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リチウムを超えるナトリウム二次電池、住友電工が開発エネルギー技術 二次電池

2015年の製品化を予定しており、電池のコストとして、2万円/kWhが視野に入りつつあるという。体積エネルギー密度は290Wh/Lと高い。これはリチウムイオン二次電池の体積エネルギー密度200Wh/Lを超えている。サイクル寿命は500回。単セルを複数接続した組み電池を使った試験を2010年末にすでに開始している。

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 住友電気工業は2011年3月4日、Na(ナトリウム)化合物を用いた二次電池を開発したと発表した(図1)。資源が豊富なNaを利用しているため、材料コストの低減に向く。

 太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー源と接続して中規模電力網内で電力を蓄える用途や、家庭での定置用途、電池を加熱するスケジュールが立てやすいバスやタクシーなどの車載用途を想定している。

 2015年の製品化を予定しており、電池のコストとして、2万円/kWhが視野に入りつつあるという。なお、電気自動車用のリチウムイオン二次電池のコストは10万円/kWh*1である。

*1)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開した「二次電池技術開発ロードマップ(Battery RM2010)」による。

 開発した二次電池の体積エネルギー密度は290Wh/Lと高い。これはリチウムイオン二次電池の体積エネルギー密度200Wh/Lを超えている。サイクル寿命は500回。単セルを複数接続した組み電池を使った試験を2010年末にすでに開始している。容量9kWhの組み電池4台を同社の大阪製作所所内の電力系統に接続した構内試験である。9kWhは一戸建て4人家族1日分に相当する電力であるという。

100℃以下で動作する小型の溶融塩電池

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図1 ナトリウム化合物を使った二次電池 小型の単セルを組み合わせた容量9kWhの二次電池モジュールの外観。電池セルを密着させて動作させた大阪製作所所内の構内試験の様子。一戸建てに必要な電池容量を実現できるという。出典:住友電気工業

 今回の二次電池はNa化合物が融点以上の温度で液体となった溶融塩(イオン液体)を使う。充放電時にはNa(ナトリウムイオン)が正極と負極の間を移動する。同種の二次電池としては日本ガイシが製品化したNAS(ナトリウム硫黄)電池があるが、動作温度が300℃程度と高く、大型の装置が必要だった。住友電気工業の電池は従来の溶融塩電池では実現できなかった57℃〜190℃で動作する。「構内試験では70℃〜80℃で動作させている」(同社)。加熱に必要な機材が少なくて済み、小型化に向く。

 空気と反応しない不燃性の物質を利用しており、過充電などによる熱暴走が起きないという。廃熱用の機材や防火用の機材が不要になり、電池モジュールの小型化を助ける。同社の試算では、電池モジュールとしてリチウムイオン二次電池の1/2に小型化でき、NAS電池と比較すると、1/4の体積で済むという。

 今回の二次電池が開発できたのは、比較的低温で融点に達する溶融塩材料の開発に成功したためである。京都大学エネルギー科学研究科教授の萩原理加氏の研究室と共同で、電池の材料を開発した。同氏はイオン液体や溶融塩を利用したキャパシタや二次電池電解質を研究している。開発した二次電池では、NaFSA(ナトリウムビス フルオロスルファニル アミド)と、KFSA(カリウムビス フルオロスルファニド アミド)からなる二元系の溶融塩電解質を使った(図2)。正極材はNa2CrO4(クロム酸ナトリウム)、負極材はNa合金、セパレータはガラス繊維である。

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図2 二次電池の構造 負極材(活物質)と正極材にはいずれもNa化合物を用いた。電荷担体である溶融塩材料をガラス繊維から作ったセパレータに染みこませて使う。出典:住友電気工業

 なお同社は、従来から電池セル向けの部材を製品化しており、極板には、気孔率が98%と高い多孔質金属材料「セルメット」を、配線には耐電解液性能と封止性能を高めた「タブリード」を用いたという。

 今後は、材料コストの低減と信頼性評価の他、より低温で動作する材料の探索を進めるという。

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