部屋丸ごと「ワイヤレス給電空間」へ、WiTricity社が考える未来像:ワイヤレス給電技術 共鳴方式(2/2 ページ)
「共鳴型」と呼ぶワイヤレス給電技術の実用化に向け、研究開発を進めている企業の1つが、米国に本社を構えるWiTricityだ。
コイル設計や動的制御に独自技術
EE Times Japan ワイヤレス給電モジュールの伝送効率を向上させる仕組みを教えてほしい。
Schatz氏 送信側デバイスと受電側デバイスの相対位置が変化したときに、伝送効率を最適化する手法をいくつも有している。
まず、共鳴型ワイヤレス給電システムでは、送電側デバイスと受電側デバイスが共鳴現象によって強く結合しているため、伝送効率を維持したまま、受電側デバイスの位置を変えられる。
従来の電磁誘導方式では、受電側デバイスの位置を正確に合わせる必要があったり、送電側デバイスを物理的に動かすモーターが必要だったり、送電側コイルを複数組み合わせてグリッド状にして受電側コイルの位置を検出する仕組みが必要だったりする。これに対して、共鳴型ワイヤレス給電システムでは、このような仕組みは不要だ。
共鳴型ワイヤレス給電システムそのものの特徴に加え、伝送効率を最大化するための独自技術を有している。例えば、磁性材料とシールド技術を活用した共振器(コイル)の設計手法や、それぞれの用途に適した磁場を形成する共振器の構成手法などである。
EE Times Japan 制御回路の観点ではどうか。伝送効率を向上させる制御技術を教えてほしい。
Schatz氏 もちろん、送電側と受電側の相対位置の不確定度が高いとき、伝送効率を向上させるために、共鳴型ワイヤレス給電システムの制御回路を動的に調整することも有効である。当社は、いくつかの動的な制御技術を有している。
3つの具体例を挙げよう。まず、受電側の機器が必要としている電力量を、自動的に検出する機能がある。送電側機器の近くに受電側の機器が無かったり、受電側機器を充電する必要がないときには、送電側機器はスタンバイモードに入る。
次に、受電側機器の負荷変動に対応し、ワイヤレス給電システムのパフォーマンスを最大化する機能がある。供給電力のレベルや、送電側デバイスと受電側デバイスの結合を調整する。最後に、1つの送信側デバイスから複数の受電側デバイスに対して電力を供給するときの管理機能を有している。
標準仕様の作成にも協力
EE Times Japan 特許や標準化動向について、教えてほしい。
Schatz氏 当社では、2010年6月と同年10月に、米国特許の取得を完了した(「US 7,741,734」と「US 7,825,543」)。加えて、2010年初頭にオーストラリアの特許「AUS 2006269374」を取得済みである。
また、「SAE(Society of Automotive Engineering)」や「UL(Underwriters Laboratory)」といった団体による、ワイヤレス給電システムの標準化作業に参画し、協力している。このほか、当社は現在、シリーズCの投資ラウンドにより、合計で1500万米ドルの投資を受けていることも、更新情報である。
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