450mmの次世代ウエハーサイズに向けた製造装置をめぐる動きには進展が見受けられるにもかかわらず、450mmファブの出現はむしろ遅くなるとみられ、製造開始時期も以前の目標からずれたようだ。
アナリストらにとって、これはまったく驚くに値しない。近年の不況によって、450mmファブおよび製造装置への投資が遅れたとみられていたためだ。インテルとサムスン電子、そしてTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、2012年までに450mmウエハーの試作ファブを設置することにすでに言及している。インテルは、450mmウエハーに「対応可能」なファブである「D1X」の準備を進めている。米国オレゴン州に開設されるこの新しいファブは、新規の研究開発施設として2013年の運用開始が予定されている。
市場調査会社である米国のIC Insightsでアナリストを務めるTrevor Yancey氏は、同社が最近開催した市場予測リポートのセミナーにおいて、「近年の不況によって半導体業界が打撃を受ける以前には、450mmウエハーの製造開始は早ければ2015年、あるいは2016年に予定されていた」と述べた。
不況によって、製造装置ベンダーは450mmに関する計画や投資を減速させた。その結果、「450mmウエハーの製造は少なくとも2017年、あるいは2018年まで遅れることになった」と同氏は言う。
米国の投資銀行であるPiper Jaffrayのアナリストを務めるGus Richard氏は、最近発表したリポートの中で、「450mmを採用すればユニット当たりのコストは大幅に減少し、ファブの生産量は増加する。しかし製造装置サプライヤーは、口径の大きなウエハーに移行するために必要な投資を行っていない」と述べている。
「製造装置サプライヤーは、300mmウエハー製造装置の研究開発向け投資について、許容可能な投資収益率(ROI:Return on Investment)を実現できなかった。そのため、450mmウエハーの製造が可能な装置の開発に対して、投資をためらっている。いつかは450mmウエハーが製造段階に移行する時がくるだろうが、それが今後5年間に起こる可能性は低い」(同氏)。
それでも、製造装置ベンダーは450mmへの取り組みをひそかに進めている。市場調査会社である米国のVLSI ResearchでCEO(最高経営責任者)を務めるG. Dan Hutcheson氏は、最近のリポートの中で、「450mmをめぐっては、水面下でさまざまな動きが起きており、何らかの大きなニュースが来年(2012年)飛び込んできそうな兆候が見られる」と述べている。
「製造装置サプライヤーは、450mmへの移行にあらがうことを止めており、ほとんどの企業は何かしらの取り組みを進めている。その上、企業の考え方に大きな変化が起きている。450mmに取り組まない企業は、もう反抗的な現実主義者だとは見なされていない。『断固反対』または『450mmの前に退職する』という考え方から、『ライバルがやるなら当社もやらなければ』または『やらなければ立ち後れる』という考え方に変わっている。これは大きい」(同氏)。
ウエハー製造を手掛ける企業からも、進展が報告されている。ドイツの化学企業Wacker Chemieの子会社でウエハーを専門とするWacker Siltronicと、その他複数の企業は、「Planetary Pad Grinding」と呼ばれる新技術を開発したと発表した。この技術は、研磨とラッピングの手法を組み合わせ、平坦性が極めて高い「ジャンボウエハー」を製造できるというものだ。
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