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「5+1の市場に注力し、10%成長目指す」、アナログ・デバイセズが2011年度の目標と戦略を発表ビジネスニュース 企業動向

アナログ半導体の大手ベンダーであるアナログ・デバイセズの日本法人は、2011年2月1日に東京都内で報道機関に向けた事業説明会を開催し、2011会計年度(2010年11月〜2011年10月)の目標と戦略を発表した。

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 アナログ半導体の大手ベンダーであるアナログ・デバイセズの日本法人は、2011年2月1日に東京都内で報道機関に向けた事業説明会を開催し、2011会計年度(2010年11月〜2011年10月)の目標と戦略を発表した(図1)。

図1
図1 2011年度の事業について説明する馬渡修氏 アナログ・デバイセズの日本法人で代表取締役社長兼会長を務めている。

 2011年度の日本法人の売上高を前年度(2009年11月〜2010年10月)比で10%高めることを目指す。2010年度の売上高は約450億円だったので、これを500億円弱まで引き上げることが目標になる(図2)。

 この達成に向けた戦略としては、「顧客企業の機器の差別化に貢献できる半導体製品を提供する」(同社の代表取締役社長で会長を兼務する馬渡修氏)ことを掲げた。この取り組みの中で戦略的な注力市場と位置付けるのは、応用分野で切り分けた市場5つと、企業属性で切り分けた市場1つである。具体的には、応用分野が「産業・計測機器」、「ヘルスケア」、「オートモーティブ」、「コンスーマ」、「通信インフラ」で、それぞれに具体的な取り組みを定めた。企業属性では、国内に数多く存在する中小規模のメーカー群を「コアマーケット」と呼んで1つの市場とみなし、サポートを強化する。

図2
図2 アナログ・デバイセズが掲げるビジョンと目標 ビジョンや中長期目標は、以前から表明していたものと変わらない。中長期目標の達成時期については、「厳密に定めているわけではない。一般には5年前後といったところだろうが、状況の変化に応じて調整していく」(馬渡氏)と説明した。

 これら「5+1」の各市場に向けた具体的な取り組みはこうだ。

 産業・計測機器の市場では、2010年度の売り上げに大きく貢献した、FA分野のモーター制御に使う電流検出用絶縁向けコンバータなどに引き続き注力するほか、プロセス制御やエネルギー分野の応用に向けた提案も加速するという(図3)。エネルギー分野向けでは、「スマートメーター業界では、通信方式が国や地域によって異なり、標準となる規格が未定という課題がある。アナログ・デバイセズは、規格策定にも参加し、顧客にいち早く情報を提供するとともに、製品の適時供給にも取り組む。例えば、スマートメーターに使える無線トランシーバを2009年の5月に発表済みだ。2011年の前半には、日本国内の周波数帯域に対応する品種も発表する予定である」(馬渡氏)。

図3
図3 産業・計測機器市場の注力分野 エネルギー分野を「最注力分野」に位置付ける。

 ヘルスケア市場では、同社が旧来からアナログフロントエンドLSIを供給してきた大型CTスキャン装置などの応用分野に加えて(参考記事:アナログ・デバイセズ社がCT装置向けA-D変換LSI発売、10mm角に128チャネルを集積)、患者モニタリングや医療用計測器、家庭用ヘルスケア機器などの応用分野にも提案を広げる(図4)。

図4
図4 ヘルスケア市場の注力分野 CTスキャナなどの大型装置に加えて、携帯型機器や家庭用機器にも注力する。

 オートモーティブ市場では、ガソリン車を含む自動車のパワートレインのほか、ハイブリッド自動車や電気自動車などに向けて、絶縁IC「iCoupler」の引き合いが数多く寄せられているとしており、引き続き拡販に努める( 参考記事:アナデバ社がアイソレータIC拡充、絶縁電源内蔵品と車載規格対応品)(図5)。なおアナログ・デバイセズは2010年3月に、iCouplerが三菱自動車工業の電気自動車「i-MiEV」に採用されたと発表していた。この他、車載セーフティ機能に向けて、MEMSセンサーの精度の向上や、ミリ波レーダー用アナログフロントエンドの開発を進めているという。さらに、車載向けの製品全般で、品質の向上に継続的に取り組むと説明した。

図5
図5 オートモーティブ市場の注力分野 電気自動車やハイブリッド自動車に搭載するリチウムイオン2次電池スタックのモニタリングICなども、注力製品の1つだという。

 コンスーマ市場では、「家庭用ホームシアター機器のワンストップショップを目指す」(馬渡氏)と表明した。ビデオ信号の入出力からデコード、各種画像処理に対応するアナログLSIやDSPを同社が取りそろえてラインアップして供給する。「2009年にはデコーダとHDMI送受信機能を1チップ化した製品を投入し、2010年にはHDMIで3D信号に対応したり高速チャネル切り替え機能を搭載したりするなど、製品を進化させてきた。2011年には、処理性能を高めた画像スケーラLSIや、次世代の4K2K(4096×2160画素)フォーマットに対応したHDMIインターフェイスLSIなどを投入する。機器メーカーからすでに、4K2Kに対応するAVアンプの開発に着手したいという声も上がっている」(馬渡氏)(図6)。

図6
図6 コンスーマ市場の注力分野 次世代映像フォーマットの4K2K対応機器も視野に入れる。

 通信インフラ市場では、「高周波信号の処理経路を構成するために必要な半導体を、すべて提供できる唯一の企業」(馬渡氏)であることを強みとして訴求する(図7)。「CMOS技術を適用した機能集積化が進んでおり、これをいっそう推し進める」(同氏)方針だ。そうした製品の一例としては、VCO内蔵の広帯域シンセサイザLSIを挙げている。2008年12月に発表した製品で、従来は外付けが一般的だったVCOを集積化したことが特長だ。

図7
図7 通信インフラ市場での強み 高周波信号の処理経路を網羅する製品群を用意しているという。

 コアマーケット市場では、顧客自身でアナログ・デバイセズの製品選定から、サンプル入手、評価、技術的な課題の解決、量産発注といった一連の流れを完結させられる仕組みの作り込みを進める(図8)。「2年前から着手した取り組みで、成果が出始めている」(馬渡氏)。実際に、この市場での2010年度の売上高は2009年度から75%増加し、顧客数についても24%増えているという。顧客に向けた各種のサポートを、日本法人単独で提供する他、販売代理店やその他の外部企業と連携して提供している。

図8
図8 中小規模の企業に向けたサポート体制作りを進める 日本法人の社内にコアマーケット専任の技術サポートチームを設けているという。
図9
図9 電子部品のオンライン商社と連携 チップワンストップと組んで、ユーザーがアナログ・デバイセズの製品を小口・短納期で入手できる仕組みを構築した。チップワンストップ代表取締役社長の高乗正行氏(写真)は、「アナログ・デバイセズの推奨製品や人気の高い製品は、即日出荷できる体制を整えており、その品種数は3000点に上る。出荷まで最大10営業日を要するものの、アナログ・デバイセズの在庫を当社経由で提供することも可能で、それを含めると品種数は約1万点に拡大し、同社の製品ほぼすべてをカバーする」と語る。

 例えば、同社単独での取り組みとしては、採用実績や供給継続性などの要素を勘案して同社が推薦する製品に「おススメ製品」のマークをつけてウェブサイトやカタログに掲載することで、顧客の部品選定の手間を抑えている。外部企業との連携では、アナログ電子回路のオンラインコミュニティを運営して啓蒙に努めたり、電子部品のオンライン商社と組んで小口・短納期での供給体制を構築したりしている図9)。

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