太陽電池の世界記録を更新、集光型用でセル変換効率43.5%を達成:スマートグリッド
現在大量に生産されているSi(シリコン)のみを用いる太陽電池には、変換効率の理論上限があり、30%を超えることはできない。変換効率40%以上を狙うには量子ドットやモノリシック構造多接合などが必要だ。今回の成果は、III-V族半導体を用い、バンドギャップが異なる複数の層を垂直方向に接合することで変換効率を高めるモノリシック構造多接合を利用した。
集光型太陽電池(CPV:Concentrator Photovoltaic)市場に向けた多接合太陽電池の開発を手掛ける米国のSolar Junctionは、世界最高の変換効率となる43.5%を達成したと発表した。この多接合太陽電池は量産可能であるという。
Solar Junctionの太陽電池セルの寸法は、5.5mm×5.5mmと小さい。変換効率の過去最高記録に1.2ポイントの差を付けており、集光の倍率を変えたときにも以前の最高記録を上回った。太陽光を400倍集光した際に変換効率が最も高くなり、43.5%に達した。1000倍集光でも約43%と高い変換効率を維持できたという*1。
*1)訳注1 シャープは2010年5月にモノリシック構造多接合セルの一種である「化合物3接合型太陽電池」で変換効率42.1%を達成している(230倍集光時)。同社の目標は2014年度に45%(集光時)を達成することだ。
図1 Solar Junctionが記録を達成した太陽電池セル 5.5mm角と小さいセルがウエハー上に多数並んでいる。切り出した1つのセルに1つの集光レンズを組み合わせたモジュールを設計することで、太陽電池として使える。高い集光率での変換効率が向上すればするほど、1枚のウエハーから製造できる太陽電池セルの枚数が多くなる。出典:Business Wire
Solar Junctionは、同社が独自開発したA-SLAM(Adjustable Spectrum Lattice-Matched)技術を採用している。この技術によって、太陽光スペクトルを最適化することにより、高い変換効率と信頼性を実現した。
Solar Junctionは、格子整合したバンドギャップが1eV(電子ボルト)前後の半導体をベースとして、高い変換効率を実現する化合物3接合型太陽電池の製造を手掛ける*2)。2007年に設立され、米国カリフォルニア州サンノゼに本社を置く。投資企業であるNew Enterprise Associates(NEA)やDraper Fisher Jurvetson、Advanced Technology Venturesなどから資金を調達している。
*2)訳注2 光が入射して、半導体内部に進むにつれてバンドギャップが小さくなっていくように複数の材料を積層する。こうすることで、太陽電池の表面では短い波長の光を、奥では長い波長の光を効率的に吸収でき、太陽光スペクトルの幅広い範囲を電気エネルギーに変換できる。世界的にInGaP(インジウムガリウムリン)やGaAs(ガリウムヒ素)などを用いる3接合型(3種類の半導体を利用)の研究が最も進んでおり、4接合型へと向かっている。
今回の成果は、米エネルギ省(DoE:Department of Energy)の太陽光発電技術の開発を支援するプログラム(Photovoltaic Incubator Program)による支援を受けて実現したという。同プログラムは、DOEの米国立再生可能エネルギ研究所(NREL:National Renewable Energy Laboratory)が管理している。今回達成した変換効率は、NRELのMeasurement and Characterization Laboratoryの認定を受けたという。
【翻訳 田中留美、編集 @IT MONOist】
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