、CIS太陽電池ではドイツZSWが、2010年8月に面積0.5cm2のセルで変換効率20.3%を達成したと発表しており、CZTS太陽電池とは10ポイント以上の差がついている。
今後はIBMのセル技術とソーラーフロンティアの薄膜生成・量産技術を組み合わせることで、次世代のCZTS薄膜太陽電池を開発する。
ソーラーフロンティアのCIS太陽電池の生産能力は年産80MW。年産900MWの工場を建設中であり、2011年に生産能力を年産1GWまで高める。2010年10月には米General Electricに対して、CIS太陽電池モジュールを供給することと、太陽電池システム技術に関して提携することで合意したと発表している。
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