スマートグリッドを実現する無線の進化、サービス連携や組み込み容易に:無線通信技術 スマートグリッド(4/4 ページ)
宅内にあるさまざまなエレクトロニクス機器をネットワーク接続し、電力の消費量を監視・制御する、宅内の電力管理システム「HEMS(Home Energy Management System)」は、最終的な形がまだ見えていない。HEMSを構築する要素の1つである無線通信の分野でも、各種アプリケーションとの連携や、組み込みの容易性を訴求した提案が相次いでいる。
ZigBeeで宅内のスマート化を実現へ
ZigBeeも、前述のように、スマートグリッドやHEMSに使う無線通信技術の有力な候補の1つである。距離無線通信の業界団体である「ZigBee Alliance」では、メーター検針や電力管理に向けた「Smart Energy Profile 1.0」や、宅内の無線ネットワークに向けた「Home Automation」といったプロファイルをすでに用意している。さらに、Smart Energy Profile 1.0を進化させた「Smart Energy Profile 2.0」や、エネルギーハーベスティングに向けたプロファイル「Green Power」の策定作業を進めている。
NXPセミコンダクターズは、2010年11月に開催した事業説明会の中で、「家電やLED照明の電力監視や、スマートグリッドの市場で、将来的にデファクト(事実上の標準)になるであろう、重要な要素技術がZigBeeだ」(同社のハイパフォーマンス・ミクスドシグナル事業部で統括部長を務める国吉和哉氏、図7)と語った。
図7 NXPセミコンダクターズのハイパフォーマンス・ミクスドシグナル(HPMS)事業部で統括部長を務める国吉和哉氏 ZigBeeがHEMSのデファクトになるだろうと語った。同社では、HEMSの実現に向け、LED照明制御ICや、低消費電力のマイコン、ZigBee対応マイコンを提供している。
同社は、IEEE 802.15.4を採用した独自プロトコル「JenNET」やZigBeeに対応した無線チップを手掛ける「Jennic」を2010年7月に買収した。現在提供している代表製品が、IEEE 802.15.4規格に準拠したRFトランシーバ回路と32ビットマイコン、周辺回路を1チップに集積した「JN5148」である(図8)。送信時の消費電流は15mA、受信時の消費電流は17.5mAと小さい。
図8 NXPセミコンダクターズのZigBee対応マイコン「JN5148」を搭載したデモ基板 JN5148には、低消費電力の無線通信技術「IEEE 802.15.4」に準拠したRFトランシーバ回路や32ビットマイコンなどが搭載されている。
2011年3月には、回路構成を単純化することで、価格を抑えた「JN5142」のサンプル出荷を開始する予定である。宅内の無線ネットワークを構成する機器や、自己発電型スイッチ(エネルギーハーベスティング機器)への適用を想定している。機械式スイッチを押し込む動作1回分で、3パケットを送れるほど、消費電力は小さいという。
ZigBee IPを2011年下半期に提供
さらに、同社のハイパフォーマンス・ミクスドシグナル事業部のLow Power RFマネージャであるAdrian Ward氏によれば、2011年後半には「ZigBee IP」と呼ぶ新技術に対応したプロトコルスタックを提供できる見込みだという。ZigBee IPとは、ZigBee規格のネットワーク層にIP(インターネットプロトコル)を採用したもの。これが実現すれば、Wi-Fiとの連携や、インターネットへの接続もこれまでに比べて容易になる。
現在、ZigBee IPの策定作業が続いている状況だ。ZigBeeの特徴の1つでもあるメッシュ型の無線ネットワークを構築するための「ルーティング技術」をいかに実現するかが、「ホットな議論の1つ」(同氏)だという。ただ、「ROLL(Ruting over Low Power Lossy Networks)」と呼ぶ方法が実現技術の候補に挙がっており、議論は収束する方向に進んでいるようだ。
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