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【年頭特集】EE Times誌が選ぶ2011年の注目技術(前編)センシング技術

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【注目技術その1】ジェスチャー認識がハンズフリーで花開く

 ジェスチャー認識はここ何年もの間、研究対象として興味深い分野と見なされてきた。ところが、ハンズフリー操作のように非常に分かりやすい応用があるにもかかわらず、数多くの優れた研究成果がまだ研究室の中でくすぶっている状態だ。それでも、変化の兆しは見え始めている。ファブレス半導体ベンダーのPrimeSenseは、マイクロソフトが家庭用ゲーム機「Xbox 360」向けに開発したモーションキャプチャー技術「Kinect(キネクト)」のコントローラでデザインウィンを獲得した(図1)。これは、ジェスチャー認識の研究に取り組む人々が求めていた「キラーアプリケーション」になる可能性がある。

 任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」は、リモートコントローラに加速度センサーとジャイロスコープ(角速度センサー)を搭載することで革新的なユーザーインタフェースを実現し、人々の興味を引きつけた。しかしこのリモートコントローラは、ユーザーが手に持って遊ぶタイプのものだ。ゲーム機にジェスチャー認識のハードウェアを組み込んで、ユーザーにハンズフリーでのゲーム環境を提供する動きが加速すれば、ゲーム業界は一変するかもしれない。Kinectのようなハンズフリーインタフェースが市場で成功を収めることが確実視されるようになった今、それを受けてCanesta(2010年後半にマイクロソフトに買収された)やHillcrest Labs、Moveaのような企業が、テレビやノートブックといったゲーム以外のプラットフォームに向けたハンズフリーインタフェースの提供を始める可能性もある。次に大きな動きがあるとすれば、制御のためのさまざまなジェスチャーをまとめた「語彙(ごい)集」のようなものを標準化する取り組みかもしれない。

図1
図1 手持ちコントローラからユーザーを解放 マイクロソフトのXbox用コントローラ「Kinect」は、複雑な手持ちコントローラではなく、カメラとジェスチャー認識アルゴリズムに高度な知能を組み込んでおり、ユーザーはハンズフリーでゲームを楽しむことができる。
―― Peter Clarke:EE Times 【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

【注目技術その2】タッチスクリーン搭載タブレットが続々登場

 コンテンツの消費と制作の両方ではなく、コンテンツの消費のみに特化して設計された電子機器の先駆けは、アップルの携帯型音楽プレーヤ「iPod」である。iPodに真っ向から対抗した音楽プレーヤは事実上、マイクロソフトの「Zune」だけだった。ところがその後アップルが2010年にタブレット型コンピュータ「iPad」を発売すると、主だった電子機器メーカーは軒並みアップルを追従し始めた。つまり「タッチスクリーン搭載タブレット」という製品分野に続々と参入しているのである。2011年には、ノートPCやネットブック、スマートフォンのメーカーから、さらには携帯型音楽プレーヤのメーカーに至るまで、タッチスクリーン搭載タブレットを市場に投入する見通しだ。しかし、それらのほとんどは、多少の差別化要素を盛り込んではいるものの、このトレンドの発端となったiPadの模倣を試みた製品になると予想される。その一例が、デルが2010年12月下旬に発売した通話機能搭載Androidタブレット「Streak」だ。

 アップルのエコシステムに真正面から勝負を挑むようなエコシステムを構築しようとするベンダーはほとんど無い。数少ない例外はサムスン電子である。同社は、iPadに類似した機能を備えるAndroidタブレット「Galaxy Tab」を発売した。機能だけではなく、iPadと「iPhone」の関係と同様に、Galaxy Tabに名前がよく似た携帯電話機「Galaxy S」を用意している点でも、サムスンはアップルに似ている。

 サムスン以外のメーカーは、競合製品の少ない市場を狙う。例えば、HP(ヒューレット・パッカード)のビジネス向けタブレット「Slate」は、ペン入力に対応しており、保険会社などの企業顧客に向ける。保険会社は、現場に出向く損害査定人にこのタブレットを支給している。一方、Research in Motion(RIM)のタブレット「PlayBook」は、iPhoneよりセキュリティ機能が優れているという「BlackBerry」の評価を強みに、企業向けの需要を見込む(図2)。RIMは、「PlayBookをBlackBerryにテザリングして使えば、iPadオーナーと同等の環境をセキュリティを犠牲にすることなく利用できる」と主張している。

図2
図2 RIMのタブレット「PlayBook」 RIMはiPadに似たタブレット「PlayBook」を投入している。これに、高いセキュリティを特長とする同社のBlackBerry携帯電話機をテザリングして使えば、ユーザーは同社の優れた暗号化技術を享受できるという。
―― R. Colin Johnson:EE Times 【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

【注目技術その3】無線技術がヘルスケアをつなぐ

 家庭用ヘルスケア市場では、無線技術の活用が進み、着実にその成果が挙がっている。2011年以降は、健康維持や健康管理などの遠隔サービスを提供していく上で、無線技術が極めて重要になっていくだろう。General Electric(GE)やインテル、クアルコムをはじめとするさまざまな企業が、遠隔医療や自立生活支援の領域のアプリケーション開発において、無線接続性の導入に重点を置いた取り組みを進めている。

 例えばクアルコムは、医療無線ゲートウエイを遠隔医療ソリューションで重要な役割を果たす要素と位置付けており、人体に取り付けたセンサーが収集したデータをBluetoothや無線LAN、超低消費電力の人体通信網(BAN:ボディエリアネットワーク)などを介して携帯型の無線端末にワイヤレス送信するという構造を描いている。このほか、同じ市場に取り組むMedAppsは、携帯型の健康管理機器「HealthPAL」を開発している(図3)。HealthPALは、人体から読み取ったデータをサーバーに自動的に無線伝送でき、患者のデータを遠隔からモニタリングしたり確認したりすることが可能だ。さらにLynuxWorksは、Portwellと共同で、コンセプト実証用の無線センサープラットフォームを開発した。インテルのチップを採用しており、Bluetoothの無線通信機能を備えた生体センサーを25個以上モニタリングできる。患者のセンサーが収集したデータ内容を、標準的なWindows環境でグラフィカルに表示してモニタリングすることが可能だ。

図3
図3 無線機能搭載の携帯型健康管理機器「HealthPAL」 HealthPALは、Bluetooth経由で各種医療機器に無線接続して、情報を読み取る機能を備えている。また、MedAppsがヘルスケア機関向けに提供しているウェブベースのポータルサイト「HealthCOM」とバックグラウンドでデータをやりとりすることが可能だ。
―― Nicolas Mokhoff:EE Times 【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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