ベンチトップ型ながらI-Vカーブを表示できるソース/メジャーユニット、アジレントが発売:テスト/計測 直流電源/測定ユニット
競合他社の既存機種では、測定結果を外部PCに取り出し、表計算ソフトのグラフ機能を使うなどしてI-Vカーブを描く必要があったという。新製品では、このステップが不要になる。
アジレント・テクノロジーは、持ち運んで使えるベンチトップ型の高精度直流電源/測定装置(いわゆるソース/メジャーユニット、SMU)「Agilent B2900Aシリーズ」を発売した(図1)。半導体素子や電子部品、材料の評価に向けた汎用計測器である。同社はこれまで、これらの用途に使える据え置き型のパラメータアナライザやデバイスアナライザを供給していたが、ベンチトップ型SMUの製品化は今回が初めて。「既存ユーザーからは、アジレントからベンチトップ型SMUは出ないのか?という声を多く受けていた。それに応える形で、満を持して投入する。ベンチトップ型の市場では後発となるが、競合他社の既存機種をしのぐ性能や使い勝手を実現した」(同社の電子計測本部 マーケティングセンタ 基本計測グループでグループ長を務める川崎恭正氏)という。
図2 パルス出力時の電流・電圧波形 オシロスコープで観測した様子である。左上が10A出力時の電流波形で、アンダーシュートとオーバーシュートが小さいことが読み取れる。右下は200V出力時の電圧波形。スルーレートが高いことが確認できる。出典:アジレント・テクノロジー
4象限のバイポーラ電源を搭載し、正/負両方の電圧と、電流のソース/シンク(印加/吸い込み)両方に対応する。電源供給と電圧および電流測定の範囲は、電圧が±210V、電流が直流時にチャネル当たり最大3A、パルス時に同10.5Aである。「大電流や高電圧のパルス出力時に、波形のオーバーシュートやアンダーシュートを低く抑えるとともに、高いスルーレートを実現した。こうした電源としての特性は、競合他社の既存機種に比べて優れている」(川崎氏)と主張する(図2)。
この他、本体前面に搭載したディスプレイに、電圧と電流の測定結果を元に電流対電圧特性(いわゆるI-Vカーブ)を描く「グラフビュー・モード」と、電圧と電流の測定結果をそれぞれ時間領域で表示し、簡易的な波形観測に使える「ロールビュー・モード」を搭載したことも大きな特長だ(図3)。「競合他社の既存機種は、測定結果を数値でディスプレイに表示する程度にとどまっており、I-Vカーブを描くにはデータを外部PCに取り出して表計算ソフトを使うなどのステップが必要だった。そのためユーザーからは、I-Vカーブくらいは前面パネルで見たい、という声が上がっていた」(川崎氏)という。
図3 表示モードは4パターン 上段は、左が1チャネル分の詳細を表示する「シングルビュー」、右が2チャネル分を表示する「デュアルビュー」。下段は、左がI-Vカーブ表示の「グラフビュー」、右が波形表示の「ロールビュー」。前面パネルに設けた「View」ボタンを押すごとに、これら4つの表示モードが切り替わる。出典:アジレント・テクノロジー
性能と機能の違いで高性能モデルと基本モデルとの2つをラインアップし、それぞれに1チャネル機と2チャネル機を用意した。すなわち合計で4機種を取りそろえる。高性能モデルは、「ベンチトップ型としては極めて優れた性能で、高価な半導体デバイスアナライザに匹敵する」(川崎氏)。研究開発や設計を担当するユーザーを想定した。電源供給の設定桁数は6・1/2桁、最小分解能は電流が10fA、電圧が100nV。電圧および電流測定の桁数は6・1/2桁、最小分解能は電流が10fA、電圧が100nV。測定に使う内蔵A-D変換器のサンプリング速度は10万ポイント/秒。価格は、1チャネル機の「B2911A」が約96万円、2チャネル機の「B2912A」が約149万円(いずれも税別)である。
基本モデルは、製造ラインに組み込む用途を視野に入れる。電源供給の設定桁数は5・1/2桁、最小分解能は電流が1pA、電圧が1μV。電圧および電流測定の桁数は6・1/2桁、最小分解能は電流が100fA、電圧が100nV。サンプリング速度は5万ポイント/秒。ロールビュー・モードは搭載していない。1チャネル機の「B2910A」が約68万円、2チャネル機の「B2902A」が約99万円である。
2011年5月19日に受注を開始する。出荷開始は同年7月の予定である。
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