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【カーエレ 2011】安川電機がSiCモータードライブを展示、ロームの素子を採用パワー半導体 SiCデバイス

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 安川電機は、IGBTなどの代わりにSiC(炭化ケイ素)パワー半導体を使ったモータードライブ「SiC-QMET」を「第2回 EV・HEV 駆動システム技術展(EV JAPAN)」(2011年1月19日〜21日に東京ビッグサイトで開催)で展示した(図1)。電気自動車(EV)のモーター用回路とインバーターの小型化が目的である。2015年の製品化を目指す。

 SiC-QMETは、直流を交流に変換するインバーター部と、モーターの巻き線切り替え機能を担うモーター部から成る(図2)。「SiCを採用することで、インバーター部の体積を1/2に削減できた」(同社の説明員)(図3)。SiCを採用したことでオン抵抗が低減し、発熱量が減ったことなどが小型化に役立った。

図1
図1 安川電機が展示したモータードライブ「SiC-QMET」のモーター部
モーター一体型の部品である。利用するモーターの巻き線の長さを電気的に切り替えることで、幅広い速度範囲で出力性能を改善する機能を備える。SiCパワー半導体を使ったことで、モーター部の体積を1/2に削減できたという。

 加えて、効率を従来のIGBTを用いた品種の94%から96%に向上させた。今回展示したSiCインバーターは製品化に向けた最適化を施していない段階だが、重量も約1割低減できたという。

図2
図2 モータードライブの回路構成と仕様
インバーター部に採用したSiCパワー半導体は、SiC DMOS(Double-Diffused MOSFET)とSiCショットキーバリアダイオード(SBD)。巻き線切り替え部には、オン抵抗の低いトレンチ形SiC MOSFET(インバーターに採用)とSiC SBDを使った。いずれもロームのパワー半導体である。
図3
図3 インバーター部の比較
IGBTを使った従来品のインバーター(左)と比べて、SiCパワー半導体を使った開発品(右)は、体積を約1/2に抑えることができた。

 EVセダン車にも役立つSiC

 SiC-QMETは、EVコンパクト車やEVセダン車に向けた60kWの出力に対応したモータードライブ(図4)。広い定出力範囲と高出力、高効率のモーターが要求されるため、インバーターの他に、電気的に巻き線を切り替える機構をモーター部に備える。

図4
図4 安川電機のモータードライブ製品のラインナップ
モーターの出力ごとに製品系列を分けている。低出力で高効率のモーターが要求されるコミュータ(出力3kW)と軽自動車(47kW)用のモータードライブは「YMEV」。広い定出力範囲と高出力、高効率のモーターが要求されるコンパクト車(60kW)とセダン車(80kW)は、「QMET」である。今回、QMETにSiCパワー半導体を適用した。

 巻き線切り替え部では、モーターの回転数が6000回転/分を上回ったときに、一部の巻き線のみに電流を流すように動作を切り替える。高速運転時と低速運転時のモーター電流を切り替えることで、広い速度領域で出力性能を改善できるという。「小型化に適した構造である。IGBTでも小型化できるが、SiCを採用したことでモーター部の体積を1/2に抑えられた。なお、切り替え段数は2段あればコンパクト車やセダン車を製造するメーカーの仕様を満たすことができる」(同社)。

 今回の展示品ではSiC MOSFETのスイッチング周波数を高めたときの検証結果は展示されていなかった。同社のIGBTを用いたQMET用インバーターは10kHz動作である。SiCは物性上スイッチング損失が小さいため、理論上100kHz程度までスイッチング周波数を向上できるはずである。スイッチング周波数を高めることができれば、周辺部品のいっそうの小型化が可能になる。しかし、スイッチング周波数を高めるにはより手厚いサージ対策を施さなければ車載向けには実用化できない。今後は、スイッチング周波数を高める開発を進める。「2014年に開発を完了し、SiC MOSFETの量産による低価格化を待って2015年に製品化が可能になると考えている」(同社)。

修正あり>記事掲載当初、記事タイトルに不正確な表現がありました。本記事は既に修正済みです。

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