国内のスマートメーターに最適化した無線送受信ICをアナログ・デバイセズが発売:無線通信技術 スマートメーター
アナログ・デバイセズは、日本国内向けのスマートメーターに最適化した無線送受信IC「ADF7023-J」を発売した。GFSK(ガウス周波数偏移変調)方式の変調/復調回路の他、送信用のパワーアンプと受信用の低雑音アンプ、アンテナスイッチに加えて、8ビットRSICプロセッサも集積する。
アナログ・デバイセズは、日本国内向けのスマートメーターに最適化した無線送受信IC「ADF7023-J」を発売した。GFSK(ガウス周波数偏移変調)方式の変調/復調回路の他、送信用のパワーアンプと受信用の低雑音アンプ、アンテナスイッチに加えて、8ビットRSICプロセッサも集積する(図1)。電気や水道、ガスなどの住宅用メーターに、検針データの情報をホストシステムに無線で送信する機能や、ホストシステムからメーターのファームウエアを無線で更新する機能を搭載する際に利用できる。
同社はすでにスマートメーター用の無線送受信ICとして、米国のFCC(Federal Communications Commission)や欧州のETSI(European Telecommunications Standards Institute)が定めるISM帯に対応し、433MHz帯および868MHz帯、915MHz帯で使える品種「ADF7023」を供給していた。今回のADF7023-Jはこの従来品を基に、無線回路の動作周波数帯を日本国内のISM帯に最適化した。具体的には、無線特性を902MHz〜958MHzの周波数帯で最適化しており、日本の電波産業会(ARIB)がスマートメーターを含む短距離の無線データ測定用に策定した950MHz帯の特定小電力無線規格「ARIB STD-T96」に準拠する。
アナログ・デバイセズの日本法人によれば、今回の無線送受信ICは、「国内向けのスマートメーターの無線通信機能で求められる要件にすべて応えられる」(同社でインダストリー&インフラストラクチャ・セグメントのアシスタント・ディレクターを務める笹岡宏氏)と言う(図2)。その要件としては次の3点を挙げる。1つ目は、信頼性の高い無線接続のために不可欠な要素で、受信回路のブロッキング性能(妨害波に対する耐性)と感度を確保すること。2つ目は、ARIB規格のEMC適合性を満たすために必要な要素で、送信回路のスプリアスを所定のレベル以下に抑えると共に局部発振器の位相雑音を低減すること。3つ目は、スマートメーターで長期間にわたる電池駆動を実現するために求められる要素で、消費電力を低く抑えることである。
ブロッキング性能については、±2MHzオフセットで66dB、±10MHzで74dBを確保した(希望波のレベルを最小受信感度レベルの+3dBに設定し、妨害波を増大させてビット誤り率が悪化し始めるとき)(図3)。最小受信感度は−107.5dBmである(変調レートが38.4kビット/秒のとき)。スプリアス特性は、例えば945MHz〜950MHzで−66dBm以下に抑えた(スペクトラムアナライザの分解能を100kHzに設定して測定したとき)。消費電力については、受信動作時の消費電流を12.8mAに低減した他、複数の待機モードを用意して、きめ細かい節電動作に対応できるようにした。
さらに、内蔵のプロセッサを利用すれば、メーター全体の消費電力を低く抑えるための自律的な制御も実行できる。「例えば、このプロセッサで復調回路の出力からパケット情報を読み取って、受信したデータがそのメーターに送られたものだと判断したときだけメーター内のメインマイコンを起動するといった制御が可能だ。パケットが他のメーターに送られたものであれば、メインマイコンを起動しない。この手法を使えば、パケットを処理せず電波を受信するたびにメインマイコンを起動する場合に比べて、メーター全体の消費電力を動作期間にわたって低く抑えられる」(日本法人のインダストリー&インフラストラクチャ・セグメントでインダストリーグループのフィールドアプリケーションエンジニアを務める椿原潤吾氏)。
送信出力はアンテナ端で10dBm(10mW)を確保した。変調レートは最大300kビット/秒。電源電圧範囲は1.8V〜3.6V。パッケージは5mm×5mmの32端子LFCSP。すでにサンプル出荷を始めており、2011年4月末ころに量産出荷を開始する予定である。価格は1000個購入時の単価が2.62米ドル(米国における販売価格)。
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