プロセッサの用途がPCから「スマートシステム」へ切り替わる、その差は6倍に:組み込み技術
スマートフォンやタブレットの売り上げが急速に伸びている。IDCによれば、これは組み込み機器がスマートシステムへと切り替わる前触れだという。高性能プロセッサやOS、インターネット接続が組み込み機器をスマートシステムへと変えていく。
米国の市場調査会社であるInternational Data(IDC)のセミコンダクター・リサーチチームは、プロセッサに関する最新のリポートを発表した。プログラマブルなプロセッサコアや高性能なOS、インターネット・コネクティビティという3つの要素を備える「スマートシステム」に向けたプロセッサコアの出荷数量が、2015年までに125億個以上に達するという。売上高に換算すると、1000億米ドル以上にのぼる。2010年に出荷されたプロセッサコアの数量と比べると、2倍以上となる計算だ。
IDCの予測では、スマートシステム向けのマイクロプロセッサコアの出荷数量は、2015年までにPC向けコアと比べて、6倍以上増加するという。2015年から2020年にかけてスマートシステム向けマイクロプロセッサコアの出荷数量は2015年比でさらに2倍に増え、約246億個に達する見込みだという。
組み込み機器がスマートシステムに変化する
IDCのアナリストであるシェーン・ラウ(Shane Rau)氏によると、IDCはスマートシステム関連市場がどの程度の規模になるのか、具体的な数字を提示することに取り組んでいるという。「スマートシステム」という用語は最近よく耳にするが、一般的に明確に定義されているわけではない。その一方で、スマートメーターやスマートグリッド、スマートフォン、スマートテレビといったシステムや機器は現在、電子機器の売り上げを大きくけん引している。
ラウ氏は、「スマートシステムは、これまで『組み込みシステム』と呼ばれてきた技術に3要素が加わったものだ。当社は現在、『プロセッサとOS、コネクティビティ』という3要素を全て取りそろえたスマートシステムについて、市場規模を数値で表すという取り組みを進めている」と述べている。
IDCは、2011年4月19〜20日の日程でサンフランシスコで開催された次期組み込みシステムに関する会議「SMART Technology World」において、スマートシステムに関する調査結果を発表した。
IDCのセミコンダクター&EMSリサーチプログラム担当バイス・プレジデントを務めるマリオ・モラレス(Mario Morales)氏は、「当社の調査報告チームとSMART Technology Worldは今回初めて、『スマート市場』を意味付けるべく、分類方法を定義したり、規模や価値を数値化することに取り組んだ」と述べている。
IP接続が重要であり、産業システムにも広がる
IDCによると、組み込みシステムがスマートシステムへと変化していく上で大きく進歩した点は、プログラマブルなマイクロプロセッサやSoC、高性能なOSの導入だけではない。インターネットプロトコル(IP)上で人や他のシステムと通信できる機能が重要だという。IP接続が可能な組み込み機器の出荷台数は、携帯電話機やPCを除き、2010年は約14億台だったが、2015年には33億台以上に達する見込みだという。
同社のリポートによると、IP接続可能な組み込み機器の出荷台数は、2015年に33億台以上に達し、2015年におけるPCの出荷台数の約6倍に上る見込みだという。さらに同社は、PCやスマートフォンのユーザーが慣れ親しんできた機能性や使い勝手のよさ、アクセス性などが今後、エネルギーや産業システム、自動車、通信など、近代社会のインフラの大半を形成している組み込み機器にも広く普及していくと予測した。
IDCは、スマートシステム関連のM&A(企業買収/統合)が進むことにより、ベンダーや技術プロバイダー、投資企業などの間で前向きな連携が強まっていくと見ている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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