「GSMからLTEまで単一品種でカバー」、広帯域パッシブミキサーをアナログ・デバイセズが発売:無線通信技術
GSMからCDMA、WCDMA、LTEまで、複数の携帯電話規格の周波数帯を全てカバーできるため、規格ごとにミキサーICの品種を変更せずに済むという。部品の在庫管理が容易になり、部品コストの低減につながると説明する。
アナログ・デバイセズは、RF信号の入力範囲が700M〜2800MHzと広帯域ながらも、入力第3次インターセプト・ポイント(IIP3)が24dBmと高い線形性を確保した高周波ミキサーIC「ADL5811」を発売した(図1)。ダイオードを使って周波数を混合するパッシブ型のミキサーである。「一般に、パッシブ型は高い線形性を得られるが帯域幅は狭く、トランジスタを使うアクティブ型は広い帯域幅を確保できるが線形性は低い。そのためユーザーは通常、帯域幅と線形性のどちらを重視するかによって、パッシブ型とアクティブ型を使い分ける必要があった。それが不要になる」(インダストリー&インフラストラクチャ・セグメントのコミュニケーショングループでフィールドアプリケーションマネージャーを務める日野原成輝氏)。携帯電話の基地局の他、リピータ装置や、業務用無線用のダウンコンバータなどに使える。
局部発振(ローカル)信号の入力範囲は250M〜2760MHz。すなわちIF信号の出力範囲は40M〜450MHzになる。RF信号とローカル信号の入力形式は50Ωのシングルエンド。IF信号は差動形式で出力する。
パッシブ型ながらも広帯域化を実現できたのは、ミキサー回路のRF入力部の手前に、帯域可変型の高周波バランを集積したからだ。一般にパッシブ型ミキサーでは、RF入力部に帯域制限を設ける必要がある。これがパッシブ型で広帯域化が難しい理由だった。そこでアナログ・デバイセズは今回、シングルエンド入力のRF信号を差動化してミキサー回路に供給するバランをチップ上に集積し、その動作帯域を調整する機能を盛り込んだ。コンデンサアレイを用意し、その接続を切り替えることで静電容量を変化させて、動作帯域を調整する仕組みだ。ユーザーは、SPI経由でホストマイコンから設定値を書き込むことで、バランの動作帯域を変化させられる。
この調整によって、「GSMからCDMA、WCDMA、LTEまで、複数の携帯電話規格の周波数帯を全てカバーできる。従って、各規格に対応する基地局それぞれに共通してこのミキサーICを使える。規格ごとにミキサーICの品種を変更せずに済むため、部品の在庫管理が容易になり部品コストの低減につながる」(日野原氏)と説明する。
この他の特性は以下の通り。1dB圧縮時の入力電力(P1dB)は11dBm。雑音指数は2GHzで11dBにおさえた(シングルサイドバンドの値)。パッシブ型ながらも、IF出力部にアンプを搭載することで7dBの変換利得を確保している。電源電圧は5.5V。消費電流は190mA。特性は若干低下するものの、3.3Vの電源電圧で動作させることも可能だ。パッケージは5mm×5mmの32端子LFCSP。価格は、1000購入時の米国における単価が8.03米ドル。
ダイバーシティ方式の受信機などに使える2チャネル品「ADL5812」も用意した。消費電流は380mA。6mm×6mmの40端子LFCSP封止。価格は10.98米ドル。
2品種ともにサンプル出荷を始めており、2011年7〜9月に量産出荷を開始する予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.