クラウドに接続できる組み込み機器を設計するには、Imaginationが対応IPを発表:組み込み技術
クラウドに接続して利用する組み込み機器を開発するにはどうすればよいだろうか。中小規模の企業がクラウドに接続可能なおもちゃや健康管理機器を開発する場合、スマートフォンと同じような手法は使えない。Imagination Technology Groupはそのような用途に向けたIPと、クラウドの一部となるポータルサービスを開始した。
高性能なプロセッサを備えていない組み込み機器であっても、クラウドに接続してさまざまなサービスを提供することで、製品の価値を高めることができる。
無線通信分野に強みがあるST-EricssonはそのようなIPコアをライセンス提供する計画を発表しているが、今のところ詳細を明らかにしていない。ソニーは、4つのコアを用いた製品を発売する計画を明らかにしている。
製品化は既に始まっている。Appleとルネサス エレクトロニクスは、既存のSVXコアのデュアルコア版を既に出荷している。グラフィックス・プロセッサの設計を手掛けるImagination Technologies Group(Imagination)も、このような用途に向けた組み込みクラウドの製品シリーズ「FlowWorld」を発表した。デバイスへのクラウド・サービスの迅速な実装に向け、組み込み開発者を支援するものだという。
FlowWorldは、ホストやデジタル・ベースバンド機能の管理に向けた、同社が提供してきたプロセッサIPの改良版である「MetaFlow」を含んでおり、ホスト機能やデジタルベースバンド機能を処理できる。
Imaginationの広報担当者は、「FlowWorldは、組み込みシステム業界や家電業界の小規模な顧客に向け、エンド・ツー・エンドのサービスを提供するという発想から生まれた」と述べた。
「MetaFlow」は同社が既に利用中のUUCP技術を用いて開発された。32ビットプロセッサで、最大で4スレッドに対応する。この他、デジタルベースバンド機能やDSP命令への対応を含む、同社独自の命令セットを採用している。
このプロセッサIPは、AndroidやLinuxのほか、Imaginationが独自に開発した組み込みリアルタイムOSである「MeOS」にも対応する。なお、Toumaz Technologyは、同社のSoCチップ「Xenif2」上に2スレッド対応のコア用いたプロセッサを実装することに成功し、デモをEE Times誌に披露した。
ウェブポータルの利用が可能
ImaginationのIPは、同社が提供する「FlowWorld portal」へ接続するための標準的なWi-Fi機能を備えている。このウェブポータルには、製品登録やソフトウェアのアップデートから、メディアストリーミングや配信サービスまで、さまざまなウェブサービスがホスティングされている。
ポータルの初期サービスは、支払サービスやデジタル音楽配信サービス、インターネット・ラジオへのアクセスが含まれる。既に、Imaginationの一部門であるPureが、同ウェブポータル上にクラウド・ミュージックサービス「Pure Lounge」を展開している。
Imaginationは、プロセッサIP「MetaFlow」のロイヤルティーのほか、ウェブポータルの利用に伴う料金を受け取る。それぞれの料金は機器の数量やどのような市場向けの機器なのかによって変わる。企業向けの平均的なプロセッサIPのロイヤルティーは機器1台当たり約30セントだという。
Imaginationによれば、同社のIPコアを採用する機器は、少なくとも現時点で5億台に及ぶという。同社の主要事業であるグラフィックスコアはそのうち4億台だ。Imaginationは2011年後半に、次世代のグラフィックスコア「PowerVR」シリーズ6(開発コード名:Rogue)を発売する計画だ。マルチコアのスケーリングが容易になるという。
Imaginationの広報担当者は、「Rogueが、固定型機器を含む、あらゆる市場分野に適した性能を備えていると自負している」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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