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「2.5インチディスク1枚で500Gバイト超」、新方式のHDDコントローラLSIが登場メモリ/ストレージ技術 HDD

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 Link_A_Media Devices(リンク・ア・メディア・デバイセズ)は、2.5インチ型のハードディスク1枚に500Gバイトを超えるデータを記録できるコントローラLSIを開発し、HDD(ハードディスク装置)メーカーにサンプル出荷を始めた。同社は、HDD用とSSD(Solid State Drive)用のコントローラLSIを手掛ける米国のファブレス半導体ベンダーである。今回は、セクター構成や誤り訂正符号に新方式を導入することで、ディスク1枚当たりの記録容量を従来一般的だった方式に比べて3割程度増やしたという。

 セクター構成については、セクター当たりのデータサイズを4Kバイトに拡大した。同社によれば、「HDD業界では過去25年もの間、512バイトのセクター構成が用いられてきた。2010年になって、ついに4Kバイトへの移行が始まったところだ」(会長兼CEO(最高経営責任者)を務めるHemant Thapar氏)(図1)。セクター当たりのデータサイズを大きくすれば、ディスク全体で見るとデータ記録容量を増やせる。各セクターに設ける同期や誤り訂正符号などの領域に費やされるオーバーヘッドを減らせるからだ(図2)。「512バイトから4Kバイトに拡大することで、ディスク上のデータ記録領域を5%〜11%増やせる」(同氏)という。

図1
図1 Link_A_Media Devices会長兼CEOのHemant Thapar氏
図2
図2 データサイズを拡大してデータ領域を広げる
セクター当たりのデータサイズを拡大すれば、同期や誤り訂正符号などの領域がディスク上に占める割合を減らせるので、データ記録用の領域を増やせる。

 誤り訂正符号については、LDPC(Low Density Parity Check)法式を採用した。これまで標準的な方式だったリードソロモン符号に比べて、誤り訂正の効率が大幅に高い。そのため、「セクター構成が4Kバイトのときは、リードソロモン符号を使う場合に比べてディスク上のデータ記録領域を15%〜25%増やせる」(同氏)。セクター構成を512バイトから4Kバイトに拡大する前述の効果と総合すると、最終的にはディスク上のデータ記録領域を25%〜35%増やせるという(図3)。「4Kバイトのセクター構成に対応するとともにLDPC方式の誤り訂正機能を搭載したHDDコントローラLSIは、業界初だ。LDPCだけをとっても、3.5インチ型HDDでは採用品が市場に投入されているが、2.5インチ型HDDの採用品はまだ製品化されていない」(会長兼CEO(最高経営責任者)を務めるHemant Thapar氏)と主張する。

 4Kバイトとデータサイズが大きなセクターに対応可能なLDPC処理回路を独自に開発した。「LDPCはリードソロモン符号に比べて処理が格段に複雑なので、通常は回路がかなり大規模化してしまう。それを今回は独自の工夫で、同サイズのセクターに対応するリードソロモン符号処理回路に比べて多少大きい程度の回路面積で実現した。コスト面でも消費電力面でも、リードソロモン符号方式のコントローラLSIと十分に競合できる」(同氏)という。

 なお今回のコントローラLSIの製造はルネサス エレクトロニクスが担当する。Link_A_Media Devicesには創業時からNECエレクトロニクスが投資しており、NECエレクトロニクスがルネサス テクノロジと統合してルネサス エレクトロニクスになった現在でも、Link_A_Media Devicesのすべての製品の製造をルネサス エレクトロニクスが請け負っている。Link_A_Media Devicesによれば、ルネサス エレクトロニクスとの関係は、単にファブレス半導体ベンダーとファウンドリの関係ではないという。「戦略的な提携関係だ。ルネサスはウエハー処理工程のみならず、パッケージング工程も担当する。さらに同社は、当社がコントローラLSIに集積する回路ブロックのIPコアも提供している」(同氏)。

図3
図3 Link_A_Media DevicesのHDDコントローラの歴史
第1世代品は、2010年7月に発表したもので、4Kバイトを8個の512バイト領域に分けてリードソロモン符号で誤り訂正処理を施していた。第2世代品も、リードソロモン符号を利用するが、4個の1Kバイト領域に分ける構成を採ることでデータ記録領域を増やした。今回の開発品は第3世代に当たり、誤り訂正にLDPC方式を採用するともに、セクター構成を4Kバイトに拡大した。こうすれば、ディスク当たりに確保可能なデータ記録領域を最も大きくできる。

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