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なぜモジュール型計測器なのか、高性能化で選択肢が拡大テスト/計測 モジュール型計測器(3/3 ページ)

かつては別々の機器に散らばっていた数々の機能が、現在では1つの機器に集約されるようになってきた。いまや携帯電話機もテレビも自動車も、多様な機能を複合的に備えている。そうした機器を高い品質で開発し、高いコスト効率で量産するには、複合的な機能が相互に及ぼす影響を包括的に評価できる計測システムが必要だ。所要の計測機能を過不足無く搭載し、さまざまな形態の信号を多チャンネルで同期をとりながら評価できるシステムを実現したい――。開発/製造現場のこうした声に応えるツールとして、モジュール型計測器の存在感が高まっている。

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高周波計測もモジュールで対応へ

 2つ目のマイクロ波計測技術の活用では、測定周波数が最大26.5GHzと高い変調解析機能搭載スペアナ(ベクトルシグナルアナライザ)「M9392A」を用意した(図4)。機能が異なる5個のPXIモジュールを組み合わせることで、ベクトルシグナルアナライザの機能を実現している。「単一メーカーでこれらのモジュールをすべて提供するのは当社が初めて。これまでは、例えばナショナルインスツルメンツのモジュールに一部他社のモジュールを組み合わせなければ、26.5GHz対応ベクトルシグナルアナライザを構成できなかった」(同氏)。

図4
図4 26.5GHz対応ベクトルシグナルアナライザがモジュール型で登場 5個のモジュールを単一のシャーシに格納したマルチモジュール機だ。左から、IFデジタイザ、ローカル発振器、アッテネータ/プリセレクタ、マイクロ波ダウンコンバータ、RFダウンコンバータである。出典:アジレント・テクノロジー

 さらにこのベクトルシグナルアナライザでは、250MHzと広い解析帯域幅も実現した。スタンドアロン型のスペアナとは異なり、掃引には対応していない上に、測定ダイナミックレンジも比較的低いものの、帯域幅については「スタンドアロン型を含む当社のスペアナで最大」(同氏)である。同社のスタンドアロン型スペアナでは「N9030A PXA」が140MHzの帯域幅を備え(ダイナミックレンジは14ビット相当)、価格が1000万円なのに対し、モジュール型で構成すれば250MHzの帯域幅(ダイナミックレンジは12ビット相当)に対応できる上に、価格についてもハードウエアとソフトウエアを合わせて800万円強と比較的低く抑えられる。

 さらに同社は2010年10月に、1.4GHzと広い帯域幅を備えたダウンコンバータモジュール「M9362AD01」も発売した。周波数範囲についても10MHz〜26.5GHzを確保している。「衛星通信など、1GHzを超えるような極めて広い帯域幅を利用する無線通信に向けた計測システムを構築できる。従来こうした計測は、ダイナミックレンジが8ビット相当と低い広帯域オシロスコープに、ベクトル信号解析ソフトウエアを組み合わせるしか手段がなかった」(同氏)。

高速データ転送の特長をさらに強化

 3つ目は、PXI対応モジュールでバックプレーンにPCI Express Gen2を採用したことだ。ホストコンピュータに接続するスロット(システムスロット)との間のデータ転送速度は8Gバイト/秒、計測モジュールを収納するスロット(周辺スロット)は同4Gバイト/秒と高い。

 図3にも示した通り、モジュール型の大きなメリットの1つは、コントローラと計測モジュールの間を内部データバスを利用して高いデータ転送速度で接続できることだ。スタンドアロン型の計測器をLANやUSB、GPIBなどを介してホストPCにつないで計測システムを構築する場合に比べて、計測データの転送に要する時間を大幅に短縮できるため、高いスループットを実現できる。PCI Express Gen2に対応したことで、このメリットがさらに強化された形だ。

 アジレント・テクノロジーが今回投入したPCI Express Gen2対応の製品は、PXIe対応の18スロットシャーシ「M9018A」である。16スロットについては、PXIe対応モジュールとPXI対応モジュールをどちらでも収容できる、いわゆるハイブリッドスロットである。「16個ものハイブリッドスロットを備えたシャーシは業界初だ。計測システムの拡張性を高められる」(同氏)という。

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