多様な要求が集まる二次電池、Si負極や10年の寿命実現へ:エネルギー技術 二次電池(4/4 ページ)
携帯型機器の主電源として広く使われている二次電池は、さまざまな機器設計者の要求に応えられるだけの性能を発揮できる。しかし、二次電池の用途が電気自動車や再生可能エネルギーを支援する役割まで広がっていくと、現在の性能では不十分である。どのような性能が不足しているのか、どの程度の性能が必要なのか、性能を向上させる手法にはどのようなものがあるのか、リチウムイオン二次電池を中心に技術開発動向をまとめた。
材料コストを抑える
リチウムイオン二次電池の材料コストを決めているのは、Li自体である。生産量が限られている上に、他の金属と比べて埋蔵量(約1000万トン)も限られているためだ。
そこで、Li以外の金属を用いて、リチウムイオン二次電池と同等の原理で動作する高容量な電池を開発すべく研究が進んでいる。候補はNa(ナトリウム)とMg(マグネシウム)だ。
Naは食塩の構成元素でもあり、安価で大量に入手できる。Liと性質が似ており、比較的容易にLiを代替できる可能性がある。しかし、Na+のイオン半径はLi+と比べて約30%大きいため、グラファイト負極では吸蔵できなくなり、二次電池としてまったく機能しないという問題があった。
東京理科大学では、グラファイトよりも結晶構造が小さいハードカーボンを使うことで、この問題を解決した(図2)。容量は240mAh/gであり、90サイクル後の容量低下は10%以下だという。なお正極材料にはNaNi0.5Mn0.5O2を用いた。正極側の容量は122mAh/gである。
Mgも「にがり」の成分などとして大量に存在する元素である。課題の1つはMg2+を吸蔵、放出しても結晶構造が崩れない正極材料がほとんど見つかっていないことである。
埼玉県立の試験研究機関である埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)は、SをドープしたV2O5(五酸化バナジウム)を合成し正極として使い、負極にMg合金を採用した二次電池セルを試作した。V2O5だけを用いるとサイクル特性が悪く、充放電に耐えなかったが、Sをドープしたことで、220mAh/gの放電容量を確保し、5サイクル目でもほぼ100%の容量を維持できたという。220mAh/gという容量はリチウムイオン二次電池の正極材料とほぼ同等である。
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