電気製品の安全性を確認する評価・認証機関であるUnderwriters Laboratories(UL)の日本法人であるUL Japanは、2011年1月25日に事業説明会を開催し、2010年の事業内容を振り返るとともに、2011年の戦略を明らかにした。2010年、2011年ともに、「エネルギー」というキーワードが注力事業の軸である。2011年は、エネルギー分配の効率性を高められると注目されているスマートグリッドに関連した分野に特に注目している。
最先端のPV試験所の稼働開始
説明会に登壇した同社の取締役社長の山上英彦氏は、まず2010年の事業を振り返り、「エネルギー関連の分野に注力した1年だった」と語った(図1)。
同社にとって2010年の最も大きな話題は、三重県伊勢市に太陽光発電(PV)システム用の試験所を新たに開設したことである(図2)。最先端の試験設備を多く備えていることや、試験所の規模が延べ床面積で1950m2と大きいことなどが特徴のPV試験所だ。「日本国内の企業に対して、PVシステムの安全性や性能に関する試験を、一気通貫で提供できるようになった」(同氏)と開設の意義を語った。これまでは、UL認証を受けるには、海外で試験を受ける必要があったという。
この他に2010年の話題としては、電気自動車(EV)の関連製品の評価・認証業務に注力したことや、エネルギー効率性の認証サービスを強化したことを挙げた。
EV関連製品とは、充電スタンドや充電ケーブル、充電コネクタ、急速充電器など。公表されている事例としては、日産自動車の電気自動車「日産リーフ」用の充電ケーブルの評価・認証試験をUL Japanが実施し、UL認証を発行した実績がある。
一方のエネルギー効率性の認証サービスについては、米国のエネルギースター認証の制度改正を理由に、この分野での業務が増えてきたという。従来、エネルギースター認証を受けるときの評価作業は、各企業が独自に実施していた。ところが2011年1月から、エネルギースター認証を受けるには、米国の環境保護庁(EPA)の認定試験所や、認定機関(CB)において認証を受けることが必要になった。ULはEPAの認定機関であり、2010年12月には伊勢市のPVシステム試験所も認定試験所に登録された。
スマートグリッド分野を強化
山上氏は、2010年の振り返りに続いて、2011年の事業戦略を説明した。2011年の事業戦略は主に2つあり、1つは製品単体の安全性のみならず、複数の製品が組み合わされたシステムとしてのパフォーマンスや信頼性の検証作業にも踏み込むこと。もう1つは、スマートグリッドに関連した市場への対応を強化することである。
「社会が求める安全・安心の要望が多様化していることを背景に、製品単体の安全のみならず、システムとしての信頼性の検査・検証の需要が拡大している」(同氏)という。
後者のスマートグリッド市場に向けた取り組みについては、太陽光発電パネルや風力タービンといった再生可能エネルギー分野、燃料電池や大型電池の蓄電分野、電気自動車に対する評価体制を強化する。2011年3月には、スマートグリッド市場を対象にしたUL規格を公開する予定である。
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