デジタルサイネージと融合へ、タッチパネル技術の活躍範囲広がる:センシング技術 タッチパネル(1/3 ページ)
タッチパネル技術には、ディスプレーに表示された画像や映像を見ながらそれに触れることで、機器を直感的に操作できるという大きな特徴がある。機器と利用者の距離を縮める、重要な要素技術だろう。
ディスプレーに触れて機器を操作する「タッチパネル技術」―。銀行の現金自動預払機(ATM)や自動券売機、コンビニのPOS端末といった業務用機器にのみならず、最近ではスマートフォンやタブレットPC、デジタルカメラ、ゲーム機といった民生機器にも広く使われている。
例えば、スマートフォンのほとんどはタッチパネル技術を採用しており、画面をスクロール/拡大する、ページをめくる、アプリケーションを選択するといったさまざまな操作を、ディスプレーに触れることだけで実現している。
タッチパネル技術には、ディスプレーに表示された画像や映像を見ながらそれに触れることで、機器を直感的に操作できるという大きな特徴がある。機器と利用者の距離を縮める、重要な要素技術だろう。2011年4月13 〜 15日に東京ビッグサイトで開催された「第3回 国際タッチパネル技術展」には、従来の業務用機器や民生機器のみならず、新しい市場を想定したタッチパネル技術が多く展示されていた(図1)。
例えば、デジタルサイネージ(電子看板)や電子黒板に活用することを想定したタッチパネル技術や、近距離無線通信技術「NFC」とタッチパネル技術を組み合わせた展示などである(タッチパネルの薄型化については、別掲記事の「厚み0.02mmの曲がるガラスパネル、ミクロ技術研究所が製品化へ」を参照)。
図1 活用範囲が広がるタッチパネル技術 これまでの業務用機器や民生機器のみならず、デジタルサイネージや電子黒板にも用途が広がっている。図はCYBERDYNEが開発したタッチパネルディスプレー「TACTO」。
大型化するタッチディスプレー
現在、ディスプレーに人が触れたことを検出する方法として、幾つもの基本技術が提案されている。
例えば民生機器には、ディスプレーが押された位置を電圧変化によって検知する「抵抗膜方式」や、ディスプレーに触れたときの静電容量の変化を捉える「静電容量方式」が広く使われている。ただこれらの方式は、デジタルサイネージや電子黒板に利用するような大型ディスプレーには向かないとされる。ディスプレーを大型化したとき、検出精度やコストの観点で難があるからだ。
そこで、電子機器や電気測定装置の製造・販売などを手掛けるミナトエレクトロニクスと、コンピュータ周辺機器の製造・販売を手掛けるシロクはそれぞれ、デジタルサイネージや電子黒板の用途を想定し、「光学式」をベースにしたタッチパネル技術を展示していた。いずれも、既存のディスプレーにタッチパネル機能を後付けできることや、ディスプレーが大型になるほどコストメリットがあることを特徴に挙げる。
ミナトエレクトロニクスが展示していたのは、超音波振動子と赤外線LEDを搭載したペン型デバイスを使ったタッチパネル技術だ(図2)。ペン型デバイスでディスプレーをなぞることで、文字を書いたり、画像を表示させたりできる。
図2 ミナトエレクトロニクスの電子黒板向けタッチパネルディスプレー (a)は既存のディスプレーにタッチパネル機能を付加する装置(ディスプレー上部の黒い部分)を取り付けた様子。(b)は、超音波振動子と赤外線LEDを搭載したペン型デバイス。これを使って、タッチパネルディスプレーを操作する。
ディスプレー上部の左隅と右隅にはそれぞれ、超音波振動子から放射される音(超音波)を集音するマイクが取り付けてある。ペン型デバイスを操作すると、その位置に応じた時間で、左隅マイクと右隅マイクそれぞれに超音波が到達する。このとき、超音波が進む速度(音速)は固定値として取り扱えるため、超音波がマイクに到達するまでの時間は距離に換算できる。さらに、左隅マイクと右隅マイクの間隔は固定である。従って、三角関数を使うことで、ペン型デバイスの座標を求められる仕組みである。
ペン型デバイスに搭載した赤外線LEDは、同期信号を生成するために使う。何かしらの基準がなければ、どのタイミングで放射した超音波なのかをディスプレー側で判断するのは難しい。そこで、超音波振動子と赤外線LEDを同じタイミングで動作させ、ディスプレー側にあるフォトトランジスタに赤外線が到達した時間を基準にし、超音波を測定する。
超音波を使ったタッチパネル技術は数多くあるが、これまでは外部からの音が雑音として混入し、位置検出に悪影響を与えてしまう課題があったという。そこで同社は、超音波振動子から放射する音に独自の変調を掛けることで、信頼性を高めた。
今回展示した電子黒板向けタッチパネルディスプレーは、2011年夏に発売する予定である。「特殊なペンは必要であるものの、大型ディスプレーに対応できることや、大型化しても、タッチパネルを実現する部品のコストは基本的には変わらないことを訴求して、電子黒板市場に売り込みたい」(同社の説明員)という。
図3 ミナトエレクトロニクスのデジタルサイネージ向けタッチパネルディスプレー 「特殊静電容量方式」を採用しており、一般的な静電容量方式に比べて検出感度が高いため、厚手のゴムや手袋で触れても検知できることが特徴。指が触れる面にセンサーが無いため、耐久性や防水性に優れているとい
同社はこの他、デジタルサイネージなどの用途に向けて、「特殊静電容量方式」を採用したタッチパネルディスプレーを展示していた(図3)。タッチセンサー技術を手掛けるZytronicが開発した方式で、ガラス板裏面に金属ワイヤーの網(「センサーグリッド」と呼ぶ)をラミネートして、タッチパネルを形成している。タッチパネルに触れると、指とセンサーグリッド間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を共振回路の共振周波数の変化として捉える。
一般的な静電容量方式に比べて検出感度が高いため、厚手のゴムや手袋で触れても検知できることや、指が触れる面にセンサーが無いため、耐久性や防水性に優れていることが特徴だという。
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