多様な要求が集まる二次電池、Si負極や10年の寿命実現へ:エネルギー技術 二次電池(1/4 ページ)
携帯型機器の主電源として広く使われている二次電池は、さまざまな機器設計者の要求に応えられるだけの性能を発揮できる。しかし、二次電池の用途が電気自動車や再生可能エネルギーを支援する役割まで広がっていくと、現在の性能では不十分である。どのような性能が不足しているのか、どの程度の性能が必要なのか、性能を向上させる手法にはどのようなものがあるのか、リチウムイオン二次電池を中心に技術開発動向をまとめた。
二次電池が脚光を浴びている。従来から二次電池が広く使われてきた携帯型機器はもちろん、電気自動車(EV)の内蔵用途、さらには出力が不安定な再生可能エネルギーと組み合わせるなど、今後成長が著しいエレクトロニクス市場の中核に位置しているからだ。
二次電池に求められる性能は数多い。取り出せるエネルギー(Wh)が大きいことに限らず、小型・軽量であること、サイクル寿命が長く何度も充放電できること、充電に必要な時間が短いこと、材料コストが低いことなど実にさまざまな要求がある。
これら全ての要求を満たす電池を開発することは難しい。他の二次電池と比べて性能が高いリチウムイオン二次電池を開発の中心に据えたとしても実現できるかどうか不明だ。
実は全性能を高める必要がない場合が多い。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2010年5月に発表した「二次電池技術開発ロードマップ2010」では、用途ごとに7つのグループに分け、それぞれのグループごとに要求性能を示した(表1)。
表1 二次電池の用途と必要な性能 2020年に要求される最も高い仕様などを示した。例えばサイクル寿命4000回が必要になるのは再生可能エネルギーやフォークリフトの用途だけである。2020年以降は全固体電池や金属−空気電池、多価カチオン電池などの革新的二次電池が必要だとした。出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「二次電池技術開発ロードマップ」を基に本誌が作成。
7つのグループとは、(1)EVや電動二輪車、(2)フォークリフト、(3)PCや携帯電話機、デジタルビデオカメラ、(4)HEV(ハイブリッド自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド自動車)、(5)UPS、(6)無線基地用バックアップ、通信ビル用バックアップ、(7)施設工場向け蓄電システム、住宅向け蓄電システム、風力発電などの出力安定化、余剰電力対策のための系統安定化用途、である。
例えばEVでは重量当たりや体積当たりのエネルギー量(エネルギー密度)の向上が最も求められており、HEVやPHEVではエネルギー密度よりも単位時間当たりに引き出せるエネルギー量である出力密度(W/kg、W/l)が他の6グループと比べて要求されるとした。
太陽光発電や風力発電が普及したときに必要な余剰電力対策に用いる二次電池ではサイクル寿命(充放電回数)が要求されるという。
課題が少ない用途もある。携帯型機器ではエネルギー密度が重要であり、ユーザーが同一の機器を使い続ける期間が比較的短いため、サイクル寿命はあまり重要視されない。いずれにせよ現状のリチウムイオン二次電池の性能で要求がほぼ満たされているという。
現在のガソリン車をそのまま置き換える電気自動車を開発しようとすると、先に挙げたほぼ全ての条件を満たさなければならず開発は非常に厳しい状況だ。そこで、2010年現在ではHEVのようにガソリンエンジンの支援にとどめる、軽自動車のように「街乗り」用途に限定するなど、機器の使い方を変えることで対応している。
以下では表1に挙げた性能をどの程度実現できるのか、二次電池の将来を紹介する。
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