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Bluetoothの用途拡大、低消費電力の4.0版が新市場を開拓無線通信技術 Bluetooth

低消費電力が特徴である最新版「Bluetooth 4.0」の策定が完了し、既存の「Bluetooth 3.0+HS」規格と接続可能なデュアルモードの品種が製品化されることで、Bluetoothの用途はさらに広がる。

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 携帯電話機やPC、携帯型オーディオ機器などに広く採用されている近距離無線通信規格「Bluetooth」。低消費電力が特徴である最新版「Bluetooth 4.0」の策定が完了し*1)、既存の「Bluetooth 3.0+HS」規格と接続可能なデュアルモードの品種が製品化されることで、用途がさらに広がる兆しが見えてきた。

 Bluetooth 4.0版は、低消費電力で無線チップを動かせる「Low Energyモード」を追加したことが特徴である。Low Energyモードの消費電力は、従来規格に比べて大幅に低く、1/10程度に削減できるという。消費電力の低さを売りに、これまで入り込むのが難しかったヘルスケア機器やフィットネス機器、デジタル家電のリモコンといった新たな用途に採用が進むと期待されている。

*1) Bluetooth 4.0版(Bluetooth Core Specification Version 4.0)は、Bluetoothの規格策定を手掛ける業界団体「Bluetooth SIG(Special Interest Group)」が2010年7月に正式に承認した。

図1
図1 シーエスアールの代表取締役社長の横山崇幸氏

 Bluetooth 4.0版に対応した無線チップには、Low Energyモードだけに対応したシングルモード品と、既存のBluetooth通信モード(例えば、Bluetooth 3.0+HS)とLow Energyモードそれぞれに対応したデュアルモード品がある。それぞれの役割は異なり、シングルモード品は血圧計や体組成計、歩数計、腕時計といった端末機器を対象にしている。一方のデュアルモード品は、端末機器からデータを収集するハブとなる機器(例えば、携帯電話機やスマートフォン、PC)を対象にしている。

 シングルモード品については、テキサス・インスツルメンツがRFトランシーバ回路やマイコンなどを1チップに集積した無線チップ「CC2540」の量産を開始した。さらに、低消費電力の無線チップを手掛けるノルディック セミコンダクター(Nordic Semiconductor)は「μBlue」、Bluetoothチップの大手ベンダーであるシーエスアールは「μEnergy」というブランドを立ち上げ、対応品種の提供を開始している。

 シングルモード品に加えて、シーエスアールがデュアルモードに対応したBluetooth 4.0対応無線チップ「CSR8000」シリーズの量産を発表したことで、Bluetoothの用途拡大に向けた準備が整ったことになる。「デュアルモードに対応したBluetooth 4.0対応無線チップは業界初」(同社の代表取締役社長の横山崇幸氏、図1)と主張する。

データハブにはデュアルモードが必要

 CSR8000シリーズは、携帯電話機やスマートフォンを対象にした「CSR8811」と、PCを対象にした「CSR8511」、車載機器を対象にした「CSR8311」などで構成している。CSR8311の量産が2010年末までに始まる。さらに、CSR8811とCSR8511については、2010年初頭の量産出荷を目指し、準備が進んでいる。

 CSR8000シリーズのうちで、Low Energyモードを備えない「CSR8810」と「CSR8510」の量産はすでに開始した。これら2品種は、Bluetooth 4.0版に技術的には対応可能だが、Bluetooth 4.0版のプロファイル仕様の策定作業がまだ完了していないため、Bluetooth 4.0対応だとは説明していない。2010年末までには、プロファイル仕様の策定作業が、すべて完了する見込みである。

図2
図2 「CSR8000」シリーズの回路構成 RFトランシーバ回路やFMレシーバ回路、プロセッサ、DSP、電源回路などで構成している。DSPは、音声コーディング処理や、イコライザ処理、雑音抑制処理などを担当している。同社従来品に比べて、改善点がいくつある。DSPの処理性能を60MIPSから80MIPSへ高めた。また、RFトランシーバ回路の出力電力を8dBmから10dBmに高めるともに、受信感度を−89dBmから−93dBmに改善した。

 CSR8000シリーズは、携帯電話機やスマートフォンにおける通話時の音声品質を高めたことも特徴だ(図2)。これまで、通話時の音声品質はそこまで高くなかった。通信ネットワークの帯域幅が制限されていたからだ。ところが、最近の通信事業者の動向として、通信ネットワークの帯域幅を広げ、音声品質を高める取り組みが進んでいる。

 このため、携帯電話機とヘッドセットをBluetoothで接続する「ラスト1m」が、音質を高める上のボトルネックになる可能性が出てきたという。そこで、無線チップで音質を劣化させないよう工夫を施した。例えば、音声コーディング処理を改良し、さらに内蔵DSPを使って雑音抑制処理を施すようにした。

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