TSMCが450mmウエハー対応を加速、なぜ移行するのか:ビジネスニュース 企業動向
450mmウエハーを使うと、現在の300mmウエハーよりも生産性が高まる。しかしさまざまな技術的課題が残っていることから、業界における450mm対応はなかなか進まない。TSMCはなぜ450mm対応を急ごうとしているのか。どのような製造プロセス技術を使うのか。
半導体ファウンドリ最大手のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、米国カリフォルニア州サンノゼで2011年4月5日に開催された「TSMC 2011 Technology Symposium」において、450mmウエハーへの移行に向けた取り組みについて詳細を明らかにした。
同社はこれまでにも、450mm対応ファブの時代に向けて移行を加速していると報じられてきた。同社が移行を進める目的には、製造コストの削減だけでなく、GLOBALFOUNDRIESやSamsung Electronics、United Microelectronics(UMC)をはじめとするライバル企業に対して一歩先の立場を維持したいとの意図がある。
この他にも、TSMCが450mmウエハーへの移行を進める別の動機がある。TSMCで研究開発担当シニア・バイス・プレジデントを務めるシャンイー・チャン(Shang-Yi Chiang)氏によると、同社は長期的に、450mmウエハーに移行することで技術者の数を減らし、それに伴いコストも削減できると考えているという。
同氏はEE Times誌の取材に対して、「当社が実際に450mm時代に突入すれば、今後10年の間で必要な技術者の人数を、現在よりも7000人減らすことができる」と述べている。
さらに、450mmを進める要因が他に2つある。第1に、TSMCが将来にわたって、優秀な技術者を雇い入れることがますます難しくなると考えているためだ。
そして2つ目は、TSMCが将来、顧客からの需要に対応する上で必要なファブの数を減らすことができると考えられるためだ。次世代ウエハーは、300mmウエハーと比べて、半導体チップの生産性を1.8倍以上に高められるという。
ファブの数が少なければ、技術者の人数も少なくて済む。その一方でTSMCは、特にプロセス技術の微細化を継続的に加速していることから、研究開発費や設備投資費を今後も増やしていくとみられている。
ただし、450mm対応のファブを建設するには、約100億米ドルが必要だ。さらに、450mm時代に対応するためには、ツールコストも急増する。
20nm世代と14nm世代にいかに対応するか
チャン氏によれば、TSMCが450mmファブへの移行を進める際に利用するのは、20nm世代のプロセス技術だという。TSMCはまず、台湾の新竹にある「Fab 12」において、450mmウエハに対応した試験的な製造ラインを立ち上げたいと考えている。この製造ラインでは、20nm世代のプロセス技術でウエハーを製造する予定だ。同社は、このラインの立ち上げと稼働開始時期を、2013年〜2014年と見込んでいる。
TSMCは当初、同社の300mmファブでも20nm世代のプロセス技術でウエハーを製造する予定だった。チャン氏によれば実際に、TSMCが最初に20nmプロセス技術を適用したウエハーの大半が、300nmファブを中心に製造された。
TSMCは同社初の450mmファブを台湾の台中に建設する予定だという。工場名は、「Fab 15」である。製造開始時期は、2015年〜2016年を見込む。
当初、450mmファブでは、20nmプロセス技術を適用したウエハーの製造を増やし、14nmプロセスへの移行を進めていく予定だった。TSMCは、14nmプロセス技術を適用するにあたり、トランジスタの構造を変更する予定だ。
TSMCは、20nm世代以降のプロセス技術において、既存のプレーナ型トランジスタを引き続き使用し、バルクCMOSプロセス技術を適用するという。また14nmプロセスでは、バルクCMOSプロセス技術から立体構造トランジスタであるFinFET構造に変更する予定だという。
つまりTSMCは将来的に、450mmウエハーを扱うFab 15を製造拠点として、FinFET構造を採用した14nm世代のプロセス技術を適応することになる。
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