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第2回 災害時にも途切れない携帯へ、未来の無線通信システムの姿とはエレクトロニクスで創る安心・安全の社会システム 無線通信技術(2/2 ページ)

1980年代に初めて実用化された携帯電話は、今や日々の生活になくてはならない社会インフラになった。ところが、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震発生直後から携帯電話通信網を使った音声通話がつながりにくい状態が続いてしまった。災害時にも途切れない無線通信システムをいかに構築するか……。大きな挑戦だ。

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キーワードは「自律」と「協調」

EETJ 信頼性が高い無線通信システムの実現に向けて、研究開発が進められている。未来の無線通信システムは、どのような姿なのだろうか。

藤井氏 無線通信の目的は、相手に無線を使って情報を届けるということである。その上で、「確実に」、「高速に」、「周波数利用効率を高く」といった観点で、情報伝達の最適化を進める必要がある。無線基地局側と端末側がそれぞれ、さらにインテリジェントになることが求められるだろう。

 そのためのキーワードは、「自律」と「協調」だ。例えば、無線基地局に接続した複数の端末間が連携して自律的にネットワークを構成して情報を伝えたり、基地局が協調して情報を端末から集めるといった無線通信システムである。

EETJ IEEE 802.11nやWiMAX、LTEといった最新の無線通信システムは、いずれも「MIMO」と「OFDM」という要素技術に基づいており、その次の技術が生まれていないように感じる。

藤井氏 より効率的に大量の情報を伝えるには、電波に載せた情報をある空間に密に詰め込む必要がある。MIMO技術は、空間という軸で情報を多重化する技術。変調方式の1つであるOFDMは、周波数という軸で情報を多重化する技術である。次のステップとして、「エリア(領域)」という軸を、無線通信システムに持ち込む必要があると考えている。

 周りの状況に合わせて自律的かつ協調的にネットワークを構成することで、ネットワークのエリア(領域)をコントロールしようというアイデアだ。上に説明した自律的なネットワークだったり、基地局の協調技術、周波数共用のための電力制御技術は、エリア(領域)という軸を導入するための基本技術に位置付けられる。

 現在の無線通信システムは、無線LANを例に挙げると、端末それぞれがおもいっきり大声を出して会話をしているような状態だ。みんな大きな声を出してしまっては、端末が増え続けるとついには、誰にも声が伝わらなくなってしまう。


 次回は、電力の問題に話題を移す。東日本大震災に伴って発生した原子力発電所の事故によって、日本の今後のエネルギー政策は大きな転換を迫られている。安定した電力供給を実現するにはどのような方法があるのだろうか。古くから脈々と研究されてきた、ある手法の研究の現状を紹介する。

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